マンマのレシピ

マンマの紹介

  • カルメラ・ディピエッリ(Calmera Dipierri)さん
  • トスカーナ州フィレンツェ在住
  • 【得意料理】カンネッローニ

お料理説明・背景

カルメラさんの故郷のバジリカータ州はイタリアの南部、豊かな自然と燦々と降り注ぐ太陽いっぱいの土地。彼女の育った時代は第二次世界大戦の痛手も癒えきらない、まだまだ貧しかった時代。それでも畑があったので、野菜は自家栽培で賄えていたからまだ幸運だったわと振り返る。子供たちも大人を手伝って、家事や畑仕事をし、その中でいろんなことを覚えたのよと話してくれる。

覚えたものの一つがパスタ作り。作るのはたいてい郷土料理であるこのフェリチェッリだったそう。手打ちパスタを金棒に巻きつけてらせん状に成形したショートパスタで、バジリカータ州ではフェリチェッリ、お隣のカラブリア州ではフジッリという名で呼ばれる、南イタリアの郷土パスタだ。ひとつひとつ手で成形するので、まあ手がかかるのだが、家族総出で作ればあっという間。
カルメラさんも、おばあさんを先生とし、お母さん、お姉さんたちとみんなで作っていたのだそう。中でもやはりおばあさん、そして二番目のお姉さんが特に上手だったそうで、「私はあんまり上手くできないのよね~」と言いうものの、目にも止まらぬ速さで動かし続ける手からは、形の整ったパスタが次々と出来上がる。

このパスタに合わせるのが「スーゴ・ディ・ルカーノ」「ルカーノ」は「バジリカータのもの」に対する呼称なので、料理名は「バジリカータのソース」という意味になる。その昔、余り肉を集めて一緒に煮込んでいたのが料理のルーツで、今も牛や豚など色々な種類、部位の肉を入れて作られる。家庭によっては羊肉を入れるところも。煮込んだ肉はメイン料理として食べるのだが、残った煮汁をパスタソースとして利用するのがこの料理特徴。パスタとメイン料理が一度にできる、一石二鳥の優秀なレシピだ。

じっくりとトマトソースで煮た肉の柔らかくとろけるような美味しさもさることながら、色々なお肉の部位から抽出された豊かな旨味が溶け合ったソースの、まろやかで且つ味わい深いおいしさは想像以上である。またそれに合わせるパスタのツルッとした食感、卵を加えない小麦粉だけのシンプルでやさしい味、らせん状の形がソースをしっかり絡めこんで、最高によく合う。フェリチェッリと言えばこのソース、本当によく作って家族で食べたわ、と懐かしそうに目を細める。息子のドメニコも娘のティッチアーナもね、大好物なのよ!嬉しそうに微笑むカルメラさんの笑顔は、フェリチェッリを作れるようになった少女の頃のままに輝いている。

レポート:藤原 亮子(Ryoko Fujiwara)
イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー&ライター。東京でカメラマンとして活動後、'09年、イタリアの明るい太陽(と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、取材・撮影・執筆活動をしつつ、イタリアの伸びやかな景色をテーマに写真作品も制作中。

材料

パスタ・フェリチェッリとルカーノのミートソース(5~6人分)

【ルカーノのミートソース】
・仔牛のモモ300g
・牛スネ肉200g粉末
・豚ロース300g刻んだもの
・豚バラ肉骨つき200g
・ホールトマト900g
・タマネギ中1個
・イタリアンパセリ4~5枝
・ニンニク2~3片
・オリーヴオイル大さじ2
・塩適量
・コショウ適量
【パスタ・フェリチェッリ】
・セモラ粉500gグラーノ・ドゥロ
・水約200ml

作り方

下ごしらえ

  1. 仔牛のモモ肉の真ん中あたりに切り込みを入れる。
  2. 全ての肉に塩コショウをふり、下味をつけておく。この時、仔牛のモモ肉に入れた切り込みの中も忘れず塩、コショウをする。
  3. タマネギ、イタリアンパセリ、ニンニクはみじん切りにしておく。

ルカーノソースを作る

  1. 仔牛のモモ肉の切り込みの中に刻んだニンニクとイタリアンパセリを入れ、爪楊枝をさして口を閉じる。(写真a,b 参照)
  2. 鍋にオリーヴオイルを入れ、タマネギをしんなりするまで炒める。(写真c 参照)
  3. 肉類を加え、表面に軽く焼き色がつくまで肉を返しながら焼く。(写真d 参照)
  4. 肉の表面が焼けたらホールトマトを加え、一度煮立ったら弱火にして煮ていく。(写真e,f 参照)
  5. 時折混ぜながら蓋をせずに弱火で約3時間煮込んだら出来上がり。
  6. ソースはパスタソースとして、肉は取り出し、メイン料理として皿に盛りつける。(写真g 参照)

パスタ・フェリチェッリを作る

  1. セモラ粉を台に出し、真ん中に窪みを作ったら、そこに水を少しずつ流し、粉と水をなじませるように手で混ぜていく。(写真h 参照)
  2. 粉全体が水を含んでひとまとまりになったら、両手でこねていく。(写真i 参照)
  3. 全体が均一になるようにこねたら四等分し、そのひとつをとり、長くひも状に伸ばす。(写真j 参照)
  4. ひも状のパスタを5~6cmの長さがに切る。(写真k 参照)
  5. カットしたパスタをひとつ取り、その上に針金を平行に乗せ、両手を添える。針金にパスタを巻き付けるように、針金をパスタごと台の上で前後に押し動かし回転させる。(写真l 参照)
  6. パスタから針金を抜き取り、くっつかないように布巾やクッキングシートの上に並べておく。(写真m,n 参照)
  7. 塩を入れたお湯で数分ゆで、湯切りする。(写真o 参照)
  8. ボールにパスタとソースを入れ、絡めて出来上がり。(写真p 参照)
  • a. お肉にニンニクとパセリを詰め込む
  • b. 楊枝で口を閉じる
  • c.タマネギを炒める
  • d. 肉を鍋に入れる
  • e. 返しながら肉の表面を焼く
  • f. ホールトマトを加えて煮る
  • g. 肉を取り出し盛り付ける
  • h. セモラ粉に水を加えなじませていく
  • i. ひとまとまりになったら両手でこねる
  • j. 四等分にしひも状に伸ばす
  • k .5~6cmの長さに切る
  • l. 針金に巻き付け前後に押し動かし回転させる
  • m. 針金を抜き取る
  • n. くっつかないようにクッキングシートに並べておく
  • o. フェリチェッリを数分ゆでる
  • p. ソースを絡める

お料理ポイント

パスタ生地に使う粉はグラーノ・ドゥロと呼ばれる麦を使用した「セモラ粉」。パンやピザ生地に使う「セモリナ粉」よりも粗挽きの粉で、フェリチェッリ にはセモラ粉の方を使う。
パスタを針金に巻きつける時は、強い力で抑えるのではなく、軽く手を添える程度で。できるだけ早く前後に動かして巻きつけていくのがキレイに巻けるコツ。最初は上手くいかなくても、慣れてくれば上手に巻けるようになるから、気にせずたくさん作ってみてね。