お料理説明・背景
パレルモのストリートフード特集の取材に行ったのは2015年5月。エキサイティングなバッラロー、カーポ、ブッチリアの市場を巡り、色々なものを食べまくっていた。中でも印象的だったのがフリットラ。布に包まれた保温容器の中には、特製のハーブで煮込んだクズ肉が入っている。それをゴマパンに挟んで、たっぷりレモンを絞って頬張れば、コリコリのトロトロがたまらなかった。その屋台の周りには、朝から男たちが群れをなしていた。
パレルモに生まれ、育ったマンマ、ミンマさん。この日は娘の家での撮影だったので、ご主人のジョバンニさんと一緒にやって来た。お互いが10代の頃に知り合い、もう60年近く連れ添う二人だ。料理が始まればジョバンニさんはどこか居心地が悪そうにソワソワしている様子で、料理の出来上がりを待っていた。
作ってくれた料理はシチリアらしい3品。ズッキーネ・ルンゲとタマネギのスープに、パスタ・アル・フォルノ、そしてアランチーネ。
ズッキーネ・ルンゲは、夏場になると市場で山積みになる季節野菜。大きなものだと1.5m〜2mにもなるお化けズッキーニ。でも味はやさしく、軟らかく繊細な味わいで、温かくしても、冷たくしてもおいしいズッパで、パレルモの夏の定番だそうだ。
小さなドーナツ型のパスタを使って作るパスタ・アル・フォルノ。ラグーが小さな穴の中に入り込んで、よく絡むからこのパスタじゃなきゃダメらしい。そして口に入れれば小さなパスタが噛むほどに暴れ、絡んだラグーと相まって楽しい、おいしい。ゆで卵を入れるバージョンもあるけれど、入れないのがミンマ流。
そしてアランチーネ。シチリア版マンマの握り飯。でも、これは結構手間がかかるのだ。リゾットを作って、中身のラグーを作って、握って、揚げる。パレルモでは、丸型はラグー、楕円はモッツァレッラにハムと決まっている。行程が多くて大変だけど、揚げたて熱々を食べればそれはもう幸せなのだ。でも、熱々が苦手なイタリア人も多い。アペリティーヴォにしたり、お弁当にしたりシチリアのソウルフードだ。サイズも大きめなので、ひとつ食べれば腹いっぱいに。
以前は数学の先生だったミンマさんは、料理の段取りも完璧。3品をテキパキとこなしていく。その横で静かに見守るジョバンニさん。特に料理を手伝うこともないのだけれど、もう長年ずっとこうやってそばにいたんだろうなと、二人のいい関係がすてきだった。
最後にパレルモ生まれのパレルモ育ちの二人に、この街の魅力を聞いてみた。すると直ぐに「Citta di cuore」(心ある街、心ある人)だと。パレルモには問題もあり、色々な事件も起こるけど、それも含めて私たちの街だし、何よりもこの街には人々の人情があふれているのだと言っていた。好きなんだ自分たちの街を。
市場を歩けば大きな声が飛び交い、ストリートフードを頬ばり、さまさまな文化が交錯した中で、人が生かされているのではなく、人が生きている街パレルモ。また、アランチーニ片手に歩いてみたい。
文:イタリア好き編集長 マッシモ 写真:萬田康文
材料
アランチーネ(テニスボール大 20個分)
〈サフランリゾット〉 | ||
---|---|---|
・タマネギ | 1/3個 | |
・ニンジン | 1/3本 | |
・セロリ茎 | 1/3本 | |
・米 | 800g | できればイタリア米 |
・サフラン | 0.15g | |
・バター | 50g | |
・パルミジャーノ・レッジャーノ | 80g~100g | |
・オリーヴオイル | 適量 | |
〈ラグー〉 | ||
・タマネギ | 1/3個 | |
・ニンジン | 1/3本 | |
・セロリ茎 | 1/3本 | |
・仔牛のひき肉 | 800g | |
・トマトソース | 350cc~400cc | |
・塩・コショウ | 適量 | |
・オリーヴオイル | 適量 | |
〈揚げ衣〉 | ||
・卵 | 適量 | |
・パン粉 | 適量 | |
〈野菜のブロード〉 *市販ブイヨンでも可 | 水(3l)、ズッキーニ(1本)、ジャガイモ(1個)、トマト(2個)、タマネギ(2個)、ニンジン(2本)、セロリ茎(3本)、ローリエ(3枚)、ニンニク(1片)、塩・コショウ(適量) |
種類豊富なイタリア食材&ワインサイト「tartaruga(タルタルーガ)」からもお求めいただけます。
作り方
全体の流れ
- サフランリゾットを作る。
- ラグーを作る。
- サフランリゾットにラグーをいれてアランチーニを仕上げる。
下ごしらえ
- 野菜のブロードを作っておく。それぞれの材料を適当な大きさに切って、水から強火で煮る。沸騰したら塩、コショウを加え、弱火で蓋をせずに1時間半ほど煮込み、濾しておく。
- リゾットとラグー用にタマネギ、ニンジン、セロリ茎はそれぞれみじん切りにしておく。
- サフランを水で戻しておく。(写真a 参照)
サフランリゾットの作り方
- 鍋にオリーヴオイルをひいてタマネギ、ニンジン、セロリを入れたら炒め、香りが出たら米を加えて炒める。(写真b 参照)
- 全体に油が回ったら、水で戻してあったサフランと温めてあるブロードをひたひたに入れ、小さじ1程度の塩を足し、ゆっくり混ぜながら米を炊いていく。常に湧いている状態をキープする。(写真c,d 参照)
- 水分が減ってきたらブロードを足しながら炊いていく。これを繰り返し、ほどよい硬さになったらバターを加えしっかり混ぜ合わせ、最後にパルミジャーノ・レッジャーノを加え混ぜる。(写真e 参照
- 炊き上がりをバットなどに広げ冷ましておく。
ラグーの作り方
- 鍋にオリーヴオイルをひいてタマネギ、ニンジン、セロリを入れたら炒める。(写真f 参照)
- 香りが出たら仔牛のひき肉を入れて炒める。(写真g 参照)
- 全体に火が通ったらトマトソースを入れて、塩を加え、水分がほとんどなくなるまで煮込み、最後に味見をして塩味を調整する。(写真h 参照)