
お料理説明・背景

2016年11月。北イタリアのパン特集(vol.28)の取材で、ロンバルディアのガルダ湖畔のホテルに滞在していた。寒い夜明け前からパン屋の取材に出かけるが、パン屋に着けばその香ばしい匂いに包まれ、焼きたてのパンを試食すれば、寒さも眠気も一気に吹っ飛んだ。ルチアーナさんの取材はそんな時だった。
マントヴァでレストランを営んでいた両親の姿を見て、子供の頃から料理を好きになったというルチアーナさん。「いつも作っているから細かいことは忘れてしまったわ」と、雑誌や新聞から、お気に入りのレシピを切り抜いてスクラップしてある厚いノートを取り出して、一所懸命にレシピを探してくれた。その束の中には100年以上前の1902年に書かれたおばあさんのレシピも。手書きで、詩的に書かれたそれを、顔をほころばせ、うれしそうに読み返す姿が微笑ましかった。それぞれのレシピに思い出やストーリーがあるようだった。
ルチアーナさんは、マントヴァから30kmほど北上したカステッラーロ・ラグゼッロという城と小さな湖がある静かな町で、父方の家族が住んでいた1600年代の館に一人暮らしている。室内は、使いこまれた古い家具や、家族代々の写真や年代物の調度品が品よく飾られ、豊かさと歴史を感じさせてくれる。古いレシピもこの館の歴史と共に家族を支えてきたのだろう。
キッチンにはオーブン調理のできる薪ストーブがあり、ルチアーナさんのお気に入りだ。「料理の出来が違うのうよ」と、薪をくべるのも、火加減も慣れたものだった。
この日は紹介しているオリジナルレシピのインボルティーニ以外に、カボチャのリゾットにブラザート(肉を野菜とワインで長時間マリネした後、ワインを加えてじっくり煮込んだ料理)と、マントヴァらしい家庭料理を用意してくれていたので、カボチャを茹でたり、牛肉を煮込んだりと、ストーブはフル稼働だった。
昼食は、近くに暮らす娘家族と友人と共にした。子供の頃からずっと近くにいた孫のニコラさんは、ミラノの大学へ行ってからはなかなか会えなくなり、久しぶりの再会だった。やさしい声をかけて手伝うニコラさんと、うれしそうに応えるルチアーナさんの、ほのぼのとした二人の様子は、和やかな空気で辺りを包んでいたのだ。
一人の時は読書をして静かに過ごしているルチアーナさん。白髪に赤いセーターがとても素敵だった。
文:イタリア好き編集長 マッシモ 写真:萬田康文
★『イタリア好き』本誌vol.21『イタリア好き』北イタリアのパン→https://italiazuki.com/?p=19825
材料

ルチアーナ風インボルティーニ(6人分)
・牛肉の薄切り | 6枚 | |
---|---|---|
・鶏肉の薄切り | 6枚 | |
・パンチェッタ | 12枚 | |
・クリームチーズ | 適量 | |
・セージ | 12枚 | |
・白ワイン | 100㏄ | |
・バター | 約20g | |
(A)ナツメグ | 適量 | |
(A)シナモンパウダー | 適量 | |
(A)オリーヴオイル | 適量 | |
(A)セージ | 2~3枚 | お好み |
(A)ローズマリー | 1枝 | お好み |
(A)ローリエ | 1枚 | お好み |
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作り方
- それぞれの肉は叩いて薄く伸ばす。
- お肉を広げて、クリームチーズを薄く塗り、その上にパンチェッタ、セージの順で載せる。(写真a,b 参照)
- それぞれを巻いて串に刺す。(写真c,d 参照)
- 大きめのフライパンに(3)をべる。(写真e 参照)
- そこに白ワインと(A)を加えたら、蓋をして弱火で30分ほど煮込む。(時間は様子を見ながら調整してください)(写真f 参照)
- 出来上がったらフライパンからお肉を取り出し、そこにバターを入れてソースを作る。(写真g 参照)
- 串から外して皿に盛ったお肉に(6)のソースをかけて出来上がり。