お料理説明・背景
今回ご紹介します「棒ダラの煮込みウンブリア風」を作ってくれたのは、私のイタリアの叔母ラウラ・アントリーニさんです。40年間幼稚園の先生として勤労したZiaLaura(ラウラ叔母ちゃん)は夫の叔母であり、愛情深いお料理上手なイタリアのマンマです。
近所に住んでいるということもあり私の一人娘の子育ても積極的に助けてくれ、イタリア料理の基本を教えてくれた女性です。
ウンブリア州の方言もたくさん彼女から学びました。方言は使う使わないは別として、知っておいたほうが、親近感が生まれやすく、地元の人に溶け込み易いというのはあります。
ウンブリア州は内陸で海がないので、お魚料理が伝統料理なのは不思議ですが、その理由を聞くと、一昔前のウンブリア州の農家や庭がある一般家庭では豚や鶏、七面鳥を飼育しており、お肉または淡水魚は手に入りやすい環境でしたが、昔は今ほど流通がなく、海水魚はなかなか手に入りませんでした。ですが、当時この辺りで週に一度行われる朝市では、沿岸部の州から棒ダラを売りに来る人がいたようで、Zia Lauraが幼少の頃(戦後数十年)は、市場で鶏や鳩を売っていた人達がその売上金で棒ダラを買うか鶏や鳩と物々交換をするなど、安価に手に入る身近な魚だったそうです。
内陸に住むウンブリアの人々にとって、ヨード(ヨウ素)を摂取するのに必要な食品であったことは間違いないのですが、そういった背景から当時は海のお魚料理といえば、棒ダラ(イタリア語ではバッカラbaccalà)で、ウンブリア州の魚料理としてよく食されていました。ちなみに棒ダラは、今ではイタリアでも少しお高い食品として扱われています。
そして、イタリアではキリスト教の習しで、毎週金曜日と12月24日はお肉は食べずお魚を食べるとされていますが、そういうことからこのレシピはクリスマスイブに作られる1品でもあります。
煮込む時にはレーズンとドライプルーンを入れるため、棒ダラの塩分と甘さがうまく絡まって、絶妙な味わいです。
棒ダラは3~4日、水の中に浸け置きし毎日水を替え、塩抜きをするのに時間はかかりますが、お料理はすごく簡単にできますので、イタリア気分で金曜日のディナーに、みなさまのご家庭でお試ししてはいかがですか?!
このお料理を作った12月8日は、イタリアの祝日「無原罪の聖母マリア」の日でしたが、この日にイタリアでは多くの人がクリスマスツリーを飾ります。私たちがお料理をしている間、叔父がクリスマスツリーの飾り付けをしていました。
20代前半にヨーロッパを旅行中にイタリアに一番魅了される。数度目のイタリア旅行でウンブリア州にある陶器村デルータを訪れた際、マヨルカ焼きの絵付師になりたいと感じ、1年後の95年に渡伊。ロマーノ・ラニエリ師に師事しながらフリーの絵付け師として活動。現在はアーティスト活動しながら、長年のイタリア在住の経験を生かし企業通訳を始め個人旅行の通訳や旅のコーディネーターとしても活動中。ロコタビ(YUKO):https://locotabi.jp/loco/yukospagliccia。
作り方
下ごしらえ
- 棒ダラを3~4日水につけ、毎日水を替えながら塩抜きをする。(写真a 参照)
- 料理を始める前に、レーズンとドライプルーンを水に浸けておく。
作り方
- タマネギとセロリを細かく切る。
- 棒ダラの皮を剥がし、小骨も取り除く。(写真b 参照)
- 棒ダラを適度な大きさに切る。(写真c 参照)
- フライパンにオリーヴオイル50mlを入れ、1のタマネギとセロリを炒める。ある程度まで柔らかく炒めるのに少し水を加えてもよい。(写真d 参照)
- 別のフライパンにオリーヴオイル50mlを加え、棒ダラに塩、コショウ少々をして軽く炒める。ただし、塩抜き日数により塩加減が変わりますので、味見をして完全に塩味が抜けていたら、少し塩をする。(写真e 参照)
- 3にトマトソースを入れ約5分程度中火で煮込む。注)適度な水分を保つため、少し水を加えてもよい。(写真f 参照)
- 5に4の棒ダラ、そしてドライプルーンとレーズン(ソースに入れる際、水分を手で絞りきる)を加え約20分ほど蓋をせずに弱火で煮込み、最後に塩味が足りなければ塩で味を調える。注)水分が完全になくなりそうな場合は、様子を見ながら水を少し加えて調整する。(写真g 参照)