お料理説明・背景
カリンさんとの出会いは2016年vol.28のパン特集の取材のとき。それは偶然だった。ヴァルドヴィアーデネ(プロセッコの産地として知られる)の村で通りがかりに見つけた看板に「Antico forno a legna」とあり、薪窯のパン屋だと飛び込んだのが最初だ。そのときのカリンさんの対応が実に心地よく、店内の装飾やセレクトしている物のセンスも抜群。もちろん、古い薪窯で焼くご主人のジェルマーノさんのパンもおいしいかった。
それから数カ月後、次の取材でイタリアを訪れるときに、改めてマンマのレシピの取材を申し込んで再会することになった。
自宅は、広い芝生の庭に、淡いピンク色で塗られた壁がかわいい家。ヴェネト州ピアーヴェの石とヴェネツィアのタイルで装飾されたキッチンは、料理好きのカリンさんのお気に入りの場所だ。「最近は忙しくてなかなかゆっくり料理をする時間が取れない」と少し寂しげだった。でも取材の時は、特産のラディッキョ・トレヴィーゾやポレンタ、ポルロッティ豆にソプレッサ、そしてプロセッコなど地元、地域の特産品をふんだんに使ったヴェネトらしい料理をたくさん作ってもてなしてくれたのだ。
今回紹介するのは、その中でも特産のボルロッティ豆を使ったスープ。ヴェネト州最北部のベッルーノ県ラモンは、良質の豆が取れる産地として知られ、甘く、軟らかい味わいが評判だ。前日に一緒に行った八百屋でカリンさんが、一所懸命に話してくれた。
この日は娘と息子も在宅していて、一緒に食事した。当時高校生で18歳の長女アンジェラさんは、パオロットの免許試験に合格して、操縦資格を持つ理系女子。「地元は好きだけど、少し閉鎖的なところもあるから早く外の世界へ飛び出したい」と、夢や希望に満ちた才女。長男のトンマーゾ君は当時中学生。彼もまた独立心も強く、興味関心ごとに熱中するタイプのようだった。放牧民族のマルガの家族のところへ出入りして、放牧や、チーズやサラミ作りを手伝っていて、将来はその道へ進みたいと話していた。自宅で飼っているヤギや鶏の世話もすべて彼がやっている。両親は早くから店に出ているので、それぞれお互いを尊重しながら生活している、仲のよい家族だった。
なんのコネもなく、飛び込みで入ったパン屋取材から繋がった縁で、本人はもちろん、家族も皆が歓迎してくれて、それに料理もおいしいなんていい出会いだった。
その後、2017年クリスマスに日本で開催したイベントにカリンさんを招いて、彼女の料理を振舞ったのでした。
文:イタリア好き編集長 マッシモ 写真:萬田康文
★『イタリア好き』本誌vol.31『イタリア好き』ってなんだ?→hhttps://italiazuki.com/?p=22746
材料
インゲン豆のスープ(4~6人分)
・ボルロッティ豆(ラモン産インゲン豆) | 500g | |
---|---|---|
・パンチェッタ | 50g | |
・タマネギ | 1/2個 | |
・ニンジン | 1/2本 | |
・セロリ | 1/2本 | |
・ジャガイモ | 2個 | |
・ディタリーニ | 120g | 好みのショートパスタでも可 |
・エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイル | 適量 | |
・塩、コショウ | 適量 | |
・ブロード | 500~600㏄ | ブイヨンを使っても可 |
種類豊富なイタリア食材&ワインサイト「tartaruga(タルタルーガ)」からもお求めいただけます。
作り方
下ごしらえ
- ボルロッティ豆は前日に準備し、洗ってから水に12時間浸しておく。(写真a 参照)
作り方
- 準備しておいたボルロッティ豆を45分程度下ゆでする。
- 半量 (1/3程度からお好みで)をフードプロセッサにかけて撹拌する。半量はそのまま残しておく。(写真b 参照)
- パンチェッタは細かく刻み、タマネギ、ニンジン、セロリは粗くみじん切りにし、ジャガイモはさいの目に切る。鍋にエクストラ・ヴェージン・オリーヴオイルを引いて、タマネギ、ニンジン、セロリをいため、香りが出たらパンチェッタを加え炒める。(写真c 参照)
- タマネギが透き通ってきたらジャガイモと下ゆでした半量のボルロッティ豆を加えてさらに炒める。
- 4にブロードを入れてボルロッティ豆が軟らかくなる(約2〜3時間程度)まで煮込む。(写真d 参照)
- この間にパスタをゆでておく。(写真e 参照)
- ボルロッティ豆が軟らかくなったら、ゆでておいたパスタと撹拌してあったボルロッティ豆を加え、塩、コショウ、エクストラ・ヴェージン・オリーヴオイルで味を整えて出来上がり。(写真f 参照)