マンマのレシピ

マンマの紹介

  • リッリ・トラヴェルサ(Lilli Traversa)さん
  • ピエモンテ州クーネオ県ブラ在住
  • 【得意料理】パスタ全般、特にリグーリア州のトロフィエ・アル・ペーストやピエモンテのタヤリン。 イタリアでは珍しい、クリスマスに食べる詰め物入り七面鳥のロースト(曽祖母がアメリカ出身だったため)。

お料理説明・背景

たっぷりのパセリ、ニンニク、アンチョビ、オリーヴオイルを基本材料に、イタリアの各地で作られるサルサ・ヴェルデ(グリーンのソース)。ピエモンテ州では「バニェット・ヴェルデ」と呼ばれ、郷土料理に欠かせない存在だ。ピエモンテーゼ自慢の「ボッリート・ミスト」に添えるのが王道とされているが、塩漬けのアンチョビにたっぷりかけた「アッチューゲ・アル・ヴェルデ」(アンチョビのグリーン仕立て)や、野菜のブロードでゆでた牛タンと食べる「リングア・ディ・ヴィテッロ・イン・バニェット・ヴェルデ」(牛タンのバニェット・ヴェルデ添え)などなど、様々な料理に組み合わせて楽しむ。

「私の家では、最近、肉食を控えているのでボッリートはめっきり食べなくなったけど、バニェット・ヴェルデは大好きだから、トミーノというピエモンテのフレッシュチーズやゆで卵、そしていろいろな野菜に揃えてバニェット・ヴェルデを食べる日、そんなふうにして楽しむの」と教えてくれたのは、前回、ペスケ・リピエーネを作ってくれたリッリ・トラヴェルサさん。
笑顔のリッリさん料理上手だったおばあさん直伝のレシピに、「酸っぱいのが好きだから」と、ピクルスやペペロンチーノを加えたリッリ流バニェットは、酸味と辛味が効いていて、どんどん食がすすむ。赤ワインヴィネガーは彼女の自家製。

「バニェットというのはピエモンテの方言で「ソース」という意味で、ピエモンテにはいろいろなバニェットがあるのよ。トマトとペペロンチーノが入った”バニェット・ロッス(ロッソ=赤)”や、バター、アンチョビ、ニンニク、パン粉をまぜあわせた貧乏人のバニェットとか」とリッリさん。

笑顔のリッリさんそういえばピエモンテを代表する料理、たっぷりのニンニクにアンチョビをきかせた「バーニャ・カウダ」のバーニャも、ソース、ラグーというような意味だそうだ(写真はバーニャ作りに欠かせない名産のニンニク)。ピエモンテ料理にバニェット=ソースがたくさんあるのは、フランスとイタリアをまたぐサヴォイア文化の影響のせいなのだろうか。

サヴォイア文化といえば、バニェット・ヴェルデも19世紀のサヴォイア家の王様、カルロ・アルベルトの宮廷料理として生まれたと言われている。その息子が、イタリアを統一してイタリア王となった、ヴィットーリオ・エマヌエレ2世。トリノを最初の首都とした後に、フィレンツェ、ローマと次々に遷都して行った移り気な(?)王様は、バニェット・ヴェルデのレシピも一緒に持って行ったのだろうか。今ではイタリア各地に、サルサ・ヴェルデとして伝わり、色々なバージョンが誕生して親しまれている。

レポート:宮本 さやか(Sayaka Miyamoto)
1996年よりイタリア・トリノ在住。ライター、コーディネーターとして日本にイタリアの食情報を発信する。『東洋経済オンライン』『料理通信』Asahi.com『Globe+』、News Week 日本版ブログ『World Voice』,QJWebなどに執筆。本物の日本食文化を伝えるwebサイト「SASAYAKA」を3ヶ国語にて展開。同名の和風チョコレートを、トリノの老舗チョコレート職人とのコラボにて発売を開始したばかり。イタリアの暮らしやコロナ情報を綴った個人ブログ「ピエモンテのしあわせマダミン2」も好評。ノート版こちら→https://note.com/miyamoto_madamin

材料

バニェット・ヴェルデ(6人分)

・イタリアンパセリ約120~140g葉っぱの部分のみを2束
・ゆで卵の黄身2個
・塩漬けアンチョビ2尾オイル漬けのアンチョビ4切れでも可
・塩漬けケッパー10粒(約20g)なければ酢漬けのもので代用
・硬くなったパンの白い部分最大100g
・エクストラ・ヴァージン・オリーブオイル300~350cc
・赤ワインヴィネガー適宜1/2カップ程度(パンを浸すのと調味用)
・ペペロンチーノ1本
・タマネギのピクルス6~8個写真のような小ぶりの場合
・キュウリのピクルス3~4本写真のような小ぶりの場合
・塩適宜

作り方

  1. パセリはよく洗い、硬い軸の部分ははずし、布巾に包むなどしてよく水気を拭き取る。(写真a,b 参照)
  2. 塩漬けのアンチョビは手開きにして骨や内臓を外し、塩を洗い流したら、軽く水気をとっておく。塩漬けが手に入らない場合は、オイル漬けのアンチョビで代用する。(写真c 参照)
  3. 塩漬けのケッパーは軽く塩を洗い流す。(写真d 参照)
  4. 硬くなったパンはヴィネガーにつけて柔らかく戻したら、よく絞り、適当な大きさに千切っておく。(写真e 参照)
  5. パセリ、アンチョビ、ケッパー、ピクルス、ペペロンチーノ、パンをミキサーやフードプロセッサーに入れ、オリーヴオイルを加えながら滑らかになるまで撹拌する。オリーヴオイルの量は、自分が作りたい濃さで調整する。さらっとしたソースでというより、ドロリとしたペースト状がバニェット・ヴェルデの基本。(写真f 参照)
  6. 最後に味を見ながらヴィネガー、塩で味を調える。
  7. 食べ方。ボッリート・ミストやゆでた牛タンに合わせるのが王道だが、その他、フレッシュ系のチーズや野菜、ゆでたジャガイモに添えるととてもおいしい。アンチョビにかければピエモンテの代表的アンティパスト「アッチューゲ・アル・ヴェルデ」のできあがり。そして黄身をソースに使ってしまったゆで卵の、白身の部分に入れたら、とてもかわいい一品に。(写真g 参照)
  • a. パセリを布巾にのせる
  • b. 包むなどして水気を拭き取る
  • c. 手開きにして塩を洗い流す
  • d. ケッパーの塩を軽く洗い流す
  • e. パンをヴィネガーで戻して絞る
  • f. 材料をミキサーで撹拌する
  • g. 色々な食べ方

お料理ポイント

パセリの水気をしっかり切ることがおいしさの大事なポイント。パセリはできるだけ葉の部分だけを使うと、滑らかなソースに仕上がる。パンの量100gは好みで調整する。サラサラが好きな人はもっとパンの量を減らしていい。リッリいわく100gがマックス。オリーヴオイルの量も同様に、好みで調整する。
レシピでは硬くなったパンの白い部分のみを使うことになっているが、リッリ個人的には「もったいないから全体、つまり耳の部分も入れちゃうの」とのこと。