あったか家族のアグリトゥリズモ × サラミ作り見学
「農業」と「観光」をかけ合わせたイタリア語、アグリトゥリズモ。「農家に泊まる」「農業を体験する」イメージを持つ方も多いかもしれませんが宿泊は必須ではなく、農家直営のレストラン、という感覚で食を楽しめる場所です。提供する食材のだいたい半分以上が自家生産、というのがアグリトゥリズモを名乗れる基準のよう(州によって割合が異なるほか、山間部などでは地域差もあります。)
つまり、気軽に新鮮で旬の美味しいものを堪能できる生産者の家、であり、田舎のほうに行けば点在していて、私の住むヴェローナも例外ではありません。
そんな中で今回紹介するのはここ、アル ボスコ。
市内から30分ほど大自然を見渡す丘をドライブして辿り着く、隠れ家のような存在で私のお気に入りです。
今から20年前、マウロたち4人兄弟姉妹は両親と共に、もともと何世代にも渡って住んでいた土地8ヘクタールを一から整備し直して、アグリトゥリズモに転換したのだそう。
土地の半分はアマローネで有名なヴァルポリチェッラDOCGとソアヴェDOCのブドウ畑が占めるほか、オリーブの木が300本。さらにはエンドウマメ、トマト、ラディッキオ、リンゴ、チェリー・・・と挙げればキリがないほどの農作物を栽培し、鶏や鴨、豚の飼育まで行っているのですが、あくまでも目的はレストランで提供するためであって、売るのはごくわずか。マーケットなどへの出店もせず、個人的に頼まれたときのみです。
夏は毎日休まずフル回転でレストランを営業、9月~10月はブドウの収穫で大忙し。秋冬はレストラン営業を週末やクリスマス休暇などに限定して、、、少し休憩しているのかと思ったら大間違い。
11月に入り「サラミ作るよ~」との連絡を受け、特別に見学させてもらうことになりました。冷蔵設備のなかった時代から伝統的に、お肉を扱う作業は冬と決まっていますが、クリスマスなどでレストランが再び忙しくなる12月を避け、マウロたちは少し前倒し。5月末に購入したオスの豚9頭を3頭ずつ3週間に分けて、火曜と水曜に家族総出で400本ものサラミを手作りしています。
お肉は主にモモ、ロース、ネックなどの良質な部分を選び抜いて使用。まずお肉を手でもみほぐしていき、そこに塩とコショウ、ニンニクを混ぜ合わせてタネを準備します。
ここで一旦味見。生肉のままでは無理なので、焼いたものを食べて塩加減を確かめます。
次に用意するのが、お肉を詰める薄い袋のようなもの。
腸詰と言われるように、これは牛の腸からできているものです。
それをお肉のタネを詰めた装置の左側に設置し、右側のハンドルを回していくと、
慣れた手つきでみるみるうちに立派なサラミが形作られていきます。
お湯に通して腸とタネをなじませ紐でお馴染みの形に縛り、空気を抜くために針で小さな穴をたくさん開けたら、ひとまず完了。一晩、倉庫でつるして水分を落とし、熟成部屋へと移します。
通常、小さなサラミだと1か月程度で食べ頃となりますが、こちらはヴェネト名物の大きくて熟成期間が長いソプレッサという種。半年以上の熟成を経て、食べられるのは来年5月以降です。この間、水分が抜けて重さは約30%落ちるんだとか。
熟成が始まったばかりのサラミは最初の1か月が繊細なため、細心のケアが必要。特に熟成部屋の湿度管理が重要で、湿度を75-80%に保たなければなりません。しかしながら、マウロたちは湿度管理機器などを置かず、雨が少ないと水をまいて調節します。床は砂利とテラコッタが良く、セメントの壁は呼吸ができないからダメ、などと建築材にも注意が払われているそうです。
出来上がったサラミの周りが白っぽいのは、貴腐と呼ばれる白カビが発生するから。貴腐はサラミ内外の湿度を適度に保ち、正しく熟成するのを助けてくれると言います。
マウロたちの目的は大量生産ではないので、電動機械は使わず、全て手作業。アナログな伝統製法にこだわりアットホームな雰囲気の中、丁寧に仕上げられるこのサラミは、それだけで特別感が漂いますよね。それを、他の美味しい自家製食材と一緒に味わえるのがアグリトゥリズモの醍醐味であり嬉しいポイント。
レストランではウェイターを務めるマウロも「お皿をお客様に出すとき、つまり自分たちが一から作り上げたものが美味しい料理となって消費者に届く-その瞬間に感慨深いものがある」と語っていました。
生産者と消費者が直接つながり、お互いの顔が見えるアグリトゥリズモ。ここに限らず、イタリアでオススメしたい体験の一つです。
つまり、気軽に新鮮で旬の美味しいものを堪能できる生産者の家、であり、田舎のほうに行けば点在していて、私の住むヴェローナも例外ではありません。
そんな中で今回紹介するのはここ、アル ボスコ。
市内から30分ほど大自然を見渡す丘をドライブして辿り着く、隠れ家のような存在で私のお気に入りです。
今から20年前、マウロたち4人兄弟姉妹は両親と共に、もともと何世代にも渡って住んでいた土地8ヘクタールを一から整備し直して、アグリトゥリズモに転換したのだそう。
土地の半分はアマローネで有名なヴァルポリチェッラDOCGとソアヴェDOCのブドウ畑が占めるほか、オリーブの木が300本。さらにはエンドウマメ、トマト、ラディッキオ、リンゴ、チェリー・・・と挙げればキリがないほどの農作物を栽培し、鶏や鴨、豚の飼育まで行っているのですが、あくまでも目的はレストランで提供するためであって、売るのはごくわずか。マーケットなどへの出店もせず、個人的に頼まれたときのみです。
夏は毎日休まずフル回転でレストランを営業、9月~10月はブドウの収穫で大忙し。秋冬はレストラン営業を週末やクリスマス休暇などに限定して、、、少し休憩しているのかと思ったら大間違い。
11月に入り「サラミ作るよ~」との連絡を受け、特別に見学させてもらうことになりました。冷蔵設備のなかった時代から伝統的に、お肉を扱う作業は冬と決まっていますが、クリスマスなどでレストランが再び忙しくなる12月を避け、マウロたちは少し前倒し。5月末に購入したオスの豚9頭を3頭ずつ3週間に分けて、火曜と水曜に家族総出で400本ものサラミを手作りしています。
お肉は主にモモ、ロース、ネックなどの良質な部分を選び抜いて使用。まずお肉を手でもみほぐしていき、そこに塩とコショウ、ニンニクを混ぜ合わせてタネを準備します。
ここで一旦味見。生肉のままでは無理なので、焼いたものを食べて塩加減を確かめます。
次に用意するのが、お肉を詰める薄い袋のようなもの。
腸詰と言われるように、これは牛の腸からできているものです。
それをお肉のタネを詰めた装置の左側に設置し、右側のハンドルを回していくと、
慣れた手つきでみるみるうちに立派なサラミが形作られていきます。
お湯に通して腸とタネをなじませ紐でお馴染みの形に縛り、空気を抜くために針で小さな穴をたくさん開けたら、ひとまず完了。一晩、倉庫でつるして水分を落とし、熟成部屋へと移します。
通常、小さなサラミだと1か月程度で食べ頃となりますが、こちらはヴェネト名物の大きくて熟成期間が長いソプレッサという種。半年以上の熟成を経て、食べられるのは来年5月以降です。この間、水分が抜けて重さは約30%落ちるんだとか。
熟成が始まったばかりのサラミは最初の1か月が繊細なため、細心のケアが必要。特に熟成部屋の湿度管理が重要で、湿度を75-80%に保たなければなりません。しかしながら、マウロたちは湿度管理機器などを置かず、雨が少ないと水をまいて調節します。床は砂利とテラコッタが良く、セメントの壁は呼吸ができないからダメ、などと建築材にも注意が払われているそうです。
出来上がったサラミの周りが白っぽいのは、貴腐と呼ばれる白カビが発生するから。貴腐はサラミ内外の湿度を適度に保ち、正しく熟成するのを助けてくれると言います。
マウロたちの目的は大量生産ではないので、電動機械は使わず、全て手作業。アナログな伝統製法にこだわりアットホームな雰囲気の中、丁寧に仕上げられるこのサラミは、それだけで特別感が漂いますよね。それを、他の美味しい自家製食材と一緒に味わえるのがアグリトゥリズモの醍醐味であり嬉しいポイント。
レストランではウェイターを務めるマウロも「お皿をお客様に出すとき、つまり自分たちが一から作り上げたものが美味しい料理となって消費者に届く-その瞬間に感慨深いものがある」と語っていました。
生産者と消費者が直接つながり、お互いの顔が見えるアグリトゥリズモ。ここに限らず、イタリアでオススメしたい体験の一つです。