お料理説明・背景
イタリアのリンゴは主に北イタリアのヴァッレ・ダオスタ、トレンティーノ-アルト・アディジェ、ロンバルディアで栽培されていますが、品種に応じてほぼ一年中手に入ります。イタリアもようやく外出規制が緩和され、レストラン営業も再開しましたがバールやレストランでは5月末現在も「リンゴのクランブルケーキ」などが並び、スーパーや八百屋ではフジ(イタリアでもFUJIとそのままの名前が使われています)、ゴールデンデリシャス、ピンクレディーなどの品種が売られています。イタリアの家庭はどこでもカゴいっぱいのフルーツ盛りがありますが、日持ちするリンゴが入っている率は高く、持ち運びしやすいので春〜夏にかけてのハイキングやピクニックでもリンゴは人気です。
「リンゴはいつでも手に入るから好きな時に作れて便利なの。このケーキは見栄えがするからお誕生日会などで出すととても喜ばれるケーキなんですよ。先日も友人の誕生日にプレゼントしたところ、とても喜ばれたわ」とパトリツィアさん。
今回のマンマ、パトリッツィアさんは北イタリアのヴィットリア・ヴェネト出身で1972年からフィレンツェで暮らしています。はじめの頃はトスカーナ料理をほとんど作ったことがありませんでしたが、結婚してすぐフィレンツェ出身のご主人フランチェスコさんからフィレンツェ料理のレシピ本をプレゼントされて以来フィレンツェ料理も作るようになりました。フィレンツェ風リンゴケーキもレシピ本に掲載されているものをベースに、パトリツィアさんがお気に入りの味にたどり着くまで色々試してアレンジしたものです。
「うちの自慢のオーブンを是非見てちょうだい」とパトリツィアさんが言うので、見てみるとちょっとレトロなオーブンが。「いつのものかわかる? 40年も前の1981年に買ったオーブンなのよ! 」ドイツのブランドGAGGENAU製で当時6000ユーロ(約80万円)もした高級品なのだそうです。今でも新しく見えるほどピカピカに磨かれており、キレイ好きのパトリツィアさんが日頃からよく手入れをして大事にしているのがよくわかりました。今回のリンゴケーキを焼いたのもこのオーブンです。
「このオーブンは私よりも年上なのよ。オーブンを見てわかる通り、マンマはキレイ好きでいつも家の中をピカピカに掃除していて私と正反対でしょ……」と苦笑いしながら娘のクラウディアさんはケーキ作りを手伝ってくれました。
友人や親族を招待して食事会を開くことも多いパトリツィアさんにとって、いつでも自宅にあるリンゴで、ささっと作ることができるこのケーキは重宝するデザートです。
フランスのタルト・タタンのように最後にひっくり返しますが、パトリツィアマンマのケーキはリンゴを生の状態でそのままオーブンに入れるので全く違う感じに仕上がります。リンゴ自体には砂糖を加えないため仕上がりは甘さ控えめ、生地に加えるレモンの皮がさわやかでやさしい味に仕上がります。パトリツィアさん自慢のリンゴケーキ、アイスクリームを添えてもおいしいですよ。
元静岡朝日テレビ報道記者。2012年からフィレンツェ在局FMラジオにレギュラー出演中。FIATジャパン公式サイトや週刊新潮等でライターとして活動中。世界40カ国旅行。イタリアで起業、オンラインショップ&ブログ「AmicaMakoイタリアンスタイル」を運営。
作り方
下ごしらえ
- オーブンを180度に予熱しておく。
- ケーキ型の側面にバターをつけて小麦粉(分量外)をまぶしておく。24cmの丸型にあわせて切ったクッキングシートを濡らしてくしゃくしゃとしたものを底に敷く。(写真a 参照)
- 卵は卵黄と卵白に分けておく。(写真b 参照)
- レーズンを熱いお湯に30分~1時間ほどつけて戻しておく。
- リンゴの皮を剥き、薄くイチョウ切りにする。
作り方
- バターを電子レンジで1分ほど熱してやわらかくする。
- 大きめのボウルに砂糖とバターを入れてよくかき混ぜる。(写真c 参照)
- バターがクリーム状になったら、卵黄、小麦粉、fecola di patate、ドライイースト、刻んだクルミ、水けを取り除いたレーズンを加え、よく混ぜ合わせる。(写真d 参照)
- レモンの皮の黄色い部分を削って生地に加える。(写真e 参照)
- 別の容器に卵白を入れ、塩を一つまみ加える。(写真f 参照)
- 卵白を角が立つまで泡立てる。(写真g 参照)
- 卵白を4のボウルに加えてフォークで泡をつぶさないようにさっくりと混ぜ合わせる。(写真h,i 参照)
- 型の底に切ったリンゴを敷き詰める。(写真j 参照)
- リンゴを敷いた上から生地を流し入れる。(写真k 参照)
- 180度のオーブンで40分焼く。(写真l 参照)
- オーブンから取り出し、粗熱がとれたらケーキ型の側面を取り外す。(写真m 参照)
- 上から皿をかぶせケーキをひっくり返す。(写真n 参照)
- クッキングシートを丁寧にはがす。(写真o 参照)
- 完全に熱が冷めたら、お好みでバニラ風味の粉糖を上から茶こしなどを使って振りかける。(写真p 参照)