お料理説明・背景
イタリア人にとって、パスクアと呼ばれる復活祭はクリスマス同様に大切な一大行事の一つです。それもそのはず。クリスマスがイエス・キリストの誕生した日なら、パスクアは人間としての生涯を終えたはずのキリストが、その3日後に復活したことを祝う日だからです。やがて時代を経るにつれ、パスクアは春を祝う祝祭ともなります。
クリスマスにはクリスマスツリーが必須のように、パスクアにも必要不可欠なものがあります。それは卵! 卵はキリスト教では生命の誕生を象徴し、パスクアのシンボル的な存在でもあります。カラフルに色付けされた卵はイースターエッグと呼ばれ、食卓を鮮やかに彩ります。娘の学校では、毎年小さなチョコレートを卵に見立てて学校の敷地内のあちこちに隠し、それらを子供たちが探し出すという、いわゆる『イースターハンティング』が恒例の行事ともなっているほどです。バスケットを片手に走り回る子供たち! 本当に春らしい光景なのですが、残念ながら、今年も昨年同様に新型コロナウイルスの影響で中止となってしまいました。
パスクアといえば、この日だけの独自の風習があります。普段は甘いものとカプチーノで朝を迎えるイタリア人ですが、この日ばかりはゆで卵を筆頭に、甘いもの抜きの朝食をいただくのです。ゆで卵だけではなく、チーズ風味のブリオッシュとサラミをいただくのもパスクアの典型的な光景です。
さてパスクアでは、当然のことながら卵料理が不可欠となります。フリッタータと呼ばれるイタリア風卵焼きにしたり、ゆで卵にしてパン生地の中に含ませて焼き上げたり。卵以外には子羊も有名です。更には春の象徴として、この時期に旬を迎えるアスパラガスを使った料理も多いです。
森のような大きな敷地内に一軒家を構えるチンツィアさんのお宅では、敷地内を歩き回ると野生のアスパラガスがたくさん育っているとのこと。とはいえ、野生のアスパラガスは普通のアスパラガスとは色も形状も違うため、なかなか探しにくいのだとか。草に混じって生えてくる野生のアスパラガスを探すのには、ちょっとしたコツがいるようです。私も一緒に探しに行ったのですが、これよ! と教えてもらわないとわからないほどで、探し出すのにかなり苦戦をしてしまいました。
今日ご紹介するアスパラガスとベーコンのカップケーキ風は、日本でも気軽に作ってもらえるようにと普通のアスパラガスを使っています。アスパラガスの緑とベーコンの赤がとても映えますね。まるでアスパラガスが森から顔を出しているかのようなイメージもあり、本当にパスクアにぴったりの一皿です。
パスクアの翌日はパスクエッタという休日で、イタリアではピクニックに行くことが多いのですが、この日にも大活躍してくれるレシピ。今年もピクニックはおあずけのイタリアですが、室内でピクニック気分を楽しめる、そんな可愛らしい前菜です。
日系航空会社にて国際線CAを12年、その間2年程フィレンツェに料理留学したのを機に料理の世界に目覚める。イタリア料理以外にも懐石料理、ヴェトナム料理を学ぶ。2008年に渡伊。コルドンブ ルーでの非常勤講師を経て、自宅でイタリア家庭料理教室を主宰中。 野菜ソムリエ、現在はイタリアワインソムリエ取得中。 Instagram(@roma_italy_tsugumi)
作り方
下ごしらえ
- アスパラガスは根元の硬い部分を切り落とす。
- チーズと細長いベーコンは、1cm幅に切る。
作り方
- アスパラガスを3~4cm幅に切る。(写真a 参照)
- フライパンにオイルとニンニク、ペペロンチーノを入れ弱火にかける。(写真b 参照)
- ニンニクの香りがしてきたら、アスパラガスを加え、時々フライパンを揺らしながら中火で5分ほどいためる。(写真c 参照)
- アスパラガスに8割ほど火が通ったら、塩・コショウをして火を止める。(写真d 参照)
- マフィン型に刷毛でオリーヴオイル(分量外)を塗る。(写真e 参照)
- パイ生地を12等分に切り、型に生地を一枚ずつ入れる。(写真f,g 参照)
- ベーコン、アスパラガス、チーズの順にトッピングを入れる。(写真h 参照)
- コショウとオリーヴオイルをまわしかけ、200度のオーブンで18分~20分、きれいな焼き色がつくまで焼く。(写真i 参照)