お料理説明・背景
シチリアの冬野菜の代表選手、ブロッコロ。市場にも、八百屋にもドーンと山積みになっています。大きなものでは顔と同じくらいの大きさのものもあり、冬の市場にかなりのインパクトを与えています。シチリアでは「ブロッコロ」と呼ばれていますが、実はそれは方言で、実際はカリフラワー。トラーパニでは黄緑色がメインですが、シチリアを周ると紫色のものもよく見かけます。先日、トラーパニの農民市場に買い物に行ったら、
「どうだ、きれいだろ、ボクのブロッコロ!」
と、ブロッコロを手に農家さんがポーズ。(顔が見えないので一瞬だけマスクを外してもらいました)いやはや、ご立派です。
このブロッコロという名のカリフラワー、ゆでてみるとホクホクッ! 日本のカリフラワーのような粒粒感は全くなく、しっかりとゆでればフォークだけで簡単にクリーミーなペースト状になるほどのなめらかさ。ゆでたてを頬張ると、ほろっと口の中で崩れます。日本で「ロマネスコ」と呼ばれる、トゲトゲのカリフラワーが食感としては近い感じです。
最近は9月下旬ごろから市場に並び始めるブロッコロですが、本当の旬は12月ごろから。トラーパニの人達はブロッコロが大好き! 冬に友人に夕食に招かれるとブロッコロが登場する確率が高く。前菜に、パスタに、付け合わせに……何にでも使える便利な食材なので、冷蔵庫にひとつあるとメニューに困ったときにも安心らしいです。
さて、イタリア人というと、毎食パスタを食べているイメージはありませんか? ところが私の身の回りでは、「パスタは1日、1回だけよ」と言っている人が大勢です。トラーパニは小さな街で職場と自宅が近いため、お昼ごはんを自宅で食べる人も多く。その場合はお昼にパスタを食べるので、夜ごはんは野菜、肉、魚を中心としたメニューとなります。そこで登場するのが今回ご紹介する「ブロッコロのフリッテッレ」。これ、実はトラーパニ人の夜ごはんの定番。たくさん作ってドーン! と山積みにして食卓に並ぶのです。ほかにも、前菜として、付け合わせとして、おやつとして……色々なシーンで登場します。
「揚げたてが一番おいしいのよ!」
と言うのは、今回料理を教えていただいたカロリーナさん。卵が入っているので揚げると軽く膨らむフリッテッレ。揚げている隣でハフハフ言いながら食べるのが一番おいしい食べ方だと。ただし、本人は揚げていることが多くて、なかなか一番おいしい時に食べられないそうですが。 見た目は本当に地味なこの料理ですが、食べてみるとそのおいしさにびっくり。ちょっとフワフワで、コクがあって……「The 家庭料理のおいしさ」なのです。おばあちゃんからこのレシピを習ったというカロリーナさん。おいしいから伝えられてきたのが伝統家庭料理。やっぱり長い間、伝えられてきた家庭料理は間違いなくおいしいのですね。
2005年よりイタリアの南の島、シチリア島在住。力強い大地の恵みと美しい大自 然にすっかり魅せられ、シチリアに残ることを心に決める。現在、シチリア食文化を研究しつつ、トラーパニでシチリア料理教室を開催。また、シチリア美食の旅をコーディネートする「ラ ターボラ シチリアーナ」の代表&コーディネーターとしてトラーパニで活動中。 シチリア美食の旅をコーディネート「ラ ターボラ シチリアーナ」
作り方
下ごしらえ
- イタリアンパセリをみじん切りにする。
- カリフラワーは房に分け、大きければ火が通りやすいように更に一口大に切る。(写真a 参照)
作り方
- カリフラワーが全て浸るくらいのたっぷりの湯を沸かし、パスタ湯と同じくらいの量の塩を入れ、カリフラワーに竹串がすっと入るくらいまでゆでる。(写真b 参照)
- ざるにあけて湯を切り、そのまま放置して冷ます。(写真c 参照)
- 包丁で細かく切りボウルに入れ、卵、ペコリーノチーズ、イタリアンパセリ、塩、砂糖を入れる。(写真d,e 参照)
- 全体がなめらかになるまで、カリフラワーを手でつぶしながらよく混ぜる。(写真f 参照)
- 6cmくらいのオーバル形に成型する。(写真g 参照)
- 皿に薄力粉を入れて5の両面に軽くまぶす。(写真h 参照)
- オリーヴオイルをフライパンに1cmくらいの高さに注ぎ、約180℃に温め、両面こんがりと揚げる。(写真i 参照)