イタリア最高級のワインの産地をイタリア人に尋ねると、名前が挙がるのはなんといってもまずバローロだろうか。続いてトスカーナのブルネッロ・ディ・モンタルチーノやボルゲリ、ヴェネトのアマローネなど、品質で有名な生産エリアは沢山あるが、南イタリアの最高級の生産エリアとして名前が出てくる場所というと、おそらくタウラージがあるカンパーニア州イルピニア地方くらいだろう。意外と南には誰もが知る生産地というものは少なく、ワインを愛してやまないイタリア人達も、南イタリアはどちらかというと「デイリーな」ワイン造りが一般的、と認識しているのだと思う。
そんな南イタリアにおいて長期熟成するワインが造れることを証明し、南イタリアワインの近代史を作った一本がある。プーリア州にあるリヴェラ社のフラッグシップワイン「イル・ファルコーネ」だ。
リヴェラ社はカステル・デル・モンテと呼ばれるエリアにある。プーリアの中でも北側の少し内陸にあたるエリアだ。プーリアというと、平均気温が高く凝縮感のあるブドウが収穫されるエリアというイメージが強いが、カステル・デル・モンテは北西にそびえるアペニン山脈が吹き降ろす冷風によってプーリアの中でも特に冷涼な気候。結果、日中の豊富な日照量によってもたらされる果実味と、昼夜の大きな寒暖差がもたらすボリュームのあるアロマ、そして綺麗な酸をもったブドウが収穫できる。
そんな場所にリヴェラ社が創業したのは1950年のことだ。その当時のことを、現会長のカルロ・デ・コラートさんはこう説明してくれる。
「創業者は私の祖父だったんだけど、その当時からリヴェラ社はプーリアでも特異なワイナリーであったと思うよ。何が特異であったか、といえば創業した年から長期熟成型のワインを造り始めているからさ。」
綺麗な白髪に凛とした佇まい。とても静かな語り口で、まさに“名士”と呼ぶべき方だ。
「その当時はプーリアのワインで長期熟成を見据えた造りをしていたワイナリーはほぼ存在しなかったそうなんだ。プーリアはもともと、熟成したワインを飲むような習慣はなかったからね。」
確かに、1950年というとヴェネト州の最高級ワイン「アマローネ」が誕生するよりも前。ボルゲリエリアでテヌータ・サン・グイドがサッシカイアを商業的に販売開始するのは1968年のことだから、その20年近く前と考えると、まだまだイタリアでは長期熟成型のワインへの関心が薄かった時代であることがわかる。
カルロさんはゆったりとした口調で説明を続けてくれる。
「そんな時代だったけど、私の祖父はこのカステル・デル・モンテのエリアと、土着品種ネーロ・ディ・トロイアのポテンシャルをただ一人信じ、ネーロ・ディ・トロイアとモンテプルチアーノを使った長期熟成型ワインを造り始めたんだ。当時のワインの名前はシンプルに“ストラヴェッキオ”と呼ばれていたよ。」
ストラヴェッキオ、とはイタリア語でまさに「長期熟成」という意味だ。リヴェラ社にはまだ、ファーストヴィンテージのボトルが大切に保管されている。
「ネーロ・ディ・トロイアはプーリア州の中北部では最もよく栽培される黒ブドウ品種の一つ。ブドウの成熟が遅いため自然と遅摘みとなり、また果皮が厚いのが特徴だよ。香りはエレガントですみれの花のニュアンスを感じデリケートなんだけど、厚い果皮からもたらされる豊富なタンニンがあり、骨格の非常にしっかりとした味わいになるんだよ。」
「しかしネーロ・ディ・トロイアだけではタンニンが強すぎるため、昔からこのカステル・デル・モンテエリアでは、畑にネーロ・ディ・トロイアを2列植え、次の1列はモンテプルチアーノを植える、といった畑づくりが行われてきたんだ。モンテプルチアーノでワインに柔らかさを与えるわけさ。私の祖父はこれを大樽と瓶内で2年以上と、しっかり熟成させてリリースするということを考えたんだよ。」
こうして生まれたリヴェラ社の長期熟成型ワイン“ストラヴェッキオ”は、その後、その高い品質でカステル・デル・モンテエリアを牽引し、1971年にはDOC(統制原産地呼称)に認められる。
「私たちは、カステル・デル・モンテがDOCとなることを知って、ワインをリニューアルしたんだ。カステル・デル・モンテはもともとフリードリヒ2世によって造られた、このエリアを代表する八角形のお城の名前。このフリードリヒ2世に敬意を表し、彼が鷹狩りを愛したという故事にあやかって“イル・ファルコーネ”(イタリア語で“鷹”)という名前を付けたんだよ。1971年当時でさえ、カステル・デル・モンテエリアではリゼルヴァタイプのワインを造る生産者はほぼいなかった。だからイル・ファルコーネが、 “カステル・デル・モンテ・リゼルヴァDOC”の格付けがついてリリースされたイタリアの歴史上最初のワインなのさ!」
実はタウラージがDOCに登録されたのは1970年。カステル・デル・モンテはその翌年にDOCに登録された歴史のある格付けだ。このリゼルヴァタイプとして一番に造られたイル・ファルコーネは、まさしく南イタリアを代表する“長期熟成型ワイン”として、今日までイタリアのワインシーンの中で知る人ぞ知る存在感を放っている。確かに飲んでみると、熟した果実と粗さの取れた滑らかなタンニンが感じられ、複雑なスパイスや土の香りとともに長い余韻がある。アフターに残る綺麗な酸は、滑らかながらも豊富なタンニンと相まって、このワインの高い熟成能力を雄弁にアピールしてくるかのようだ。
そんな味わいの感想を伝えると、カルロさんは嬉しそうに目を細めてこう教えてくれた。
「実は昨年、1950年のファーストヴィンテージをイベントで開けたよ。収穫から70年近く経つわけだけど、まだ果実味が感じられる味わいに、自分達のワイン造りへの自信が深まったね。」
「私たちリヴェラ社は、イタリアのトップワイナリーが原則1州1ワイナリーのみ参加できる組合“グランディ・マルキ”にも、プーリアを代表して参加しているんだ。ピエモンテのガヤやトスカーナのアンティノリ、マルケのウマニ・ロンキなどイタリアを代表するワイナリー達とともに私たちが加わっているのは、イル・ファルコーネがプーリアワインの価値を高め、イタリアワインの歴史を造り上げた一本だからだと本当に誇りに思っているよ。」
南イタリアのワインの近代史を代表するワイン、イル・ファルコーネは2021年で1950年の誕生からは71年、イル・ファルコーネの名がついてから丁度50周年を迎える。これを機に、是非、ワインラヴァ―の皆様にも改めてイル・ファルコーネを試してみて頂きたい。きっとプーリアワインのイメージを覆す味わいとその長期熟成能力に驚かれることだろう。
*現在ではタウラージも、カステル・デル・モンテもDOCG。
モンテ物産
http://www.montebussan.co.jp/
★リヴェラ社についてはこちらから↓↓▼
https://www.montebussan.co.jp/wine/rivera.html
そんな南イタリアにおいて長期熟成するワインが造れることを証明し、南イタリアワインの近代史を作った一本がある。プーリア州にあるリヴェラ社のフラッグシップワイン「イル・ファルコーネ」だ。
リヴェラ社はカステル・デル・モンテと呼ばれるエリアにある。プーリアの中でも北側の少し内陸にあたるエリアだ。プーリアというと、平均気温が高く凝縮感のあるブドウが収穫されるエリアというイメージが強いが、カステル・デル・モンテは北西にそびえるアペニン山脈が吹き降ろす冷風によってプーリアの中でも特に冷涼な気候。結果、日中の豊富な日照量によってもたらされる果実味と、昼夜の大きな寒暖差がもたらすボリュームのあるアロマ、そして綺麗な酸をもったブドウが収穫できる。
そんな場所にリヴェラ社が創業したのは1950年のことだ。その当時のことを、現会長のカルロ・デ・コラートさんはこう説明してくれる。
「創業者は私の祖父だったんだけど、その当時からリヴェラ社はプーリアでも特異なワイナリーであったと思うよ。何が特異であったか、といえば創業した年から長期熟成型のワインを造り始めているからさ。」
綺麗な白髪に凛とした佇まい。とても静かな語り口で、まさに“名士”と呼ぶべき方だ。
「その当時はプーリアのワインで長期熟成を見据えた造りをしていたワイナリーはほぼ存在しなかったそうなんだ。プーリアはもともと、熟成したワインを飲むような習慣はなかったからね。」
確かに、1950年というとヴェネト州の最高級ワイン「アマローネ」が誕生するよりも前。ボルゲリエリアでテヌータ・サン・グイドがサッシカイアを商業的に販売開始するのは1968年のことだから、その20年近く前と考えると、まだまだイタリアでは長期熟成型のワインへの関心が薄かった時代であることがわかる。
カルロさんはゆったりとした口調で説明を続けてくれる。
「そんな時代だったけど、私の祖父はこのカステル・デル・モンテのエリアと、土着品種ネーロ・ディ・トロイアのポテンシャルをただ一人信じ、ネーロ・ディ・トロイアとモンテプルチアーノを使った長期熟成型ワインを造り始めたんだ。当時のワインの名前はシンプルに“ストラヴェッキオ”と呼ばれていたよ。」
ストラヴェッキオ、とはイタリア語でまさに「長期熟成」という意味だ。リヴェラ社にはまだ、ファーストヴィンテージのボトルが大切に保管されている。
「ネーロ・ディ・トロイアはプーリア州の中北部では最もよく栽培される黒ブドウ品種の一つ。ブドウの成熟が遅いため自然と遅摘みとなり、また果皮が厚いのが特徴だよ。香りはエレガントですみれの花のニュアンスを感じデリケートなんだけど、厚い果皮からもたらされる豊富なタンニンがあり、骨格の非常にしっかりとした味わいになるんだよ。」
「しかしネーロ・ディ・トロイアだけではタンニンが強すぎるため、昔からこのカステル・デル・モンテエリアでは、畑にネーロ・ディ・トロイアを2列植え、次の1列はモンテプルチアーノを植える、といった畑づくりが行われてきたんだ。モンテプルチアーノでワインに柔らかさを与えるわけさ。私の祖父はこれを大樽と瓶内で2年以上と、しっかり熟成させてリリースするということを考えたんだよ。」
こうして生まれたリヴェラ社の長期熟成型ワイン“ストラヴェッキオ”は、その後、その高い品質でカステル・デル・モンテエリアを牽引し、1971年にはDOC(統制原産地呼称)に認められる。
「私たちは、カステル・デル・モンテがDOCとなることを知って、ワインをリニューアルしたんだ。カステル・デル・モンテはもともとフリードリヒ2世によって造られた、このエリアを代表する八角形のお城の名前。このフリードリヒ2世に敬意を表し、彼が鷹狩りを愛したという故事にあやかって“イル・ファルコーネ”(イタリア語で“鷹”)という名前を付けたんだよ。1971年当時でさえ、カステル・デル・モンテエリアではリゼルヴァタイプのワインを造る生産者はほぼいなかった。だからイル・ファルコーネが、 “カステル・デル・モンテ・リゼルヴァDOC”の格付けがついてリリースされたイタリアの歴史上最初のワインなのさ!」
実はタウラージがDOCに登録されたのは1970年。カステル・デル・モンテはその翌年にDOCに登録された歴史のある格付けだ。このリゼルヴァタイプとして一番に造られたイル・ファルコーネは、まさしく南イタリアを代表する“長期熟成型ワイン”として、今日までイタリアのワインシーンの中で知る人ぞ知る存在感を放っている。確かに飲んでみると、熟した果実と粗さの取れた滑らかなタンニンが感じられ、複雑なスパイスや土の香りとともに長い余韻がある。アフターに残る綺麗な酸は、滑らかながらも豊富なタンニンと相まって、このワインの高い熟成能力を雄弁にアピールしてくるかのようだ。
そんな味わいの感想を伝えると、カルロさんは嬉しそうに目を細めてこう教えてくれた。
「実は昨年、1950年のファーストヴィンテージをイベントで開けたよ。収穫から70年近く経つわけだけど、まだ果実味が感じられる味わいに、自分達のワイン造りへの自信が深まったね。」
「私たちリヴェラ社は、イタリアのトップワイナリーが原則1州1ワイナリーのみ参加できる組合“グランディ・マルキ”にも、プーリアを代表して参加しているんだ。ピエモンテのガヤやトスカーナのアンティノリ、マルケのウマニ・ロンキなどイタリアを代表するワイナリー達とともに私たちが加わっているのは、イル・ファルコーネがプーリアワインの価値を高め、イタリアワインの歴史を造り上げた一本だからだと本当に誇りに思っているよ。」
南イタリアのワインの近代史を代表するワイン、イル・ファルコーネは2021年で1950年の誕生からは71年、イル・ファルコーネの名がついてから丁度50周年を迎える。これを機に、是非、ワインラヴァ―の皆様にも改めてイル・ファルコーネを試してみて頂きたい。きっとプーリアワインのイメージを覆す味わいとその長期熟成能力に驚かれることだろう。
*現在ではタウラージも、カステル・デル・モンテもDOCG。
http://www.montebussan.co.jp/
★リヴェラ社についてはこちらから↓↓▼
https://www.montebussan.co.jp/wine/rivera.html