マンマのレシピ

マンマの紹介

  • アンナリータ・デパウリス(Anna Rita DePaulis)さん
  • ラツィオ州ポメツィア市在住
  • 【得意料理】自家製ジャムを使ったクロスタータ

お料理説明・背景

イタリアの野菜は味が濃厚である。初めてホウレンソウをゆでた時、そのゆで汁がすぐに黄緑色に変化した時には本当に驚いたものだ。イタリア野菜は味も濃厚なら、色素も濃い。ニンジンがこんなに甘いものだったのだと気が付いたのはイタリアに来てからであり、ニンジンがこんなに果汁を含む野菜だとはとさらに驚いた。イタリアでニンジンを切っていると、オレンジ色の果汁により、白いまな板の場合はすぐに色素沈着し、オレンジ色のまな板になってしまうのである。

イタリア野菜の中でも味の濃厚さに最も驚いたのは、グリーンピースである。グリーンピースの概念を覆すほどの甘さと柔らかさに驚き、一時は日本に瓶詰めのグリーンピースを持参し、日本での料理教室の際に生徒さんたちにテイスティングをしてもらったことすらある。皮が薄く、あふれんばかりの身がぎっしりと詰まっている、そんなイタリアングリーンピース。豆がこんなに甘さを含むものだったなんて! 豆嫌いの子供たちが食べたら、豆嫌いだったという事実はすぐに過去のものになってしまうだろう。それほどまでにおいしいのである。

イタリアのグリーンピースは日本と同様春先から初夏の頃までが旬となる。鞘付きのままツルまでついた状態で山のようにして売られている。こちらの野菜はキロ単位で売られ、実際にイタリア人はキロ単位で購入していく。そんなに買うの? と驚いていた私も、今やグリーンピースは1キロで買う。鞘をとったらそんなに大した量にはならないからである。

5月を過ぎると鞘付きのグリーンピースは市場から姿を消してしまうのだが、それでもイタリアの家庭では年中グリーンピースを使ったレシピが出てくる。それは、冷凍のグリーンピースが普及しているためであるが、この冷凍のグリーンピースがばかにならないおいしさなのである。冷凍食品を一切口にしない我がイタリア夫だが、唯一の例外がこちらのグリーンピース。煮込んでしまえば、新鮮なものと味は変わらない。

さて、今日はこのグリーンピースをソースのように仕上げ、ヤリイカの詰め物と一緒にいただくアンナリータの家族に代々伝わる料理をご紹介。グリーンピースとイカはイタリアではお墨付きの組み合わせである。実際にイカを輪切りにし、グリンピースと一緒に煮込む料理もとても有名である。 今日ご紹介するヤリイカの詰め物とグリーンピースソースは簡単なのに見た目も美しく、レストランのお皿のような仕上がりとなる。アンナリータの自慢の一皿でもある。

レポート:平賀 つぐみ(Tsugumi Hiraga)
日系航空会社にて国際線CAを12年、その間2年程フィレンツェに料理留学したのを機 に料理の世界に目覚める。イタリア料理以外にも懐石料理、ヴェトナム料理を学ぶ。2008年に渡伊。コルドンブ ルーでの非常勤講師を経て、自宅でイタリア家庭料理教室を主宰中。 野菜ソムリエ、現在はイタリアワインソムリエ取得中。https://ameblo.jp/tsugumi-hiraga, Instagram

材料

ヤリイカの詰め物 グリーンピースのクリームソース添え(3~4人分)

グリーンピースのクリーム

・グリーンピース(冷凍)300g
・タマネギ1/4個
・ニンジン1/3本
・野菜のブロード150ml

ヤリイカの詰め物

・ヤリイカ2杯
・白ワイン50ml
・野菜のブロードもしくは水100ml~150ml 半量はリピエーノ用、もう半量はイカの胴体を煮込む時用
・タマネギ1/4個
・カッペリ大さじ1
・オリーヴ大さじ2
・パンの白い部分50g硬いパンは10分程度水につけておく
・パン粉大さじ2
・イタリアンパセリ適量
・オリーヴオイル適量
・塩、コショウ適量

作り方

下ごしらえ

  1. ヤリイカは皮をむいて下処理をした後、エンペラ、下足、本体にわける。

作り方

  1. グリーンピースクリームを作る。鍋にオリーヴオイルを入れ、粗みじん切りにしたニンジンとタマネギをいためる。(写真a 参照)
  2. タマネギがしんなりしてきたら、冷凍のままのグリーンピースを入れ、さらに野菜だし150mlも加え、蓋をしてグリーンピースが柔らかくなるまで10分弱、弱火で加熱する。グリーンピースに火が通ったら、火を消しそのまま放置しておく。(写真b 参照)
  3. リピエーノを作る。ヤリイカのエンペラとゲソを細かく切り、イタリアンパセリのみじん切り、タマネギ、ケッパー、オリーヴの粗みじん切りも用意する。パンは1cm角に切っておく(写真c,d 参照)
  4. フライパンにオリーヴオイルを入れ、3のタマネギをいためたら、その他の具材も加える。(写真e 参照)
  5. オリーヴオイルが具材に馴染んだら、白ワインを加え強火にする。(写真f 参照)
  6. アルコールが飛んだら野菜ブロードを加え、水分が飛び、具材に火が通った時点で火を止める。最後にパン粉をふりかけ混ぜ合わせたらリピエーノの完成。(写真g 参照)
  7. リピエーノの粗熱がとれたら、ヤリイカ本体の中に詰めていく。スプーンで押したり、途中で上下に振るようにしながらしっかりと中の空気を抜き、パンパンに詰めていく。最後に端を楊枝でとめる。(写真h,i 参照)
  8. フライパンにオリーヴオイルを入れ、詰め物をしたヤリイカの胴体を入れ、蓋をし、途中で野菜ブロードを脇から入れながら約10分ほど加熱する。(写真j 参照)
  9. ヤリイカを加熱中に、2のグリーンピースをハンドミキサーで撹拌しクリーム状に仕上げる。水分が足りない場合には、水を少し追加しながら撹拌する。(写真k 参照)
  10. 器の底にグリーンピースクリームをしき、その上に輪切りにしたヤリイカをのせる。(写真l 参照)
  • a. ニンジンとタマネギをいためる
  • b. グリーンピースを加えて火を通す
  • c. 詰め物の材料をそれぞれ切る
  • d. パンを1cm角に切る
  • e. タマネギをいため、他の詰め物の具を加える
  • f. 白ワインを加えアルコールを飛ばす
  • g. ブロードを入れ火がとおったら最後にパン粉を加える
  • h. ヤリイカ本体にリピエーノを詰める
  • i. パンパンに詰めたら楊枝でとめる
  • j. 蓋をして10分程加熱する
  • k. グリーンピースをクリーム状にする
  • l. グリーンピースクリームの上に輪切りにしたヤリイカをのせる

お料理ポイント

イカはイタリアではヤリイカや甲イカが主流ですが、日本ではきっとスルメイカだと思います。イカの種類や大きさにより調理時間が変わってきますが、リピエーノには既に火が通っているので、イカの状態を見ながら仕上げてください。ちなみにオーブンでも仕上げが可能です。その場合には200度で18分から20分を目安に仕上げてください。また、リピエーノにはいろいろなヴァリエーションがあります。カッペリの代わりにアンチョビでもおいしく仕上がります。松の実を入れてもおいしいですよ。