“ヴィヴェラ社” シチリア・エトナ山の家庭的ワイナリー Presented by モンテ物産

コロナウイルスによるイタリア・ロックダウン後、久しぶりにシチリアを訪問した。ヨーロッパ最大の活火山、エトナ山の麓にあるワイナリー、ヴィヴェラ社を訪問するためだ。
家族経営のヴィヴェラ社は、2002年創業とまだ歴史は浅いものの、エトナ山の畑の特徴を活かしたその土地独自のワイン造りを行い、国内のみならず世界各国で高い評価を受けているワイナリーである。


8月末、朝のミラノの気温は20℃以下と半袖では肌寒い気候。しかしカターニアの空港に降り立つと、力強い夏の日差し。カターニアのこの日の最高気温は37℃と猛暑であった。 
標高3,326mのエトナ山の北東に位置するリングアグロッサの町のはずれにヴィヴェラ社のワイナリーは位置する。ワイナリーの周りには14haのブドウ畑が広がる。出迎えてくれたのは責任者のロレダーナさん。
「久しぶり!本当に遠いところからよく来てくれたね。とっても嬉しいわ!」
コロナの影響でお互いマスクをはめて握手もできない状況だったが、彼女が心の底からこちらの訪問を喜んでくれているのが伝わった。
まずはお互い日本、イタリアのコロナ感染状況やロックダウン中の苦労話、営業活動への影響などを情報交換。その後すぐに、「早速私たちが造るエトナワインの主要品種、3種類のブドウの畑を見にいきましょう!」と誘われた。

▲ロレダーナさん
ヴィヴェラ社のブドウ畑は標高550m~600mに位置する。涼しいかと思えば実際はここも日中は日差しがきつく、とても暑い。しかし朝・晩は山の気候で冷え込むため、この昼夜の寒暖差がワインに複雑さをもたらしているのだという。

最初に連れていかれたのは、地場品種ネレッロ・カップッチョの段々畑。ブドウ木の列の間隔が1.2mと狭いのは、段々畑の土地を活用するためだ。
「ちょうど今、“インヴァイアトゥーラ”と呼ばれるブドウの実の色づきの段階よ。」
グリーンから青紫に変わっていくきれいなグラデーションのブドウがあちこちに見えた。

「ネレッロ・カップッチョは元々補助品種として昔から重宝されてきたの。ワインに色味を与える役割をもっていて、伝統的にエトナのブドウ畑では、主要品種のネレッロ・マスカレーゼを4列、ネレッロ・カップッチョを1列交互に配置して、ネレッロ・マスカレーゼ80%+ネレッロ・カップッチョ20%のエトナロッソを造ってきたわ。」
ネレッロ・カップッチョの果実は大きく、またそのブドウの葉も他の品種では見ないほどの大きさであった。「ネレッロ・カップッチョの“カップッチョ”は頭巾、フードのこと。“ネレッロ・マンテッラート(マントを羽織った)”という呼び名もあるわ。ブドウの房に覆いかぶさるような大きな葉の特徴から来ているのよ。」
▲グラデーションが美しいブドウ 
▲手と比べると、ネレッロ・カップッチョの葉の大きさが良くわかる
次にワイナリーを挟んで反対側のネレッロ・マスカレーゼのブドウ畑に。
ネレッロ・マスカレーゼは2000年台前半から起こったエトナ・ワインブームの主役ともいえる黒ブドウの品種。果実の力強さと繊細さに火山土壌のミネラルが加わる素晴らしい品種だ。
「見てよこの土壌を。火山の石がごろごろ転がっているでしょ。畑を耕すのも大変なのよ。靴とズボンが汚れて申し訳ないわね。」
実際に、黒ずんだ石と砂ぼこりでスニーカーが真っ黒になった。エトナの土壌は砂質と、この石の黒ずみにも現れているように、黒みがかったケイ土を含む粘土質の土壌。カリウム、石灰、リン、鉄分、マンガンなどを豊富に含むため、この土壌で造られるワインにも、鉄分と亜リン酸が豊富に含まれるのだという。
畑ではちょうど作業員が余分な葉と不良果実を取っているところだった。
「余分な葉を取ることで、風通しを良くして収穫前の雨でカビが生えるのを防ぐの。また葉全体への日当たりが良くなって光合成が促され、糖の生成がより多くなる効果もあるのよ。」

「ネレッロ・マスカレーゼは紀元前に古代ギリシアからもたらされた品種で、海側のマスカリという町の名前から来ている。うちの赤の看板ワイン“マルティネッラ”に欠かせないブドウだわ。」
▲畑作業の様子
▲ネレッロ・マスカレーゼ
最後に白ブドウ品種カリカンテの畑へ。
「ワイナリー創業当時、苗木業者にはカリカンテの苗木の取り扱いがなく、自分たちで農家からブドウ木を分けてもらい、継ぎ木して植えたの。今ではエトナ・ビアンコを代表するメジャーな地場品種だけど、当時は植えるのも一苦労だったのよ。」

「カリカンテの語源は“Caricare tanta uva(カリカーレ タンタ ウーヴァ)=たくさんのブドウをつける”という意味。それだけ収穫量が多くなる品種なの。私たちはカリカンテに限らず、全て収穫前のブドウの房を約半分に減らして、残った房にしっかりと養分が届くようにしているのよ。より質のよいブドウを収穫できるようにするためにね!」
▲カリカンテ
カリカンテ種を100%使用した白ワインは“サリズィーレ”。“苦難の坂を上る御主人様”という意味で、ワイナリー創設にあたり多大な貢献をしたロレダーナさんの父アントニーノさんに捧げるワインだ。
畑の見学が終わり大量の汗をかいた後に、そのアントニーノさんが作ってくれたナスを使ったカターニアの郷土料理、 “Pasta alla Norma(ノルマ風パスタ)”の素朴な味わいが、とても体に染みた。
ステンレスタンクで2年、ボトルで2年の計4年熟成させた白ワインは、しっかりとした骨格を持ちながら、驚くほどフレッシュな味わい。火打石のようなミネラル感もしっかりと感じられる。サリズィーレの特徴であるこのミネラル感が、パスタにかかったリコッタ・サラータの塩気とも相性がいい。

「ここに来るまで、何でもすべて自分でやってきた。様々な冒険やチャレンジもしたよ。」
そう言いながら穏やかにほほ笑むアントニーノさんに、このワインを重ね合わせた。

厳しいエトナの大地で暖かい家族により作られる、火山エリアならではの特徴を存分に反映させたワイン。
今後もますます成長が楽しみなワイナリーだ。

▲ノルマ風パスタ
▲右がアントニーノさん
▲左:“マルティネッラ”/右:“サリズィーレ”

モンテ物産
http://www.montebussan.co.jp/
▼ヴィヴェラ社について詳しくはこちらから↓↓▼
https://www.montebussan.co.jp/wine/vivera.html