お料理説明・背景
ローマ生まれ、ローマ育ちのアンナリータが大切にするのはローマの郷土料理である。 彼女が母から教わったものは、娘にも伝えたいという思いが強いという。 「昔とは違い、今は若い人がほとんど料理をしなくなったわ。」と嘆きながらも、不幸中の幸いにしてアンナリータの娘さんは料理好きとのこと。教えられることはすべて教えてあげたいのだとか。
そんな彼女のことだから、ローマの伝統料理を日本の方々へという話には 喜んで賛同してくれた。「私の作る料理が海を越えて他国の人たちにも喜んでもらえるなんて!」笑顔でそんなことを口にしていた彼女である。(写真は料理好きなアンナリータの自慢のキッチン)
「今日は木曜だからニョッキの日ね」と言いながらセモリナ粉を取り出していたアンナリータ。
ジャガイモと小麦粉を使ったパスタ。そう思われがちだが、実はニョッキには驚くほどの種類がある。ジャガイモのニョッキ、セモリナ粉のニョッキ、カボチャのニョッキ、パンのニョッキ。
今日アンナリータが作ってくれたのはローマ風ニョッキ。ジャガイモは使用せず、セモリナ粉とバター、牛乳、パルミジャーノ・レッジャーノを用いて仕上げるものだ。
ピエモンテ特有のバターやパルミジャーノ・レッジャーノチーズを使用する点などから、ローマ発祥ではなくピエモンテ発祥なのでは? と言われたこともあるらしいのだが、れっきとしたローマ料理である。
かつては祝いものとして、人寄せの際に供された料理でもあったそう。
「木曜にニョッキということは他の曜日にも決まりがあったの?」と尋ねてみると、面白い歴史の一部が明らかになった。 イタリアでは火曜、金曜は魚の日、と言われるが、その理由までは分からなかった。イエス・キリストが亡くなったのが金曜だったことから、金曜には肉を控え、魚、厳密にはバッカラと呼ばれる鱈を食べるそうである。 更にキリスト教では、『聖なる金曜は粗食の日』とされており、そのために前日の木曜には腹持ちをよくさせるためにニョッキをという習慣が生まれたようである。 ちなみに土曜はトリッパ、日曜はラザニアと続き、その風習は今でも受け継がれている。
実際にニョッキはとてもお腹にたまるため、ニョッキを食べる時はセコンドを食べない場合がほとんど。ハムやサラミなどの前菜から始まり、ニョッキの後にはサラダで締める人が多いようである。
「A tavola!」 ご飯よ! という彼女の掛け声と共に、家族みんなが食卓を囲み始める。 お喋りと共に、あっという間にニョッキの入っていた器が空になる。 アンナリータが喜ぶ瞬間でもある。
日系航空会社にて国際線CAを12年、その間2年程フィレンツェに料理留学したのを機 に料理の世界に目覚める。イタリア料理以外にも懐石料理、ヴェトナム料理を学ぶ。2008年に渡伊。コルドンブ ルーでの非常勤講師を経て、自宅でイタリア家庭料理教室を主宰中。 野菜ソムリエ、現在はイタリアワインソムリエ取得中。https://ameblo.jp/tsugumi-hiraga
作り方
- バター、卵は常温に戻しておく。
下ごしらえ
作り方
- 鍋に牛乳、バター30g、塩を入れて沸騰寸前まで温める。(写真a 参照)
- 1にセモリナ粉を少しずつ加える。ダマにならないように注意しながら、約10分ほどホイッパーで常にかき混ぜる。(写真b 参照)
- セモリナ粉がしっかりと生地に馴染み、木べらで線がかけるようになったら火からおろし、卵黄を加えて数秒ほどさらに混ぜる。(写真c 参照)
- パルミジャーノ・レッジャーノ50gも加えてしっかりと混ぜる。(写真d 参照)
- まな板の上にオーブンシートを用意し、その上に4の生地をのせる。(写真e 参照)
- 直径5cmの円柱もしくは楕円の棒状になるように、手で形を整える。(熱いので時々手を冷水で冷やしながら!)。(写真f 参照)
- 棒状になった生地にオーブンシートをくるくると巻き、冷蔵庫で20~30分ほど休ませる。(写真g 参照)
- 生地が冷めて形ができあがったら冷蔵庫から出し、包丁を水で濡らしながら1.5cm幅の輪切りにする。(写真h 参照)
- 耐熱皿にオーブンシートを敷き(またはバターを塗る)8を円を描くように並べる。(写真i 参照)
- 上から残りのバター20gを細かくちぎって散らし、残りのパルミジャーノ・レッジャーノ10gもふりかける。(写真j 参照)
- 200度のオーブンで20~25分、ほんのりときれいな焼き色になるまで焼きあげる。(写真k 参照)