城壁跡の養蜂場
ジェノヴァは前面に海、背後に山岳地帯という特殊な場所に位置しています。
そのため、前後の敵を見張れるように、街を見下ろす丘の上には城壁が聳えています。Forte Tenaglia (テナリア城壁)もその一つです。
17世紀に建てられたこの城壁は時の流れの中でその壮大さを増していきました。
しかし、19世紀の末に「昔ながらの戦い」が終焉を迎えると、必要価値の亡くなった城壁たちは放置、朽ちていきます。
近年、ジェノヴァ市はこれらの城壁跡を民間の団体に管理を委ね、元来の目的とは全く違った憩いの場として復活させるプロジェクトを行っています。
テナリア城壁の管理を任されたのはLa Piuma (ラ・ピューマ)。
助け合いの精神に則り、恵まれない子供達の世話をしたり、城壁内のスペースを解放して、動物たちとの触れ合いの場にする、ヨガやバレエの発表会を行うなど様々な活動をしています。
このテナリア城壁では、蜂も飼育していると聞いたので、訪ねてみることにしました。パオラさんがラ・ピューマの中心人物であるEmilio(エミーリオ)から仕入れた野菜で作ったお惣菜を車に積んで、細い道を登って行きます。
街から車で15分ほどの距離なのに全く景色が変わってしまってビックリです。
歩くたびにルッコラの香りがする細道を行った先に蜂の世話をしているAlessandro(アレッサンドロ)がいました。
養蜂は今、秘かなブームなんだそうです。
まず、林檎の木の下のテーブルに持ってきた食べ物や飲み物を広げて、蜂の愛好家達と即席のパーティ。街のレストランやバールでは味わえない解放感があります。
お腹が一杯になって、ゆったりした気分になったところで蜂を見に行くことになりました。
蜂はおとなしい生き物なんだそうですが、念のため完全防備で見に行きます。
防護服を着ていても、ハチの羽音がすぐそばで聞こえて、少し緊張。
女王蜂は多数の雄バチと交尾をした後、一生卵を産み続けていくんだそうです。
こんなに働いている蜂から蜜をもらってしまって良いのだろうか、となんだか蜂に申し訳ないような気になりました。
ここは蜂蜜を販売するための場所ではないので、購入することは出来ませんでしたが、次回蜂蜜を食べる時はもっと味わって食べることにしようと思います。
「以前は戦いを目的に造られたこの場所を憩いの場にすること」をLa Piumaの人々は、モットーとしています。その目的通り、心地良く平和に満ち足りた気分になれました。
ロバと遊びながらジェノヴァを見晴らす景色を堪能してから家路につきました。