お料理説明・背景
とかくイタリアでは、親戚や友達を家に招いて食事をすることが多いのですが、気張ってホームパーティというよりは、本当に「家でご飯を一緒に食べようよ」という感じの、気取らないアットホームな印象を受けます。気取らないと言っても、そこはおいしいもの大好きなイタリア人のこと、ちゃんと、食事前のおつまみアペリテーボか前菜、そしてパスタやメイン料理が用意されます。その上絶対に欠かさないのがデザート! 子供や女性だけでなく、おじいちゃんおばあちゃん、そしてだいの大人の男性も、いえむしろ大人の男性こそ甘いものが大好き。大きな男性がデザートの皿の上に背中を丸めて、嬉々として夢中に食べている姿はかわいらしいものがあります。みんなお腹いっぱいご飯を食べたのに、別腹よろしくデザートにこぞって手を伸ばす様子は、楽しい食卓のまさにクライマックス、盛り上がるひとときであります。
しかし、食事にデザートまで用意するのはきっと大変なはず。みんなどうやっているのでしょう? そこは、毎日毎日、家族の胃袋を支え続けているマンマからそのコツを学ぶことができます。それは無理をしないこと、自分が楽しんでできる範囲でやることです。もしお肉屋さんで、下準備済みのものがあればそれを買います。(イタリアのお肉屋さんでは、例えば既に形成してあるハンバーグや、串に刺してある串焼きセットなど下準備済みのものが色々と売っています。)デザートも作るのが大変なら、参加者の誰かに買ってきてもらうよう頼んだっていいのです。とにかく、食事を用意する人が楽しむこと、それが楽しい食卓を用意する秘訣なのだと思います。
さてさて、家族・親戚が集まって食事をする機会が多かったアンナ・マリアさんの家でも、デザートは必ず用意されていたそうです。その中でもアンナ・マリアさんのお母さんが、週末など皆が集まる時によく作ってくれていたというデザート「ズッパ・イングレーゼ」を教わりました。本来ならカスタードクリームを作る大変な手間がかかるデザートですが、料理上手で、もてなし上手だったアンナ・マリアさんのお母さんはこんな風にしていたそうです。それは市販のプリンの素を使うこと。そうすることで他の料理を煮ている間に、さっと作れてしまい、後は冷蔵庫に入れておくだけでいいので本当に簡単です。失敗もしない、デザートを用意するプレッシャーから解放されるナイスアイディアです。デザートを用意して、おいしい食卓のクライマックスを飾りましょう。
最後に1つ、今回デザートに使用するイタリアの真っ赤なリキュール「アルケルミス」について少しご紹介しましょう。起源はヨーロッパ最古の薬局サンタ・マリア・ノヴェッラといわれ、当時はシナモンやチョウジ(クローブ)、カルダモンなどのスパイスを使った薬用酒として用いられていました。特に中世、フィレンツェを支配したメディチ家がこのリキュールを重用したことから「メディチのリキュール」と呼ばれたそうです。今ではデザートによく使われ、イタリアにはこのリキュールを使ったお菓子がたくさんあります。さて、このリキュールの特徴ともいえる目の覚めるような鮮やかな赤色ですが、合成着色料ではなく実は自然の色。コチニーリアという虫からとられる天然の色なのです。虫?! と驚いてしまいますが、とりあえず虫は忘れて、中世からずっと私たちの食生活を彩ってきた真紅を楽しんでみてくださいね。
イタリア・フィレンツェ在住フォトグラファー&ライター。東京でカメラマンとして活動後、'09年、イタリアの明るい太陽(と、おいしい食べ物)に魅せられて渡伊。現在、取材・撮影・執筆活動をしつつ、イタリアの伸びやかな景色をテーマに写真作品も制作中。
作り方
- プリンの素の作り方にしたがって、ココア味とカスタード味を2種類作る。(写真a 参照)
- 少しとろみが出てきたら火から下ろす。(写真b 参照)
- 適度な大きさの容器に、まずはココア味のクリームを入れ、まんべんなく広げる。(写真c 参照)
- その上にビスケットを敷き詰める。(写真d 参照)
- ビスケットの上にアルケルミスを適量ふりかける。(写真e 参照)
- その上に今度はカスタード味のクリームをまんべんなく広げる。(写真f 参照)
- またビスケットを敷き詰め、アルケルミスを振り掛ける。(写真g 参照)
- 次にココア味のクリーム、ビスケット、アルケルミス、そしてまたカスタード味のクリーム、ビスケット、アルケルミスと同じように重ねていく。(写真h 参照)
- 層を重ねて容器がいっぱいになったら、最後は好きに飾り付け、冷蔵庫で1時間ほど冷やしたらできあがり。(写真i 参照)