マンマのレシピ

マンマの紹介

  • ディアネッラ・カティーナ(Dianella Catina)さん
  • ロンバルディア州ペッツォ村在住
  • 【得意料理】手打ちパスタ、煮込み料理

お料理説明・背景

ポレンタ・・・・・・南イタリアの人は、北イタリアの人のことを“ポレントーネ”とちょっと軽蔑したニュアンスを含めて呼びます。え? それはあなたが北イタリアに住んでいるから、ひがんでるんじゃないの? と思わないでください。ちゃんとイタリア語版のウキペディアにもこの言葉が載っているくらいですから。昔、北イタリアの人々が冷害で食べるものが無くなった時に、当時家畜のえさであったトウモロコシを口にし始めたことを軽蔑して呼んだことが、その言われです。

そもそもトウモロコシは、コロンブスが南米からイタリアへ持ち込んだものでしたから、今から500年ぐらい前のことになります。トウモロコシは、決してイタリア全土に普及していたものではなく、私自身、イタリアに来たばかりの頃は、ポレンタは好きではありませんでした。それが、もはや冬になると、やっぱり食べたくなる。我が家にポレンタ用のトウモロコシの粉がないことはありません。 そして今は、決して北イタリアだけで食されるものではなく、イタリアを南北に横断するアペニン山脈の麓では欠かせない一品となり、カンパーニア州やシチリア州の内陸部ではポレンタを食べます。

ポレンタという言葉は、ラテン語のプルスから来ているといわれています。プルスは、粉という意味で、昔は古代麦であるファッロ(スペルト小麦)で作られていたようです。 それを寒くて小麦が育たない北イタリアの人たちが、トウモロコシで代用し始め、もはや簡単に小麦粉が、そしてパスタが手に入る北イタリアでも、とりわけ山沿いの人たちは冬になると喜んでポレンタを食べます。 シンプルに鉄板焼きしたチーズを添えて、あるいは牛肉の煮込みを添えて、食べ方はさまざまです。 残って硬くなったポレンタを羊羹のように切ってあぶり、ゴルゴンゾーラをかけて食べるのもおいしい食べ方の一つ。貧しかった時代には、残ったポレンタを揚げて、砂糖を振り掛けてドルチェ代わりに食べることもありました。

また、コショウもやはりコロンブスが持ってきました。貴重だったコショウの代わりに、山の人たちは、ジュニパーベリーを香りづけとして使っていました。その証拠に、今回のレシピにもコショウが入っていません。

このお料理を紹介してくれたマンマ、ディネッラさんは、伝統的なレシピを継承し、野草やキノコに詳しい人として地元では一目置かれています。レシピにあるポルチーニも、もちろん彼女が採ってきたもの。そして、彼女はいろいろな保存食作りの名人でもあります。家の地下室には、手作りのジャムやリキュール、そして冷凍庫にはさまざまなキノコや、秋に収穫した森のベリーが蓄えてあります。

彼女が住む村には、野生の鹿がたくさん生息しています。毎年狩猟が解禁になるのは9月初め。 今日も彼女の家の下の森で、野生のシカを発見! 向こうも打たれては大変ですから、じっとはしていてくれません。奈良公園の鹿とは違います。写真がピンボケなのはお許しくださいね。(私が激写しました!) 狩猟された鹿肉は、大半がミラノの高級レストランに売りに出されますが、その前に狩人たちが、ディアネッラさんのところに鹿肉を売りに来ます。彼女の料理の腕前を誰もが認めているからこそ! ポレンタの粉も、市販されているものではなく、親戚が育てたトウモロコシを挽いたもの。物があふれる昨今・・・・・・こんな生活、羨ましい限りです。

鹿肉がなくても、牛肉や猪肉でも代用できます。時間はかかりますが手間はかかりません。フルボディーの赤ワインをお供に、ぜひどうぞ。

レポート:池田 美幸(Miyuki Ikeda)
1986年よりイタリア在住。ミラノに住んでいるが、週末になるとイタリアで一番大きいステルヴィオ国立公園内にある山小屋へ逃避。日本で農学部を卒業。イタリアで手にしたチーズティスター・マエストロ、公認ワインティスターの資格を活かし、通訳、コーディネーターとして活躍中。

材料

ポレンタに鹿肉の煮込みとポルチーニを添えて(4~6人分)

・鹿肉1kgできればもも肉
・ポルチーニ2本
・バター100g
・シナモン2かけら
・クローブ2個
・ジュ二ーパーベリー2個
・白ワイン100cc
・赤ワイン約500cc浸るぐらい
・濃縮トマト小さじ1ポモドーロ・コンチェントラート
・塩適量
・トウモロコシの粉300g

秘密の一瓶

・イタリアンパセリ(プレッツェーモロ)300g
・ニンジン1kg
・タマネギ1kg
・熟したトマト500g
・セロリ350g
・ニンニク5かけ
・バジリコの葉5枚
・セージの葉5枚
・ローリエ2枚
・塩1kg

作り方

下ごしらえ(秘密の一瓶)

  1. 野菜、ハーブはすべてみじん切りにして大きめのボウルに入れ、塩を加え、ラップをして常温で2日間放置し、その後瓶に詰める。冷蔵庫で半年近く保存可能。(写真a 参照)

作り方

  1. 一口大にカットした鹿肉をボウルに入れ、シナモン、クローブ、ジュニパーベリー、塩、赤ワインを加え、一晩冷蔵庫でマリネする。(あれば秘密の一瓶を小さじ一杯加える)(写真b 参照)
  2. 翌日、水気をよく切った鹿肉をバターでいため、白ワインと、1のジュニパーベリーと濃縮トマト(ポモドーロ・コンチェントラート)を加え、やや弱めの中火で蓋をしないで2時間煮込む。(写真c 参照)
  3. ポレンタを作る。厚めの深い鍋に1200㏄の水を入れ、塩を大さじ1/2ほど(分量外)加え、沸騰直前にトウモロコシの粉を少しずつだまにならないように加えていく。(写真d 参照)
  4. 泡立て器を使って、だまにならないようにかき回す。(写真e 参照)
  5. 蓋をしないで、弱火で調理し続け、時々泡立て器でかきまわす。(写真f 参照)
  6. ポルチーニをカットする。(写真g 参照)
  7. 6のポルチーニを、少し深めのフライパンに入れバター大さじ1ほど(分量外)でいため、塩をしてから蓋をして中火で15分間調理する。(あればイタリアンパセリ(プレッツェーモロ)を入れてもOK)(写真h 参照)
  8. スムーズに取り分けるため、ポレンタは木の台に鍋をひっくり返してのせる。こうすると、後でお鍋に残ったお焦げもスムーズに皮となってはがれます。(写真i 参照)
  9. ポレンタを皿に移し、鹿肉の煮込みとポルチーニを添える。
  • a. 秘密の一瓶の材料を混ぜ合わせる
  • b. 一晩鹿肉をマリネする
  • c. 鹿肉をいため濃縮トマトを加えて煮込む
  • d. 深鍋にトウモロコシ粉を加えていく
  • e. だまにならないようにかき回す
  • f. 弱火で蓋をせず時々かき回す
  • g. ポルチーニをカットする
  • h. バターでいため蓋をして蒸し煮にする
  • i. ポレンタを木の台にひっくり返して載せる

お料理ポイント

鹿肉が手に入らなくても、猪肉や牛肉でも大丈夫です。 ここでは、ディアネッラさんの冷凍ポルチーニを使いました(半解凍の状態で使用)が、乾燥ポルチーニで代用する場合は、水で30分ほど戻してから、直接鹿肉の煮込みに加えてください。フレッシュポルチーニなら、このレシピの通りでOK。 “秘密の一瓶”は、加えるとコクがでます。作り置きしておくと、煮込み料理などに使えてとても便利! ニンニクやタマネギを刻んで手に匂いが移ってしまうのが困るお出かけ前の時にもぜひ活用してください。使い方ポイントとしては、マリネする料理なら、マリネの際に。マリネせず煮込む料理なら、煮込むときに入れるのがおすすめです。