マンマの紹介
- シルヴァーナ・トゥセ(Silvana Tuse)さん
- アブルッツォ州キエティ県ファラ・フィリオルム・ペートリ在住
- 【得意料理】全般得意。 働きながら2人の子どもを育てあげたシルヴァーナ。手打ちパスタや伝統料理など自身の母親から学んだものがベースにある。学生時代、夏休みを利用してレストランで料理人として働いた経験もある。今でもおいしいと思ったものがあれば家で再現する料理名人。
お料理説明・背景
アブルッツォ州キエティ県にある人口約2,000人の小さな町、ファーラ・フィリオルム・ペートリで食べられる季節の料理。この地域の特産品でもある「Cipolla piatta di Fara(ファーラの平たいタマネギ)」が主役の一皿。
タマネギが最初にこの地にもたらされたのは14世紀頃、修道士によるとされている。元々砂利の多い地質で、成長したタマネギが地下に伸びて行くことができず水平に成長したため、平べったい円盤状をしているのがとても特徴的だ。収穫時期には地上に押し出され、土から飛び出したタマネギが畑の畝に並んでいるのも風物詩と言えるかもしれない。
もうひとつの特徴としてはその味わいで、近くに渓流を有しており、水分が豊富な土地であることから、比較的辛味が少なく、スライスしていても涙が出ず、みずみずしくて甘みが豊かだ。こうして水分と養分をしっかり蓄えてできるタマネギは大きいものだと直径20センチ程にまで成長する。ただ、水分を多く含むため保存にはあまり向いておらず、収穫は8〜9月が最盛期で、11月頃には店頭から姿を消してしまう。
戦前までは貴重な食料であったこのタマネギだが、戦後の経済成長の時期には生産する農家がなくなり、長い間、食卓に上がることがなかった。15年程前から自然食志向や地産地消が見直されるようになり、再びこのタマネギの存在に注目が集まったところ、唯一先祖からの苗を大切に育て続けていた農家が地域に残っていたことで、今日の復活がある。以後、試行錯誤を重ねることで生産数は少しずつ増え、今ではスローフード協会の認定食材にもなっている。
地域でも地元の特産品としてそのおいしさを広く知ってもらおうと、数年前から毎年8月の第1土曜・日曜日に『タマネギまつり』を開催し、町の地区単位で新たなタマネギレシピを考案しては、訪れる人々にタマネギのおいしさをアピールしている。 新鮮なタマネギとして食べられる時期は限られているが、近年はオイル漬けやジャムなどの加工品にする生産者も出てきている。 こうした地元の努力も実って少しずつ知名度とともに人気も高まっているが、”限られた時期にだけ楽しめる旬の味”のため、生産が追いつかないのが現状だという。
今回の料理は、たっぷりのタマネギとヒヨコ豆、そして冬に捌いた豚肉を塩漬けにして保存しておいたパンチェッタを用いた、昔ながらの農家料理。タマネギとヒヨコ豆の優しい甘さにパンチェッタの塩味がいいアクセントになっている。クルトンの代わりに固くなったパンを用いてもよい。腹持ちもよく、一皿で十分食べごたえがある一品。通常市販されているタマネギでもおいしくできるので、是非試していただきたい。
地域ブランディングを主とした都市計画コンサルタント。2002年、イタリアの暮らしにどっぷり浸りたいとアブルッツォ州に1年間留学。以降、大阪とアブルッツォを行き来する生活を続けている。2009年のラクイラ地震を機にアブルッツォ州紹介サイト「Abruzzo piu’」 を立ち上げ、2016年4月からはフリーペーパー「アブルッツォ通信」の共同発行者として多方面で活動中。
作り方
下ごしらえ
- 乾燥ヒヨコ豆をローズマリー、ローリエを加えた冷水に浸し戻しておく。(写真a 参照)
- 深い鍋に戻したヒヨコ豆、水、セロリ、人参、ローズマリー、ローリエ、タイムを入れ火にかけ、沸騰したら弱火にしてゆがく。アクは都度取り除く。(写真b 参照)
- 約2~3時間、ヒヨコ豆がホクホクになってきたら塩を足し、火を止め香草類を取り除きオリーヴオイル20mlを回し入れておく。
作り方
- タマネギをスライスする。(写真c 参照)
- スライスしたタマネギの約1/3を、水、セロリ、ローズマリー、ローリエと一緒に沸騰させ、沸騰させた状態で更に30分火にかける。(写真d 参照)
- 別のフライパンに粗みじん切りにしたセロリとニンジン、さらにパンチェッタ、バター、オリーヴオイル50ml、刻んだローズマリー少々を入れ中火にかける。(写真e 参照)
- バターが溶け黄金色になったころに残り2/3のタマネギを加える。(写真f,g 参照)
- タマネギが透き通ってきたら蓋をしてタマネギが黄金色になるまで加熱し、さらにザルにあげた(2)のタマネギとゆで汁を少し加え、いため煮にする。(写真h 参照)
- 小さな鍋にゆがいたヒヨコ豆1/4とほぼ同量の(5)、ゆで汁少々を入れミキサーなどでピュレ状にする。(写真i 参照)
- 残りの(5)も軽くミキサーにかける。(写真j 参照)
- ヒヨコ豆を湯がいていた鍋に(6)と(7)を入れ、ひたひたになるまで水を足し時々混ぜながらさらに30分程弱火で煮込む。(写真k 参照)
- 皿に盛り付け黒胡椒で少し香り付けをし、クルトンをまぶして完成。