マンマの紹介
- シルヴァーナ・トゥセ(Silvana Tuse)さん
- アブルッツォ州キエティ県ファラ・フィリオルム・ペートリ在住
- 【得意料理】全般得意。 働きながら2人の子どもを育てあげたシルヴァーナ。手打ちパスタや伝統料理など自身の母親から学んだものがベースにある。学生時代、夏休みを利用してレストランで料理人として働いた経験もある。今でもおいしいと思ったものがあれば家で再現する料理名人。
お料理説明・背景
アブルッツォ料理の中でも州全域で親しまれ、州を代表する伝統料理の一つ。チーズと卵をパンでつないで混ぜ合わせたものを団子状にし、油で揚げてトマトソースと合わせて食べるもの。前菜として提供されることもあるが、メインの役割も立派に果たすボリューム満点の料理。
元々は肉が贅沢品であった時代、農民や羊飼いたちが固くなったパンやチーズの切れ端を活用して作ったとされる「Piatto Povero(ピアット・ポーヴェロ)=貧しい料理」として誕生したものと言われている。また別の言い伝えでは、戦時中、敵の略奪からチーズを守るため、主婦たちがチーズをパンや卵と一緒に団子状にし、家の梁の下や壁のレンガの後ろに隠し、それで飢えをしのいだのが始まりとも言われている。いずれにしても、この“卵とチーズ”の組み合わせはとても相性がよく、後に誕生するスパゲッティ・カルボナーラの発想の原点だという説もある。
今でも伝統料理を得意とするレストランでは必ずと言っていいほどメニューに並ぶ料理で、地元の人曰く、上手な人が作った団子には表面のカリッと揚げた部分がしっかりと膜の役目を果たし、中にトマトソースが染み込まず、卵とチーズの黄色がきれいに残っているのだとか。確かに、そのことで、食べた時にチーズの香りがダイレクトに口に広がる。
今回は食いしん坊な友人が「彼女が作るCacio e Uovaは最高だよ」とすすめてくれたシルヴァーナのレシピをご紹介。材料をそろえる際、彼女の指示に従って2つの食料品店でそれぞれ「Cacio e uova」用にブレンドしてもらったチーズミックスを買い求め、更にそれをミックスしているので、ペコリーノチーズを中心に5〜6種類のチーズが使われている。元々は「貧しい料理」と言われていたが、これだけの種類のチーズを大量に加え、新鮮な卵やトマトを使うので、すっかり贅沢な料理になったとシルヴァーナは言う。ちなみに、牛乳を浸したパンを入れるのは、近くのお年寄りの女性が「この方が軟らかくしあがるよ」と教えてくれてからとのこと。伝統料理も情報交換し合いながら進化している。
地域ブランディングを主とした都市計画コンサルタント。2002年、イタリアの暮らしにどっぷり浸りたいとアブルッツォ州に1年間留学。以降、大阪とアブルッツォを行き来する生活を続けている。2009年のラクイラ地震を機にアブルッツォ州紹介サイト「Abruzzo piu’」 を立ち上げ、2016年4月からはフリーペーパー「アブルッツォ通信」の共同発行者として多方面で活動中。
作り方
団子
- パンに牛乳を加えしっとりさせ、手でほぐしておく。(写真a 参照)
- 大きめのボウルにチーズと卵、1のパンを加える。(写真b 参照)
- 耳たぶ程度の軟らかさになるまで手でこねて混ぜ合わせる。(写真c 参照)
- 直径3~4センチくらいの団子状に丸める。※表面をなめらかにするのがポイント。(写真d 参照)
- たっぷりの油を180度に熱し、3を入れる。団子から泡が出てきたらちょうどよい温度。(写真e 参照)
- 強火で転がしながら均一に火を通していく。団子が勝手に回転し始めればきれいに揚がっている合図。(写真f 参照)
- きつね色になったら油からあげる。※多く作った場合は粗熱を取って冷凍保存も可能。(写真g 参照)