お料理説明・背景
インボルティーニとは「詰め物を巻いたもの」の料理の総称。 その中でも今回ご紹介する「ナスのインボルティーニ」は、シチリア家庭料理の定番中の定番。シチリアには野菜、肉、魚、色んなもので巻いたインボルティーニがありますが、中の詰め物はほとんどのものがパン粉、又はパンがベース。そう、インボルティーニはパンの再利用料理なのです。
今では街にパン屋さんが溢れかえるシチリアですが、かつて、小麦は非常に大切な食糧でした。1週間、または2週間に1回、家族全員分のパンを焼き、余ったパンはパン粉にして保存し、料理に再利用していました。そのせいか、シチリアにはたくさんのパン再利用料理があり、その中の代表格がインボルティーニなのです。
「インボルティーニの詰め物は、何で巻くかによって微妙に変わるのよ」
というのは、今回この料理を教えてくれたカロリーナさん。トスカーナ人のお母さんと、トラーパニ人のお父さん、イタリアの中で言ってみれば「ハーフ」の彼女が料理を習ったのはトラーパニで生まれ育ったおばあちゃん。
トスカーナ生まれのお母さんが作るトスカーナ料理と、生粋のトラーパニ人のおばあちゃんが作る料理を両方食べて育ったそうです。今でも、トスカーナに一年に一回は足を運ぶそうですが、「やっぱりシチリアの食材は最高よね!」とカロリーナさん。
イタリアで最も南に位置するシチリア。肥沃な大地と一年中たっぷりと浴びることができる太陽。そんな大地で育った食材はとても力強く味も濃く、特に今の季節は赤、黄、緑、さまざまなカラフルな野菜が市場に並び、見ているだけでも楽しい! と、シチリア野菜の大ファンなのです。
さて、シチリアには色々なタイプのナスがあります。今回使ったナスは日本の長ナスの3倍くらいの大きさのもので、比較的苦味もアクも強く、揚げても型崩れがしません。カポナータに使われるのもこのタイプです。 その他によく見かけるのは鮮やかなバイオレット色のぽってりとしたナス。こちらはアクが少なく、火を入れるとトロ~リととろけるような食感になりおいしいんです。また最近では白いナスや、まだら紫のナス等、市場には色々なナスが並びます。
グリルパンで焼いても、揚げてもおいしい万能ナス!かつて新大陸発見後、スペイン王朝からシチリアにもたらされましたが、もはやシチリアを代表する食材に。 今が旬! のナスを使って、是非、シチリアマンマの味を日本でも作ってみてくださいね。
2005年よりイタリアの南の島、シチリア島在住。力強い大地の恵みと美しい大自 然にすっかり魅せられ、シチリアに残ることを心に決める。現在、シチリア食文化を研究しつつ、トラーパニでシチリア料理教室を開催。また、シチリア美食の旅をコーディネートする「ラ ターボラ シチリアーナ」の代表&コーディネーターとしてトラーパニで活動中。 シチリア美食の旅をコーディネート「ラ ターボラ シチリアーナ」
作り方
下ごしらえ
- ナスは縦に1cmの幅で切り、塩水に15分漬けてアクを抜き、キッチンペーパーで水分を拭き取る。(写真a 参照)
- 干しブドウはぬるま湯に15分漬けて、ふやかしたら絞って粗みじん切りにする。松の実はフライパンにオリーヴオイルを少々入れ 、弱火でこんがり色が付くまでいためたら冷まして粗みじん切りにしておく。(写真b 参照)
- イタリアンパセリ、ニンニクはみじん切りにしておく。
- カチョカヴァッロは縦5cm横1cm程度の短冊切りにする。(写真c 参照)