二人の女性シェフのユニット「アケーニ」が仕掛ける 旅する人にもとっておきの食体験/後編
例えば、ムルジャ渓谷トレッキング&ワイルドブランチ
(前編、中編はこちら)野山に百花が咲きこぼれる5月。マテーラのいっとう美しい季節と「アケーニの野点料理」の誘惑に負け、出不精の私も嬉々として、アケーニが仕掛けるワイルドブランチに参加してきました。
シークレット・サパー同様、まずはSNSで日時と「ムルジャ自然公園内」とざっくりとした場所だけが告知され、メールで問い合わせると料金etc.を載せた招待メールが届きます。
ワイルドブランチの舞台は、ムルジャ渓谷の秘境。さらに一帯は私有地につき、予約した人にだけ、メールでGPS情報が明かされます。
今回もメニューもサプライズなら、自分たち以外は誰が来るのかも当日まで分かりません。
楽ちんトレッキングでムルジャ渓谷の秘境へ
最高地点500m越、マテーラ市民はキャニオンと呼ぶムルジャ渓谷では、公認エリアガイドについて、腰を据えたトレッキングも楽しめます。ムルジャ渓谷には、分かっているだけで89の岩窟の聖堂がひっそりと点在していますが、そのような聖堂の多くは、険しい岩場を登ったり下ったりしてようやく辿り着くような「おっかない場所」にあったりします。
ワイルドブランチのテーブルが待つのも、そんな聖地の一つで、長く信仰を集めた岩窟教会があります。が、こちらの「参道」は道幅も十分で、急斜面にはところどころ階段まで穿たれていて、普段のスニーカーがあればOK。
オリーブ畑や、野の花が咲きこぼれる景色に目を細めているうちに、30分ほどで岩窟教会に着いてしまいました。
不思議なクリスト・ラ・セルヴァ岩窟教会を特別拝観
たどり着いた教会はその美しい外観から、マテーラの岩窟教会本の古典にして決定版の表紙を飾ったほど。内部もなかなかに興味深く、主祭壇がファサード(正面外観)の背面にある不思議な設計(祭壇を東向きにするため。岩窟の教会でみられる)の痕跡や、洞窟の壁体に直接うがって造られた珍しい告解室(1712年)が残っています。
教会名の由来にもなっているのが、こちらの『キリストの磔刑』のフレスコ画。
苦痛で眉を下げ、頭(こうべ)を垂れるetc.「苦難するキリスト(人間性)」の構図が取られる一方で、水平に保たれた両腕、ほとんど立っているかのように(足台の上に)並置した足etc.「栄光の主キリスト(神性)」の構図との、おおらかなミックスが、想像をかきたてます。
教会は世界遺産に連なる文化財ですが、なんとアケーニのフランチェスカの伯父チェーザレさんが所有管理しています。
というわけで、ワイルドブランチの参加者は、マテーラ市民でも入ったことのある人は少ない教会の中を見せてもらえます。内部から階段伝いに大小6つの洞窟コンプレックスに潜入でき、ちょっとした冒険気分まで味わえます。
ワイルドブランチ そのメニュー
うながされた秘境の洞窟には、野趣あふれるテーブルセッティングとアペリティフが待っていました。参加者17名のうち15名のマテーラ県人(安定期の妊婦さん1を含む)に寄せて、アケーニが組み立てたメニューは(*印はバジリカータ名物);
北インドのパーニ・プーリ生地で包んだプンタレッレのバーニャカウダ
トルタ・サレ
ムルジャ渓谷の山野草*のダンプリング(餃子)、ピーナッツソース添え
低温で火を入れた豚の腹肉、西洋わさび*のソース添え
紫キャベツのクロッカン
自家製フォカッチャ*
メタポント産いちご「カンドンガ」*
オルガおばあちゃんの柑橘風味のチャンベッラ(パウンドケーキ)
新鮮バター*と自家製アマレーナチェリーのジャム
スペルト麦とオーツ麦の自家製ビスコッティ、塩バター風味
藤の花を発酵させたワイルドソーダ水
新鮮な果物のエクストラクト2種
トルマレスカ 白・ロゼ プーリア州I.G.P.
バジリスコ 赤 アリアニコD.O.C.*
カフェ
今回、心を掴まれたのは、最近「発酵」の研究に余念がないというアケーニ特製の「ワイルドソーダ水」。季節の藤の花を発酵させたソーダ水は、記憶のどこにもない優美な香りがしました。
ムルジャ渓谷のただ中。視界が広々と開けたセミオープンの洞窟は、春の植物がいっせいに発する勢いと、見えない動物たちの生気に満ち満ちていました。この多幸感!
初めて顔を合わせた人同士でもおしゃべりがつきない饗宴は、最近の日長にもそそのかされて、気がつけば19:00(!)。ワイルド「ブ」ランチは14:30終了の予定なのでしたが。笑
ACHENI
https://achenicucina.wixsite.com/achenicucina
ワイルド・ブランチ
料金の目安:35€/人~
席数限定
告知はアケーニ公式Facebookにて
https://www.facebook.com/achenicucina/
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