二人の女性シェフのユニット「アケーニ」が仕掛ける 旅する人にもとっておきの食体験/中編
料理も、テーブルセッティングも、畑もつくる
(前編はこちらから)
「…わたしたち、全然SNS向きじゃないし…スマホをいじってる時間もほとんどない…実際問題、いつも手がよごれてるから。小麦粉で、卵で、土で、いろいろな発酵液で…」
2019年3月27日ACHENI公式facebookより
さらりとこんなことを書いちゃうあたりもぐっときちゃいますが、え、土?! 土?! クールビューティーなアケーニの二人は、自ら畑まで耕していました。アケーニの料理には、手塩にかけた自前の作物が使われていた、とフランチェスカの口から聞いて、なんというか広々と澄んだ感動を覚えました。
例えば、洞窟のダイニングルームでシークレット・サパー
春まだ浅き3月15日、アケーニが仕掛ける食体験のひとつシークレット・サパー・クラブに出かけてきました。毎回、場所を変え、趣向を変えて仕掛けられる秘密の宴は、SNSに日時と例えば「マテーラのサッシ地区」などと開催「地」だけが告知され、気に入れば誰でも予約できます。席数は毎回12席のみ(場所により10席)。
予約した人にだけ通知される会場もメニューもサプライズなら、自分たち以外は誰が来るのかも、当日まで分かりません。
シークレット・サパーの趣旨に嬉々として乗ってきた面々は;
マテーラでバカンス中だったドイツ人ご夫妻
プーリアとカラブリアからの2人組
マテーラ人4名
マテーラ在住アメリカ人1と日本人1
弥生三月のシークレット・サパー そのメニューは…
専ら「マテーラ」そして「春」を意識したメニューは、一皿ごとにテーブルを沸かせました。アケーニの料理が畑作りから始まっていたと知るのは、後になってからですが。以下、*印はバジリカータ特産です。スターター
プンタレッレのバーニャカウダ
前菜
塩バター仕立ての子羊の内臓と、2つの食感のアーティチョーク
プリモ
セモリナ粉の生パスタ 野生のビターラーペとセニーゼ産IGPクルスキピーマン*、モリテルニ産カネストラートチーズ*のクリーム 添え
メイン
山野草風味の子羊、西洋わさびのソース添え
この日、胃袋をつかまれてしまったのが、子羊肉とミルフィーユにしてブロードで煮込んだという春の山野草。ほろほろと柔らかい子羊もイケてましたが、脇を固める付け合わせの方です。
土地柄、野生のアスパラをはじめ、チコリ、ボリージ(ルリヂシャ)などなど山野草を摘んできて食べる習慣が、まだまだ健在です。
義母の家でも、レストランやアグリでも、うまいうまいと言いながら食べてきたハズなのに…。エレーネがキュートに鼻にしわを寄せながら「ムルジャ渓谷の所有地で摘んで来た!」という、野生のチコリとフィンネルの香ばしさときたら。
プレ・ドルチェ
ヤギ乳のカプリ―ノチーズ、くるみとアマレーナのコンフィチュール 添え
ドルチェ
メタポント産レモン*のレモンカードのタルト
パッシート(デザートワイン)
11フィラリ/プリミティーヴォ・ディ・マンドゥーリアD.O.C.G.(プーリア州)
焼き菓子
メレンゲ
つきを運ぶと信じて、食事の最後にアケーニが必ず供しているのが、フランチェスカのマンマ手ずからの焼き菓子です。
シークレット・サパー熱が冷めないまま、ちょっと言葉にならないあの澄んだ感動が、一体どこから来るのか…ずっと考えています。
二人が一心に向き合っているもの、畑づくりから始まる料理、郷土と大地、時間に育まれた食習慣、エレーネとフランチェスカの家族のストーリー、もてなしと客として招かれるということ、場所と人、人と人、人と人のあいだ…
次回後編は、ムルジャ渓谷のエクスカーション&ワイルドランチ、スカイプでの料理レッスンと、さらなるアケーニの食体験をご紹介します。
ACHENI
シークレット・サパー・クラブ
料金の目安:70€/人~
席数:12席(会場により増減)
告知はアケーニ公式Facebookにて
インフォ&予約 achenicucina@gmail.com(英語可)