お料理説明・背景
トリッパはジェノヴァの最も古い伝統料理の一つです。ジェノヴァ共和国だった頃、牢屋の見張り人はズビッロと言いました。ズビッロが食べるスープ(女性名詞)だからズビッラと呼ばれていたものが、トリッパのもとになった料理だと言われています。ズビッラはトリッパを煮込んだだけのスープで、ジェノヴァのトラットリアや居酒屋で夜遅くまで提供されていました。
現在のトリッパ・アッラ・ジェノヴェーゼは、白豆、ジャガイモ、松の実が入っているのが特徴です。イタリアの他の地方のトリッパの煮込みには、香料や、チーズをたっぷり使っていることが多いのに比べ、とてもシンプルですが、白豆や、ジャガイモがほのかな甘みを加えていて、優しい味わいが楽しめます。今では勿論、貧しい人の食べ物ではありませんが、古きよきジェノヴァの代表料理として愛されています。
さて、今回料理を紹介してくれるマンマ、パオラさんと広場で待ち合わせをした後、まず連れて行ってくれたのが、旧市街にあるTripperia Casana(トリッペリア・カザーナ)です。店の入り口にはトリッパ(牛の胃袋)が飾ってあり、新鮮なトリッパを機械で細かく切ってくれます。色に違いがあるのは胃袋の種類が違うからなんだそうですよ。
ここはジュゼッペ・ヴェルディも常連だったそうで、イタリアでも1,2を争うほど古いトリッペリアだそうです。あまり知られてないのですが、作曲家のジュゼッペ・ヴェルディは気候が穏やかなジェノヴァで冬を過ごしていました。傑作「アイーダ」のほとんどはジェノヴァの滞在中に書きあげたものだそうです。ヴェルディもトリッパを食べていたんですね!
次に、新鮮な野菜を買いに行きます。カルチョーフィがおいしい季節になってきました。でも、出回っているのは、サルデーニャ島のカルチョーフィばかり。本当はリグーリア産の方がおいしいのですが、まだ季節外れ。店頭でお目にかかるのはもう少し、待たなければなりません。
パオラさんは子供の時に、おばあちゃんと一緒に来たという店に次々と連れて行ってくれます。
昔話をしながら、楽しんでお買い物をしています。
老舗のワインショップで「オテッロ」というワインを買った後、最後に立ち寄ったのが、上品なお菓子屋さん。小さい時からクリスマスや誕生日のお菓子はここのものを食しているというパオラさんですが、ラズベリーのパイにするか、洋ナシ入りのクレマカタラーナ風ケーキにするか悩みます。さんざん悩んで両方買ってしまいました!
パオラさんはアレルギー専門のお医者さんです。昨年12月に長年勤めていた大病院を定年退職し、現在は食事とアレルギーについての講演などをあちこちで行っています。最近、彼女がアレルギーについてシンプルな言葉で説明した本が出版され、話題を呼んでいます。アレルギーを持つ人も安心して食べられるレシピも沢山載っていてとても役に立ちます。 彼女が医師として働き始めた頃は、アレルギーなど珍しいことだったのに、現在ではこの問題で悩む人が増大しています。料理のレパートリーが広がれば、アレルギー源になる食材を摂らなくて済む可能性も広がるため、日本料理にもとても興味があるそうです。
そんなパオラさんのモットーは「おいしいものは体にいい」。勿論、アレルギーなどで食べられない食材が入っている場合は仕方ないですが、おいしく食事をするのは健康な生活を送るための第一歩だそうです。「丁寧に育てられた食材からおいしいお料理ができるでしょ。だから、おいしいものは体にいいのよ。でも、食べすぎはダメよ」とパオラさんは笑います。「リグーリアの料理はとても健康にいいのよ。新鮮なオリーヴオイルや野菜がたっぷり使ってあるし。それに、くっきりした味わいなのに、もたれないでしょ」 「トリッパもコラーゲンが一杯よ。女性にもとっても嬉しい一品よね」バリバリ仕事をこなしながらもとても愛らしい女性であるパオラさんにそう言われると食べずにはいらせません! 今夜はトリッパにカルチョフィのサラダとモッツアレラという組み合わせ。 港の見える素敵なお宅で、パオラさんのおばさんと3人でおいしくいただきました。
リグーリア州在住。音楽家、翻訳家、日本語教師、2018年3月ジェノヴァ市長より「世界のジェノヴァ大使」任命、アソシエーション「DEAI」代表。地域を越えて、様々な仕事を通して知り合った人との付き合いを大切にしている。
作り方
- セロリ、タマネギ、ニンジン、パセリを洗って皮をむく。(写真a 参照)
- 1の野菜の1/4程度と水1Lを鍋に入れ野菜のブロードを作る。一つまみの塩を加え火にかけ沸騰したら20分ほど弱火にかける。(写真b 参照)
- 残りの野菜はみじん切りにする。(ニンジンは細かくしすぎると水分が出てしまうので、気を付ける)(写真c 参照)
- フライパンに油を引き、まずは松の実を入れる。(写真d 参照)
- みじん切りにした野菜を入れ、弱火でいためる。(写真e 参照)
- 水分が全部飛んだらトリッパを入れ、よく混ぜながらトリッパから出る水分を飛ばす。(写真f 参照)
- 水分が飛んだら、火を強めて白ワイン100mlを加えて、よく混ぜる。(写真g 参照)
- 野菜のブロード400mlにトマトピュレと濃縮トマトを溶かして、フライパンに注ぐ。(写真h 参照)
- 塩、コショウを軽くふる。(この時、好みでペペロンチーノを加えてもよい)。(写真i 参照)
- ジャガイモを一口大に切って加え、再度、300mlのブロードを足す。(写真j 参照)
- 中火で20分ほど煮てから白豆を加え、再度200mlのブロードを足す。(写真k 参照)
- 30分後、ジャガイモを食べてみて、軟らかくなっていたら、コショウと残りの塩を全て加えて味を整え、さらに20分~30分ほど煮て、出来上がり。(写真l 参照)
- お好みでパルメジャーノチーズを振りかけてどうぞ。