お料理説明・背景
ブルボン王朝時代より、南イタリアの1王国の首都として君臨した歴史あるナポリ。歴史的な伝統料理の懐はさすがに幅広く、ナポリ料理といってもレパートリーが非常に多い。中でも誰もが知っている家庭料理で、誰もが目を細めて喜ぶのがこのジャガイモとパスタだ。
炭水化物&炭水化物で、おなか一杯になれる庶民的な料理の一つで、材料費もすこぶる安く、大家族にうってつけの料理。このレシピのパスタには、伝統的にパスタ・ミスタ(いろいろな形状のパスタがミックスしたパスタ)を使う。
星の数ほど存在するパスタの形状。同じメーカーの同じ形状のパスタを完全に使い切るのは結構難しかったりする。そんな中途半端に残ったいろいろなメーカー、色々な形状のパスタを捨てることなく集めておき、家庭で煮込み料理に使うようになったのが始まり。
当然、ゆで時間がまちまちの寄せ集めだから、形状により、軟らかかったり、かたかったりする。そこがまた家庭料理の醍醐味。捨てるのはもったいないマンマたちの工夫から生まれた。が、今は昔。最近はゆでムラが出ないように計算し製造されたパスタ・ミスタがパッケージされてスーパーの棚に並ぶ時代。ただ、パスタ・ミスタを使うレシピが多いナポリやカンパーニア地方では、ほとんど全てのパスタメーカーからパスタ・ミスタとしてパックされたものが普通に売られているが、他の地域ではほぼ見かけないのがこのパスタ・ミスタ。カンパーニア地方のお土産にもぜひおすすめしたい。
その他、豆とパスタ、ミネストローネ、カリフラワーのパスタなどにもよく使われる。 また、もっと“こってり”と作る家庭も多い。このレシピはいわゆるクチーナポベラ(貧困料理)なので、伝統的には豚のあばら(トラッキォレラ)や、豚の皮脂(コティカ)などをパンチェッタの代わりに使用していた。が、今回はパンチェッタで。
さて、このジャガイモとパスタ、お鍋一つで作れるのも素晴らしい! 通常パスタはゆでて、ソースとあえることが多いので、鍋とフライパンなど2つ使うのが普通だが、こちらは煮込みパスタなので鍋一つでできるのもうれしい。そして何より、どこにでもある身近な材料で作れるとってもおいしいパスタなのだ。
カンパーニア州在住。イタリアの家庭料理に憧れ渡伊。1997年よりナポリ在住。日本での情報誌編集制作勤務経験を活かし、2005年スローフード協会公式ブック”Slow”日本版の現地取材コーディネーションを始め、様々なコーディネート、執筆を多々手がける。1995年より南イタリア情報サイトPiazzaItalia設立。ナポリにてマンマに習うナポリの家庭料理教室などを主宰。ブログ「ナポリのテラスから」で日々の生活をを綴る。
作り方
- ジャガイモは皮をむき1.5センチ程度のダイス状にカットする。(写真a 参照)
- ニンジンも皮をむき、輪切りにし、それを更に半分の半月状にカットする。(写真b 参照)
- セロリはみじん切り、プチトマトは半分にカットしておく。(写真c 参照)
- 鍋にオリーヴオイルを加え、スライスしたタマネギをしんなりと火が通るまでいためる。(写真d 参照)
- ジャガイモとニンジンを4に加えよく混ぜる。(写真e 参照)
- 角切りパンチェッタを5に加え材料を混ぜ、中火で5分程度いためる。(写真f 参照)
- トマトとセロリの葉を投入し更に5分程度いためる。(火が通りやすい小さな材料は最後に)(写真g 参照)
- 材料がすべて混ざったらジャガイモが鍋に焦げつかないように混ぜながら、中火で更に5分程度いためる。材料に完全に火が通ったら、約500cc程度の水を加え、沸騰させる。注:鍋のサイズにもよるが、ジャガイモが完全に水でひたひたに隠れるぐらいが目安。(写真h 参照)
- 水が沸騰したら塩を加える。(写真i 参照)
- パスタ・ミスタを投入し、パスタを煮込む。水分を飛ばすため蓋をせず煮込むが、途中水分が足りないようなら、少しづつお湯をさしながら調整。焦げつかないように気を付けて混ぜながら煮込む。(写真j 参照)
- 鍋の水分がなくなりパスタが煮込めたら完成。(写真k 参照)
- 好みで火を消す前に1cm角程度にカットしたプロボラチーズを投入し溶かし混ぜる。(写真l 参照)
お料理ポイント
ジャガイモは煮込んでいる間にクリーム状に溶けるので、ゴロゴロ感が好きな場合、少し大きめにカットし、クリーミーが好きな場合は少し小さめにカット。大小ミックスしてもよし。パスタは投入後すぐに水分を吸い始めるので、煮込む段階で焦げ付きそうならお湯を差し調節するが、あまり入れすぎると、完成時に水っぽくなりすぎるので、少しずつさして様子を見るのがポイント。
パスタをゆでる塩は少なめにし、仕上げに味見をして塩加減を調整。
プロボラチーズが無い場合、モッツァレッラなど、熱で溶けるチーズが好ましいが、なければペコリーノやパルミジャーノ・レッジャーノで代用も可能。(熟成タイプは塩分が高いので、かける量はお好みで調整ください)ナポリでは燻製プロボラチーズがよく使われる。