お料理説明・背景
本格的な冬を迎えるこの時期、モデナではたくさん霧が出て寒さも日に日に深まってきます。今回はその時期によく食べられるお料理を先祖代々モデナ出身の生粋のモデナ人、ステファニアさんが紹介してくれます。彼女は郷土料理を出すレストランで長く働いていたこともある、実力派。現在21歳の長男を筆頭に男女4人のお子さんがいるマンマです。
モデナの地域では卵入りのパスタを使ったミネストラ(スープパスタ)が、昔からよく食べられています。特にこのインゲン豆とパスタを使ったミネストラはモデナ方言で “Levagrōgn” (Lava Faccia)。直訳すると 「顔を洗う」という名前が付いているとか。よく分からなくて聞いてみたところ、「それはね、一心不乱にお皿に顔を近づけて食べてしまうので、まるでお皿の中で顔を洗っているように見えるからそんな名前が付いたのよ。」とステファニアさんが教えてくれました。
そして、もう一つ、エミリアロマーニャ州で定番のマルタリアーティ (Maltagliati)。「male(悪い)」「tagliare(切る)」 の動詞に由来することからも分かるように、一つとして同じ形でないという意味があり、タリアテッレなどを作った残りの生地で作ることもあるパスタなのですが、今では、手打ちパスタはおばあちゃんが作ってくれるという方が多く、日々忙しい子育て世代のマンマたちは、市販品を買うことが多くなっているそうです。
今回のレシピはステファニアさんの祖母イルマおばあちゃん(1913年生まれ)直伝のレシピ。「当時は手打ちパスタだったけれど、今回は市販品のマルタリアーティで紹介するわ」と言って手際よく作ってくれました。
このお料理は、秋も深まり少し寒さを感じるようになってきた頃からおばあちゃんが、孫たちによく山ほど作ってくれたそう。
学校からお腹を空かせて帰ると、お腹を満たすだけではなく、冷えた身体を温めてくれて、家に帰ってきたという安心感を与えてくれたものだったとか。そんなわけで、彼女にとってこのインゲン豆のマルタリアーティはおばあちゃんのことを思い出す、優しい思い出の一皿なのだそうです。
そして残った時は、半日置くだけでパスタが水分を吸った状態となるので、パン粉や小麦粉で固さを調整後、卵と小麦粉とパン粉をまぶして揚げるの。中はふわっと、外はカリッとして最高なので、ぜひ試してみてねと教えてくれた。
もちろんステファニアさんの子供たちも大好きな一皿。取材をした日は雨が降っていて寒い秋の日だったので、ぴったりの一品でした。スープに入れて煮込んだパルミジャーノは子供たちが味見をさせて〜とやってきて、あっという間に食べてしまいました。
合わせるワインはカステルベートロ市のランブルスコ・グラスパロッサがオススメ。
エミリア・ロマーニャ州在住。日本で企業の管理栄養士として5年間勤務後、2005年渡伊。2007年、モデナ屈指の旧家に嫁ぎ、一族に継承されていたバルサミコ酢の樽の管理を夫と共に引き継ぐ。2009年よりスピランベルト市にある「伝統的なバルサミコ酢 愛好者協会」(Consorteria dell’aceto balsamico tradizionale di Modena)に所属し、バルサミコ酢マエストロ試飲鑑定士資格を目指し、研鑽を重ねている。バルサミコ酢の醸造の傍ら、イタリア人向け日本家庭料理教室の講座を北イタリア各所に持つ。また、自宅にて醸造室の試飲見学会、バルサミコ酢を使った食事会、料理教室を主宰。バルサミコ酢醸造のエピソード、見学会などは Facebook Akane in balsamiclandにて紹介中。
作り方
- 乾燥インゲン豆は一晩水につけ、たっぷりの水と大さじ1の塩を入れ軟らかくなるまでゆでておく。(写真a 参照)
- パルミジャーノ・レッジャーノの皮の外側を薄く全体に削りとってきれいにしておく。(写真b 参照)
下ごしらえ
作り方
- ニンニク、タマネギ、セロリはできるだけ細かくみじん切りにする(フードプロセッサーを使ってもよい) 。(写真c 参照)
- 深めの鍋にラード、バター、オリーヴオイルをひき、刻んだニンニク、タマネギ、セロリをキツネ色になるまでいためる。(写真d,e,f 参照)
- あらかじめゆでておいたインゲン豆のうち300gと、熱いお湯1.2L、豆のゆで汁約250mlを入れる。(写真g 参照)
- ハンドミキサーでピューレ状にする。(写真h 参照)
- 残りのインゲン豆、トマトピューレ、パルミジャーノ・レッジャーノの皮を入れ40分ほど煮込む。(写真i 参照)
- マルタリアーティを乾麺の状態のまま入れ、軟らかくなるまで煮たら出来上がり。(写真j 参照)