マンマの紹介
- ヴィルマ・アルテーリオ(Vilma Alterio)さん
- アブルッツォ州ナヴェッリ市在住
- 得意料理:8歳の頃からパスタを打っていたというヴィルマ。タリアテッレ、キタッラ、マルタリアーティなど手打ちパスタ全般を得意とする。17歳でアブルッツォを離れトリノへ。結婚後はピエモンテ州やリグーリア州に住んでいたこともあるため北イタリア料理も得意。定年を機に、夫と末娘のフランチェスカと共に生家のあるナヴェッリに戻ってきた。
お料理説明・背景
ラクイラ県ナヴェッリは人口500人ほどの小さな村だが、イタリアでも有数のサフランの産地で、2005年には「Zafferano dell'Aquila」の名称でDOP(※)にも認定され高い品質を誇っている。
今回はヴィルマが母親から習った家庭料理、ナヴェッリ産のサフランとヒヨコ豆が堪能できるシンプルなパスタを紹介する。ナヴェッリの人にとってもサフランは高級品で、今回の料理は遠くからのお客さんを招いた時や久しぶりに家族が集まった時などに出す一品だという。
また今回は、ナヴェッリでB&Bを営むヴィルマの末娘フランチェスカの図らいにより、1971年から続くサフラン生産組合の創立者でDOP認定にも貢献した故シルヴィオ・サッラの妹「サフランの女王ジーナ」の異名をもつジョヴァンニーナ・サッラに話を聞くことができた。
最初にサフランがこの地に伝えられたのは13世紀のことで、修道士がスペインから薬として持ち込んだとされる。今でもジョヴァンニーナたちは体調を整えるため煎じて飲んだり、塗り薬や湿布として使ったりしているという。
サフランにまつわる言い伝えも興味深く、ミラノでDuomoの建設工事が行われていた頃、ナヴェッリから出稼ぎに来ていた青年が薬代わりに持参していたサフランを用いて仲間たちに振る舞ったのがミラノ風リゾットのはじまりという説があるらしい。青年は母親がクリスマスや結婚式などの特別な日に作っていたサフラン入りのリゾットを思い出して作ったとか。また、Duomoのステンドグラスの顔料として使われていたサフランを白米に入れて食べたのが最初だという説もある。
クロッカスの一種であるサフランは8月頃に球根を植え、薄紫色の花が咲く10月下旬から11月初旬に収穫される。サフランとして使うのは赤い雌しべの部分で、夜明け前、まだ花が開く前に収穫する。一つずつ手摘みされた花から丁寧に雌しべを取り出し、専用のふるいに広げ、オークやアーモンドといった煙が少ない木を下からくべて乾燥させる。乾燥の具合は目と鼻と手触りの3感を使って判断する。乾燥させた後は麻や綿の白い布に包み、アーモンドの木箱で保管すると10年は香りが続くという。この木箱は嫁入り道具でもあったというので、古くから高価なものであったことが伺える。
ナヴェッリでは、ヒヨコ豆もスローフード協会の認定を受けている。通常よりも小粒で実が詰まって味が濃い。時々混ざっている赤茶色い豆は特に鉄分が豊富だとヴィルマが教えてくれた。
弾力のあるサニェッティと一緒に噛みしめると、サフランとヒヨコ豆の風味が鼻腔にかけて広がり最高に贅沢な気分になる。
B&B Abruzzo Segreto (http://abruzzo-segreto.it ※英語サイトあり)
※Denominazione di origine protetta(保護原産地呼称):1992年に制定されたEU統一の原産地保護制度における地理的表示のひとつ。指定された地域、製法で生産されることが求められる。
地域ブランディングを主とした都市計画コンサルタント。2002年、イタリアの暮らしにどっぷり浸りたいとアブルッツォ州に1年間留学。以降、大阪とアブルッツォを行き来する生活を続けている。2009年のラクイラ地震を機にアブルッツォ州紹介サイト「Abruzzo piu’」 を立ち上げ、2016年4月からはフリーペーパー「アブルッツォ通信」の共同発行者として多方面で活動中。
作り方
- 12時間前から戻しておいたヒヨコ豆を鍋に入れ、豆よりも人差し指2~3本分多めの水を足して約1時間ゆでる(圧力鍋の場合は約30分)。沸騰するまで強火、その後は蓋をして弱火でじっくり加熱する。その間3回程度混ぜて豆に均等に火が通るようにする。(写真a 参照)
- 沸騰した際に出る泡は網目のザルなどを使って取り除いておく。(写真b 参照)
- 豆をゆでている間にパスタの準備をする。小麦粉を山盛りにし、中央にくぼみをつくり、全卵を加え中央から少しずつ小麦粉の山を崩すように混ぜ合わせていく。(写真c,d 参照)
- 小麦粉と卵が混ぜ合わさってきたら手のひらを使いながらしっかりとこねる。こね終えたらラップや蓋などをして空気が入らないようにして30分以上寝かせる。(写真e 参照)
- 鍋にオリーヴオイル、ニンニク、ローズマリーを入れて熱し香りが付いたら、ゆでたヒヨコ豆を水を切らずに加える。※ニンニクは香りが付いたら取り除いてもよい。(写真f,g 参照)
- ヒヨコ豆に香りがついたらサフランを加え混ぜ合わせ、塩で味を整える(サフランの粉はゆで汁などで溶かして最後まで使い切る)。(写真h,i 参照)
- 寝かしておいたパスタを3~5mmの厚さにのばす(写真j 参照)
- さらに5cm程度の幅に切り分け端から細切りにしていく。(写真k,l 参照)
- 沸騰した鍋にパスタを入れ、再沸騰してから約1分であげ、6の鍋に加える。(写真m 参照)
- パスタがサフランの黄色になったら火を止め皿に盛り付ける。(写真n 参照)