縁あって、ソムリエとマテーラ最高のワインを飲む / 前 編
ソムリエと行けばなお楽し! マテーラが誇るカンティーナ見学
マテーラのような田舎で、外国人も甚だしいアジア人顔で社会生活をしていると、何もしていないのにひどい仕打ちを受けることも、やっぱり何もしていないのにすごい厚遇を受けることもあります。ならすと±ゼロなのですが(笑)、ひょんなご縁から、伊ソムリエ協会バジリカータ(以下AISと略)のソムリエ育成コースI(初級)とIII(上級)に、もぐりとして…もとい聴講生としてお招きに預かるという、たいへんな光栄に浴しました。
先日、初級コースの総括で、AISの新・旧会長率いるソムリエ視察団と、コースの受講生の大所帯で、マテーラD.O.C.*の作り手を訪ねました。
マテーラD.O.C.と言われても…
マテーラのワイン造りは、その起源をアテネやスパルタがイタリア半島でも盛んに植民都市を建設したギリシア大植民時代に遡るもんで、使用OKなブドウの品種が5種です。ひとつの品種か、または2~3種のブレンドもOKで、マテーラD.O.C.赤に始まり、同じく白、同ロゼ、スプマンテ、スプマンテ・ロゼ、パッシートと、計11のマテーラD.O.C.ナントカが、マテーラD.O.C.としてひとくくりにされています。
住んでいる人間の雑感ですら「…なんか、わちゃっとしてる」だし、D.O.C.認定年も2005年と新しいので、耳慣れませんよね。
が、綺羅星のごとく現れて、有名ワイン評価本や見本市で、数々の高い評価を受けるマテーラD.O.C.モーロの作り手も生まれているんです。
*2010年「新ワイン法」でD.O.Pに統一されましたが、従来のD.O.C./G.表示も引き続き認められており、「旧ワイン法」に統一します。
マテーラD.O.C.の大地
おフランスでは「偉大なワインは常に河を望む」と言うそうですが、AISの新会長エウジェニオさんが好んで口にするのは「ワインは大地が育む」です。マテーラD.O.C.の「大地」は県南東部、“土踏まず”のイオニア海に開けた平野ですが、一端は石灰岩のムルジャ台地と、もう一端は2000m級のポッリーノ連峰とせめぎ合っています。
冬はオレンジ類、春はイチゴ、夏はアンズやモモなど、産地名で喜ばれる果物自慢の村々が点在しています。
石灰質をほどよく含む泥灰土~石灰岩の大地と、ずばり強烈な日差しが、それはそれは糖度の高いブドウをつくります。糖分はアルコール度数に結実しますので、糖分をいかに制すかに腐心するカンティーナもあるほど。
アルコール度数13.5%以上という、パワフルなワインができるわけです。
後編では、マテーラで最も優れたカンティーナ、マッセリア・カルディッロをご紹介します。