マンマのレシピ

マンマの紹介

  • アンナマリア・ディノチェンティ(Annamaria d’Innocenti)さん
  • アブルッツォ州サンブチェート市在住
  • 得意料理:サーニェ(※)、キタッラ(※)、ラビオリ、ニョッキなど手打ちパスタ全般。手打ちパスタ店を経営していたこともあるパスタ名人。「Faccio subito!(すぐやるわよ!)」と言って、毎回2〜3種類のパスタを手早く作る。週末になると彼女の料理を食べようと親戚や近所の友人が集まる。そんな時いつも「ここはみんなの港ね」と嬉しそうに笑う。
    (※)アブルッツォの特徴的なパスタ

お料理説明・背景

アブルッツォは州土の約75%を標高700m以上の丘陵・山岳地帯が占め、3つの国立公園をはじめ、自然保護区域も多く有する自然豊かな州で、「ヨーロッパ緑の州」とも呼ばれている。また、山間部は夏でも比較的涼しく、牧草となる草も豊富にあったため早くから羊を中心に放牧が行われ、酪農や羊毛業などが州を代表する産業として発達してきた。 一方で冬の寒さは厳しく、9月のブドウの収穫時期になると羊飼いたちは羊の群れを伴って山を下り、プーリア州やモリーゼ州など南の暖かい地域へ移動して冬を越し、5月頃になると再びアブルッツォに戻るという生活を続けてきた。長いものだと200km以上ある距離を徒歩で羊と共に移動するこの風習を“トランスマンツァ”といい、その歴史は古く、紀元前3世紀には既にトランスマンツァが行われていたことを伝える資料も残っている。アブルッツォ州の歴史や文化はこのトランスマンツァから生まれた物も少なくない。1970年代以降、徒歩での移動こそ見られなくなったが季節移動の風習は今も残っている。

今回紹介する羊飼い風指輪のパスタは、羊飼いたちが食べていた物で、特徴的なのは指輪の形をしたパスタを使うこと。
なぜ、手間がかかる指輪形のパスタをわざわざ作っていたのだろうか。一説によると、羊飼いたちはアブルッツォにいる夏の間も、何日間も家には戻らず新鮮な牧草を求めて羊たちと移動するのが常だったため、女性たちはパスタを輪っか状にし吊るして乾燥させてから、羊飼いたちに持たせていたとされている。

今回はアンナマリアの特製レシピなので羊肉や牛肉も用いたが、元は羊の乳で作ったリコッタチーズとトマトソースだけのシンプルな物だったと考えられる。また、農村部ではナスやズッキーニ、パプリカといった野菜を加えた物も食べる。

現在は、羊の肉や新鮮なリコッタチーズを使うことやひとつひとつ指輪の形にする手間を考えると、普段の食事というよりは、友人や家族が集まった時に食べる少し特別なメニューと言えるだろう。

指輪の形にする際、ねじりながら輪っかを作るため、パスタには独特の弾力があり、トマトソースとたっぷりのリコッタチーズを使った重めのソースとの相性も抜群で、お腹にもしっかり溜まる一皿。是非、お友達や家族とテーブルを囲んで一緒に指輪のパスタ作りから楽しんでほしい。

レポート:保坂 優子(Yuko Hosaka)
地域ブランディングを主とした都市計画コンサルタント。2002年、イタリアの暮らしにどっぷり浸りたいとアブルッツォ州に1年間留学。以降、大阪とアブルッツォを行き来する生活を続けている。2009年のラクイラ地震を機にアブルッツォ州紹介サイト「Abruzzo piu’」 を立ち上げ、2016年4月からはフリーペーパー「アブルッツォ通信」の共同発行者として多方面で活動中。

材料

羊飼い風指輪のパスタ 4人分

パスタソース

・トマトソース700g※皮と種を除いて湯煎しただけのトマト
・羊のリコッタチーズ300g牛でもよい。両方手に入るなら半量ずつ使うとよりおいしい
・仔羊肉100g
・牛肉100g
・タマネギ1/4個
・白ワイン1/2カップ
・オリーヴオイル大2
・粗塩適宜

パスタアネッリーニ(指輪のパスタ)

・セモリナ粉250g
・小麦粉00番250g
・卵2~3個卵は粉200gに対して1個程度。卵の大きさによって調整。今回は卵が大きかったため2個使用
・水125ml
・塩少々

作り方

パスタソースを作る

  1. タマネギは粗みじんに切り、羊肉・牛肉は一口サイズに切っておく。
  2. フライパンにオリーヴオイル、タマネギ、羊肉、牛肉を入れ強火でいためる。(写真a 参照)
  3. 肉に火が通ってきたら、粗塩を加え、粗塩が馴染んできた頃に白ワインを加え香りをつける。強火のままでワインのアルコールをとばす。(写真b 参照)
  4. トマトソースを加える。
  5. トマトソースが沸騰したら強火から弱~中火にして40~50分程煮込む。(写真c 参照)
  6. プツプツと泡立ってきたら火を止める。(写真d 参照)

パスタアネッリーニを作る

  1. 小麦粉、セモリナ粉を山盛りにし、中央にくぼみをつくり、卵、水、塩を加え中心から少しずつ粉の山を崩していくように混ぜ合わせる。フォークが使いやすい。(写真e,f 参照)
  2. 1がおおよそ混ざったらひと塊にし、手の平に体重をのせてこねていく。(写真g,h 参照)
  3. 生地が耳たぶほどの硬さになったら、3等分にして平らにのばす。(写真i 参照)
  4. パスタマシンのダイヤルを1番に合わせ(最も厚い幅)、小麦粉を少し振った生地をパスタマシンに通す(3回程度繰り返しなじませていく)。(写真j,k 参照)
  5. パスタ生地に再び小麦粉を振り、短辺を2等分に裁断する。(写真l 参照)
  6. 5~7mm幅に切り、細長い短冊状にする。(写真m 参照)
  7. 人差し指(又は中指)にねじりながら巻き付け、端と端を親指と人差し指で押しながら滑らせてしっかり繋ぎ、輪っか状にする。この作業を繰り返す。(写真n 参照)
  8. 沸騰したお湯に塩を加えパスタを入れ3~4分ゆでる。(写真o 参照)

仕上げ

  1. ボウルに漉し器またはスプーンの背などで延ばして少し滑らかにしたリコッタチーズをすりおろす。(写真p 参照)
  2. パスタソースを半分ほど加える。(写真q 参照)
  3. しっかり湯切りをせずにパスタを加える。残りのソース、ゆで汁もお玉1~2杯足して混ぜ合わせる。(写真r 参照)
  4. 食べる前に好みでペコリーノチーズやパルミジャーノチーズ、唐辛子をかけてできあがり。
  • a. 材料をいためる
  • b. 白ワインを加えアルコールをとばす
  • c. トマトソースを加え煮込む
  • d. プツプツ泡立ってきたら火を止める
  • e. 粉を山盛りに、中央に卵、水 塩を加える
  • f. 中心から少しずつ混ぜ合わせる
  • g. おおよそ混ざったらひと塊に
  • h. 手の平に体重をのせこねる
  • i. 耳たぶほどの固さになったら3等分にする
  • j. ダイヤル1番でパスタマシンに通す
  • k. 3回ほど繰り返す
  • l. 短辺を2等分に裁断する
  • m. 5~7mm幅の短冊状に切る
  • n. 指にねじりながら巻き付け輪っか状にする
  • o. 沸騰したお湯でパスタをゆでる
  • p. ボウルにリコッタチーズをすりおろす
  • q. パスタソースを半分加える
  • r. ゆでたパスタを加え、ソースとゆで汁も加える

お料理ポイント

パスタのお湯は切らずに入れる。ゆで汁も加えてトマトソースをのばすのがポイント。 パスタマシンが無い場合は、生地を細い紐状に手でのばしてから7㎝程の長さにカットし、指輪形にしてもよい。