マンマのレシピ

マンマの紹介

  • グラツィエッラ・アリプランディ(Graziella Aliprandi)さん
  • ヴェネト州ヴィツェンツァ県バッサーノ・デル・グラッパ市在住
  • 得意料理:お手製ジャムを使った、タルトやクロスタータなど
  • ヴェネト州ヴィツェンツァ県の北部、静寂で美しく小さな町、バッサーノ・デル・グラッパに住んでいるマンマ。明るく話し好きで料理上手な彼女の周囲には、いつも多くの人が集まる。招待される機会ももちろん多いが、そんな時には庭に生る果物や、各季節の旬の果物を保存用に作り置きしてある最高においしいお手製ジャムを使った、タルトやクロスタータなどを手土産に。 さらには、料理好きな彼女のキッチンはもちろん常にピッカピカ。何十年も使うキッチン家具や小物、鍋などは、まるで新品かのように磨きあげられている。 丁寧な生活をしている様子がよく伺える、学ぶべきところが多い素敵なマンマだ。

お料理説明・背景

バッサーノ・デル・グラッパで有名なのは、春先の名産品“白アスパラ”。野菜としては数少ない、原産地呼称D.O.P.のつく、いわゆるブランド野菜だ。
そのブランド力を保つ為には、厳しい生産規定が伴うもの。アスパラ栽培が盛んなヴェネト州内でもバッサーノ産のそれが特別視されるのは、その高い品質力から。高品質を常に一定に保つには、当然ながらそれ相応の努力を要する。それは苗植えの段階から始まり、最終的な収穫物に対しても、色、見た目の美しさ、長さ、太さ、1束の重さ、束の作り方……など、いたるところに品質基準の目が光る。

だからこそ価値が生まれるのだが、その味も価値に相当するもの。
そして、アスパラほど収穫後の経時劣化が顕著な野菜はないといわれるほど、新鮮さがおいしさを左右する。だからこそ本来のおいしさを知る地元の人たちは、農家が収穫物を毎日収める集荷場所に、その日に採れた産物を直接購入に訪れる。

アスパラを食すうえで、卵との相性の良さは切ってもきれないが、ここバッサーノでも同様。ただし、地元の老舗店などに行くとおもしろいことに、ゆでた白アスパラとゆで卵が殻付きのままテーブルに運ばれてきたりする。客はゆで卵の殻をむき、自分でナイフとフォークを使って卵を刻み、塩、アチェート、オイルを加えてソースをつくり、アスパラをいただく、というのが本来の姿。
バッサーノは歴史的に陶器の生産が盛んな町でもあるで、町中のショップでは、丸ごとのゆで卵を配置できるように仕立てたアスパラ専用皿を見かけることもある。

そんな町に住むマンマのグラツィエッラさんの手から作られる料理やドルチェは、ものすごく味がやさしく、体に馴染む。そして彼女の料理の手際の良さと正確さにはいつも驚かされるもの。料理はもちろん、ドルチェをつくる際にも一切計量器を使わず、スプーンのみの目分量で、材料の分量はともかく味もぴったりとした着地点に収まる。そして彼女にとっても白アスパラは、この時期何度か口にする季節の賜物。シンプルにゆでて、グリルして、そしてリゾットやパスタに…とさまざまに形を変えて楽しむことができる。今回紹介するパスティッチョ(ラザーニア)は、お得意かつ自慢の一品。白いアスパラに白いベシャメル、何種かのフォルマッジョを合わせたもの。見た目にもふんわりとしたフォルマッジョにアスパラのデリケートな味わいが相まった非常にバランスのよい一皿だ。

おいしさの秘訣のひとつは、クレープで層をつくること。ラザニア用パスタよりもよりふんわりと軽く、口当たりがよい。デリケートでやさしい味わいのこの料理の組み立てに一役も二役もかっているのだ。 春先の季節限定のおいしいもの。熱々のところをいただくのが最高。

レポート:白浜 亜紀(Aki Shirahama)
ヴェネトおよびフリウリを中心に、通訳、翻訳、地元マンマの料理レッスン及び生産者訪問コーディネイト、そして野菜を中心とする農産品の輸出業などの活動を行う。 ブログ『パドヴァのとっておき』にて料理や季節のおいしい情報を中心に、日々のできごとを発信中。

材料

パスティッチョ・ディ・アスパラジ・ビアンキ・ディ・バッサーノ(オーブン用耐熱容器 28x20xH5cm)

・バッサーノ産白アスパラ600g
・フォルマッジョ各種約150gアジアーゴ、モンタージオ、ラッテリーアなど
・グラナ・パダーナ60g
・タマネギ20g
・バター10g
・オリーヴオイル大さじ1
・塩適宜

クレープ生地 直径26cm 約10枚分

・卵3個
・小麦粉100g
・牛乳300ml
・植物油適宜
・塩適宜

ベシャメルソース

・小麦粉60g
・牛乳700~750ml
・バター60g
・塩適宜

作り方

下ごしらえ(1)クレープを作る

  1. ボウルに牛乳と小麦粉を合わせ、よく混ぜる。(写真a 参照)
  2. 卵を加え、ダマにならないようにさらによく混ぜる。塩をひとつまみ加える。(写真b 参照)
  3. フライパンを温め、油を入れる。キッチンペーパーなどで、全体に薄く油をなじませる。(写真c 参照)
  4. クレープ生地をレードルですくい、フライパンに流し入れる。フライパンを素早く傾けて生地を全体に薄く広げる。(写真d 参照)
  5. 生地の端がフライパンの底から離れるようになったら一気にひっくり返し、反対側の面もしばらく火を入れたら皿に移す。(写真e 参照)
  6. 続けて残りの生地も焼く。この分量で9~10枚のクレープができる。

下ごしらえ(2)ベシャメルを作る

  1. 鍋にバターを溶かす。
  2. 小麦粉を加え、手早くかき混ぜるようにして火をいれる。(写真f 参照)
  3. 牛乳を加え、さらに手早くかき混ぜる。ダマができないように注意しながら、はじめは分量の1/4~1/5ほどの量から少しずつ加えていく。(写真g 参照)
  4. 全ての牛乳が入ったら、塩を2つまみほど加え、中〜弱火でしばらく火を入れる。途中、鍋底に焦げ付かないようにかき混ぜる。
  5. 粘り気を見て、しっかりとソースがつながったら火をとめる。あまり固くしないほうが、仕上がりの口当たりがよい。(写真h 参照)

作り方

  1. 白アスパラを掃除する。小さなナイフで茎部分から穂先への方向で、薄く皮をむく。この際、ピーラーを使用すると、微妙な調節ができないので、ナイフを使うことをおすすめする。(写真i 参照)
  2. 茎を縦方向に4等分にし、さらに小さく切る。(写真j,k 参照)
  3. 温めた鍋にオリーヴオイル、バターを入れて溶かし、タマネギのみじん切りを加えて軽くいためる。(写真l 参照)
  4. 細かく切ったアスパラを加えてさらにいためる。(写真m 参照)
  5. 塩を2つまみほど加え、蓋をしてアスパラに火をいれる。
  6. 10分ほど中火にかけ、全体に火がしっかり入ったら火を止める。
  7. 耐熱容器に薄くバターをぬり、ベシャメルを薄く広げる。(写真n 参照)
  8. その上に3枚分のクレープを広げ、ベシャメルを広げ、さらに調理したアスパラを全体にまんべんなくのせる。(写真o 参照)
  9. 細かく切ったフォルマッジョ、おろしたグラーナを全体に広げる。(写真p 参照)
  10. 再度3枚分のクレープを覆うように広げ、先と同じように材料を重ねる。(写真q 参照)
  11. 3段になるように材料を配分しておき、一番上の層はフォルマッジョで終了するようにする。(写真r 参照)
  12. 180度のオーブンで約30~40分、表面にこげ色がつくまで焼きあげる。
  • a. 牛乳と小麦粉を混ぜあわせる
  • b. 卵を加えだまにならないように混ぜる
  • c. フライパン全体に油を薄くなじませる
  • d. 生地を全体に広げる
  • e. 生地を一気にひっくりかえす
  • f. バターに小麦粉を加えかき混ぜる
  • g. 牛乳を入れさらにかき混ぜる
  • h. 少しゆるめに仕上げる
  • i. 皮をむく
  • j. 茎を縦方向に4等分にする
  • k. さらに小さく切る
  • l. タマネギを軽くいためる
  • m. アスパラを加えていためる
  • n. バターをぬりベシャメルを広げる
  • o. クレープ、ベシャメル、アスパラの順で重ねる
  • p. 細かく切ったチーズを広げる
  • q. 再度生地から繰り返す
  • r. 最後にフォルマッジョを重ねる

お料理ポイント

デリケートな白アスパラとのバランスをとるため、ベシャメルはゆるめに仕上げることがコツです。今回は4種のフォルマッジョを使いましたが、熟成の違うものを数種組み合わせることも味わいがさらに深まる要因。ヴェネトのアジアーゴ、モンタージオ、グラーナなどが揃えられれば最高ですね。