ワインを理解する上での心得とは?
皆さんこんにちは、
シエナの鈴木です。
今回は、イタリアでワインを仕事にしている立場の自分から、ワインに興味のある皆さんのお役に立てるようなコラムにしたいと思います。
『イタリア好き』をフォローされてる皆さんの中には、ワインに興味があって勉強したい、もっと知りたい、でも難しい、と思っている方も多いことでしょう。
中にはワイン関係のご職業で、ワインを説明する立場にいる方もいらっしゃるかもしれません。
自分の考えるワインの世界への入門、ワインを理解していくためのコツをお伝えできればと思います。
イタリアワイン。まずは海外の生産品という時点で言語や文化の違いから、少し壁を感じてしまう部分があります。
というのも、当然イタリアワインのラベルはイタリア語で表記されていますし、日本は近年、ワインが一般生活にも馴染む飲み物になってきたとはいえ、イタリアのように家族・親戚がワインを作っているとか、食卓にはいつもワインがある、というような文化ではありません。
そして何より、イタリアワインは全国20州で生産され、多種多様のブドウ品種、製法があることで複雑な体系をもっています。
つまり、なかなか馴染みのないワインを理解していくためには、最初は可能な限りシンプルな情報だけを学ぶべき、ということになります。
そしてどうにか工夫をして、イタリアワインとの間に距離や壁がないように感じることが必要です。
距離や壁を感じた情報というのは、覚え難いですし、仮に覚えられても残念ながらすぐに忘れてしまいます。
大枠の最も重要な情報のことです。そのあとにディティールを学ぶという流れが理想です。
それはどういうことか、一つ例えをしましょう。
推理小説や刑事ドラマの中で、とある事件が起こるとします。
犯人を見たという人物が一人。
重要参考人として調書をとり、モンタージュを作成することになりました。
証言内容。
目は二重だった。
鼻はきりっと高い。
Tシャツを着ていた。
靴はサンダルを履いていた。
皆さんはこの情報で犯人のイメージを作ることができるでしょうか?
正確で細かい情報ですが、これらは本質を捉えている情報とはいえません。
まずは最初に必要なのは、大枠の情報。
この場合は犯人が
男性だったのか女性だったのか
背や体形が大きいのか、小さいのかが大枠の情報となり重要です。
まつげが何本あろうが、それを知っても意味がありません。
つまり、これらの細かな情報というのはそれぞれカウントすると1つずつの情報ですが、大枠を捉えた情報と比べその本質に近づくための重要度は全く違うのです。
サンダルを履いていたのは覚えていたけど性別はわからないというのは、テストでは2問中1問正解で半分点数をもらえるかもしれませんが、実践力という部分では0点に近いです。
ソムリエの方であれば、これはワインのテイスティング表現のコメントにも同様にいえることです。
赤系果実と黒系果実の言い回しのニュアンスの違いよりも、
まずは、若々しいワインと熟成感のあるワインの明確な違いなどを理解する必要があります。
細かいテイスティングのコメントよりも、そのワインを一番特徴づけている本質を理解することが最も必要なことです。
つまり、より大枠の基本的な情報から、段階を踏んで、より深い詳細の情報を知っていくということが重要です。
それではなるべく簡潔に大枠を理解するということを踏まえて、トスカーナ州のキァンティワインにまつわるいくつかの情報をピックアップして学んでいきましょう。
1 トスカーナ州の6県でキァンティは作られる。
2 キャンティのワインは基本的に赤である。
3 キァンティには70%以上、サンジョヴェーゼ種を使用しなければならない。
4 キァンティ発祥のオリジナルのエリアはフィレンツェとシエナの間の丘陵地帯で、キァンティ・クラッシコDOCGという銘柄が作られる。
5 キァンティ・クラッシコDOCGの認定地区では、キァンティDOCGを作ることができない。
6 トスカーナ州のブドウ栽培面積の6割以上はサンジョヴェーゼ種である。
7 シエナの町では、7月2日と8月16日にパリオという伝統行事が行われる。
1 トスカーナ州の6県でキァンティは作られる。
この情報では6という数字自体はさほど重要ではなく、まずはトスカーナ州にはいくつの県があるのか、という好奇心を持つことが大事です。
州の中には県があるということは理解しておくことの一つです。
トスカーナ州は10の県からできています。つまりトスカーナ州の大部分でキァンティは生産される、このことを簡潔に理解することが重要です。要はキァンティは生産地域が広い=生産量が多いということです。
2 キャンティのワインは基本的に赤である。
この情報では、キァンティワインになじみのない方は、まず
キァンティは赤ワインという認識を作ることが重要です。
その後、理解ができたら、何故『基本的に』なのかと考えましょう。
キァンティには、ヴィン・サントという甘口ワインが存在します。(1)
正確にはヴィンサント・デル・キァンティというものになりますが、キァンティの名が付く以上、キァンティ地方のワインの一種と理解することが必要です。(2)
この甘口ワインは基本的には白ブドウ、トレッビアーノ種やマルヴァジア種という土着品種から作られます。(3)
黒ブドウのサンジョヴェーゼ種のみを使う『オッキオ・ディ・ペルニーチェ』という種類のヴィン・サントもあります。(4)
また、キァンティ・クラッシコのヴィンサントも同じように生産がありますが、キァンティとキァンティ・クラッシコのヴィンサントはDOCG認定ではなく、ともにDOC銘柄となります。(5)
またキァンティ・クラッシコのシンボルである、黒い雄鶏マークはヴィンサント・デル・キァンティクラッシコに使用することができませんが、キァンティ・クラッシコエリアのDOPオリーブオイルには使用が認められています。(6)
(1)から(6)は上から順に覚えていくべき情報です。
3 キァンティには70%以上、サンジョヴェーゼ種を使用しなければならない。
ここでも、まずはキァンティのベースのブドウ品種はサンジョヴェーゼ種という基本を覚えてください。
その後、ブレンド認可のパーセンテージを記憶していきましょう。
キァンティは70%以上、キァンティ・クラッシコは80%以上となります。
そして理解する上で重要なのはDOC・DOCG銘柄は規定があり、使用許可品種、ブレンド配合のレシピのようなものが存在するということです。
4 キァンティ発祥のオリジナルのエリアはフィレンツェとシエナの間の丘陵地帯で、キァンティ・クラッシコDOCGという銘柄が作られる。
現代のワイン規定では、キァンティとキァンティ・クラッシコの差別化が進んでいます。
発祥のエリアと生産品を保護し、より価値とクオリティーを高めようとする動きがあるからです。
ですので、キァンティの中の1つの種類がキァンティ・クラッシコというよりは、2つの別のDOCGという認識になります。
ヴァルポリチェッラやソアーヴェ、ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエジなどのワイン銘柄のクラッシコ表記とはまた一線を画す規定といえます。
→過去の記事 キァンティとキァンティクラッシコ
5 キァンティ・クラッシコDOCGの認定地区では、キァンティDOCGを作ることができない。
これも、また差別化をするための特別な規定です。キァンティとキァンティ・クラッシコの基本情報を理解してから、こういった細かい詳細を知識として知っておきましょう。
6 トスカーナ州のブドウ栽培面積の6割以上はサンジョヴェーゼ種である。
トスカーナ州はサンジョヴェーゼの土地で、赤ワインが生産を占めているということを理解しましょう。
サンジョヴェーゼ種はトスカーナ州をはじめ、エミリア=ロマーニャ州、ウンブリア州やマルケ州などの中部イタリアを中心に多く栽培されている品種ですが、南のプーリア州でも広く栽培されている品種となります。
7 シエナの町では、7月2日と8月16日にパリオという伝統行事が行われる。
シエナは自分が住んでいる街です。シエナ県には、キァンティ発祥の村々、ガイオーレ・イン・キァンティ、ラッダ・イン・キァンティ、カステリーナ・イン・キァンティがあります。
また伝統行事であるパリオ、7月2日と8月16日という日付は非常に重要ですので必ず覚えましょう。笑
ぜひシエナの歴史を体感しに来てください!
ワインを学んでいくというのは、膨大な情報を記憶していくこととも言えます。
今回の1~7の情報は、この記事を読まれた方それぞれに感じ方、印象が違うと思います。
皆さんご自身の情報の優先順位を考えて、
自分のペースでゆっくり楽しみながらワインを知っていきましょう。
最後に
キァンティというワインは、イタリアのトスカーナ州の赤ワインの銘柄である。
トスカーナ州の代表的なブドウ品種であるサンジョヴェーゼ種が使用され、非常に需要のある人気のワインである。(生産量が多く国内外での市場がある)
甘口のヴィンサントワインもある。
まずはこのことが分かれば初めの一歩が踏み出せたといえますね!
それでは、また次回もお楽しみに!
鈴木暢彦
ホームページ 『トッカ・ア・シエナ』https://www.toccaasiena.com
シエナの鈴木です。
今回は、イタリアでワインを仕事にしている立場の自分から、ワインに興味のある皆さんのお役に立てるようなコラムにしたいと思います。
『イタリア好き』をフォローされてる皆さんの中には、ワインに興味があって勉強したい、もっと知りたい、でも難しい、と思っている方も多いことでしょう。
中にはワイン関係のご職業で、ワインを説明する立場にいる方もいらっしゃるかもしれません。
自分の考えるワインの世界への入門、ワインを理解していくためのコツをお伝えできればと思います。
なるべく簡潔に考える
まず、ワインを学ぶ上で一番重要なことは、その人にとって『わかりやすいかどうか』『理解できるか』です。イタリアワイン。まずは海外の生産品という時点で言語や文化の違いから、少し壁を感じてしまう部分があります。
というのも、当然イタリアワインのラベルはイタリア語で表記されていますし、日本は近年、ワインが一般生活にも馴染む飲み物になってきたとはいえ、イタリアのように家族・親戚がワインを作っているとか、食卓にはいつもワインがある、というような文化ではありません。
そして何より、イタリアワインは全国20州で生産され、多種多様のブドウ品種、製法があることで複雑な体系をもっています。
つまり、なかなか馴染みのないワインを理解していくためには、最初は可能な限りシンプルな情報だけを学ぶべき、ということになります。
そしてどうにか工夫をして、イタリアワインとの間に距離や壁がないように感じることが必要です。
距離や壁を感じた情報というのは、覚え難いですし、仮に覚えられても残念ながらすぐに忘れてしまいます。
物事の輪郭を捉えること
ワインに限ったことではありませんが、最初に理解するべきことというのは物事の輪郭。大枠の最も重要な情報のことです。そのあとにディティールを学ぶという流れが理想です。
それはどういうことか、一つ例えをしましょう。
推理小説や刑事ドラマの中で、とある事件が起こるとします。
犯人を見たという人物が一人。
重要参考人として調書をとり、モンタージュを作成することになりました。
証言内容。
目は二重だった。
鼻はきりっと高い。
Tシャツを着ていた。
靴はサンダルを履いていた。
皆さんはこの情報で犯人のイメージを作ることができるでしょうか?
正確で細かい情報ですが、これらは本質を捉えている情報とはいえません。
まずは最初に必要なのは、大枠の情報。
この場合は犯人が
男性だったのか女性だったのか
背や体形が大きいのか、小さいのかが大枠の情報となり重要です。
まつげが何本あろうが、それを知っても意味がありません。
つまり、これらの細かな情報というのはそれぞれカウントすると1つずつの情報ですが、大枠を捉えた情報と比べその本質に近づくための重要度は全く違うのです。
サンダルを履いていたのは覚えていたけど性別はわからないというのは、テストでは2問中1問正解で半分点数をもらえるかもしれませんが、実践力という部分では0点に近いです。
ソムリエの方であれば、これはワインのテイスティング表現のコメントにも同様にいえることです。
赤系果実と黒系果実の言い回しのニュアンスの違いよりも、
まずは、若々しいワインと熟成感のあるワインの明確な違いなどを理解する必要があります。
細かいテイスティングのコメントよりも、そのワインを一番特徴づけている本質を理解することが最も必要なことです。
つまり、より大枠の基本的な情報から、段階を踏んで、より深い詳細の情報を知っていくということが重要です。
それではなるべく簡潔に大枠を理解するということを踏まえて、トスカーナ州のキァンティワインにまつわるいくつかの情報をピックアップして学んでいきましょう。
1 トスカーナ州の6県でキァンティは作られる。
2 キャンティのワインは基本的に赤である。
3 キァンティには70%以上、サンジョヴェーゼ種を使用しなければならない。
4 キァンティ発祥のオリジナルのエリアはフィレンツェとシエナの間の丘陵地帯で、キァンティ・クラッシコDOCGという銘柄が作られる。
5 キァンティ・クラッシコDOCGの認定地区では、キァンティDOCGを作ることができない。
6 トスカーナ州のブドウ栽培面積の6割以上はサンジョヴェーゼ種である。
7 シエナの町では、7月2日と8月16日にパリオという伝統行事が行われる。
1 トスカーナ州の6県でキァンティは作られる。
この情報では6という数字自体はさほど重要ではなく、まずはトスカーナ州にはいくつの県があるのか、という好奇心を持つことが大事です。
州の中には県があるということは理解しておくことの一つです。
トスカーナ州は10の県からできています。つまりトスカーナ州の大部分でキァンティは生産される、このことを簡潔に理解することが重要です。要はキァンティは生産地域が広い=生産量が多いということです。
2 キャンティのワインは基本的に赤である。
この情報では、キァンティワインになじみのない方は、まず
キァンティは赤ワインという認識を作ることが重要です。
その後、理解ができたら、何故『基本的に』なのかと考えましょう。
キァンティには、ヴィン・サントという甘口ワインが存在します。(1)
正確にはヴィンサント・デル・キァンティというものになりますが、キァンティの名が付く以上、キァンティ地方のワインの一種と理解することが必要です。(2)
この甘口ワインは基本的には白ブドウ、トレッビアーノ種やマルヴァジア種という土着品種から作られます。(3)
黒ブドウのサンジョヴェーゼ種のみを使う『オッキオ・ディ・ペルニーチェ』という種類のヴィン・サントもあります。(4)
また、キァンティ・クラッシコのヴィンサントも同じように生産がありますが、キァンティとキァンティ・クラッシコのヴィンサントはDOCG認定ではなく、ともにDOC銘柄となります。(5)
またキァンティ・クラッシコのシンボルである、黒い雄鶏マークはヴィンサント・デル・キァンティクラッシコに使用することができませんが、キァンティ・クラッシコエリアのDOPオリーブオイルには使用が認められています。(6)
(1)から(6)は上から順に覚えていくべき情報です。
3 キァンティには70%以上、サンジョヴェーゼ種を使用しなければならない。
ここでも、まずはキァンティのベースのブドウ品種はサンジョヴェーゼ種という基本を覚えてください。
その後、ブレンド認可のパーセンテージを記憶していきましょう。
キァンティは70%以上、キァンティ・クラッシコは80%以上となります。
そして理解する上で重要なのはDOC・DOCG銘柄は規定があり、使用許可品種、ブレンド配合のレシピのようなものが存在するということです。
4 キァンティ発祥のオリジナルのエリアはフィレンツェとシエナの間の丘陵地帯で、キァンティ・クラッシコDOCGという銘柄が作られる。
現代のワイン規定では、キァンティとキァンティ・クラッシコの差別化が進んでいます。
発祥のエリアと生産品を保護し、より価値とクオリティーを高めようとする動きがあるからです。
ですので、キァンティの中の1つの種類がキァンティ・クラッシコというよりは、2つの別のDOCGという認識になります。
ヴァルポリチェッラやソアーヴェ、ヴェルディッキオ・デイ・カステッリ・ディ・イエジなどのワイン銘柄のクラッシコ表記とはまた一線を画す規定といえます。
→過去の記事 キァンティとキァンティクラッシコ
5 キァンティ・クラッシコDOCGの認定地区では、キァンティDOCGを作ることができない。
これも、また差別化をするための特別な規定です。キァンティとキァンティ・クラッシコの基本情報を理解してから、こういった細かい詳細を知識として知っておきましょう。
6 トスカーナ州のブドウ栽培面積の6割以上はサンジョヴェーゼ種である。
トスカーナ州はサンジョヴェーゼの土地で、赤ワインが生産を占めているということを理解しましょう。
サンジョヴェーゼ種はトスカーナ州をはじめ、エミリア=ロマーニャ州、ウンブリア州やマルケ州などの中部イタリアを中心に多く栽培されている品種ですが、南のプーリア州でも広く栽培されている品種となります。
7 シエナの町では、7月2日と8月16日にパリオという伝統行事が行われる。
シエナは自分が住んでいる街です。シエナ県には、キァンティ発祥の村々、ガイオーレ・イン・キァンティ、ラッダ・イン・キァンティ、カステリーナ・イン・キァンティがあります。
また伝統行事であるパリオ、7月2日と8月16日という日付は非常に重要ですので必ず覚えましょう。笑
ぜひシエナの歴史を体感しに来てください!
ワインを学んでいくというのは、膨大な情報を記憶していくこととも言えます。
今回の1~7の情報は、この記事を読まれた方それぞれに感じ方、印象が違うと思います。
皆さんご自身の情報の優先順位を考えて、
自分のペースでゆっくり楽しみながらワインを知っていきましょう。
最後に
キァンティというワインは、イタリアのトスカーナ州の赤ワインの銘柄である。
トスカーナ州の代表的なブドウ品種であるサンジョヴェーゼ種が使用され、非常に需要のある人気のワインである。(生産量が多く国内外での市場がある)
甘口のヴィンサントワインもある。
まずはこのことが分かれば初めの一歩が踏み出せたといえますね!
それでは、また次回もお楽しみに!
鈴木暢彦
ホームページ 『トッカ・ア・シエナ』https://www.toccaasiena.com
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