南イタリア風シャビーシックと古道具で三方良し/前編
長く使わせてくれる職人さんが身近なエコ社会
マテーラに暮らして常々感心するのが、不要になった調度品は売買できて、たいがいの物は、修復やお手入れをお願いできる職人さんが健在なことです。例えば50~60年代の家具。とある事情で近年は、修繕やリメイク代を入れても、伊有名ブランドの家具よりは、安く手に入ります。
【売る・買う】
Antiquario アンティーク商
Rigattiere 古物・古道具商
【買う/修繕、お直し】
Ebanista 高級家具職人
Falegname 木製家具職人
Fabbro 鍛冶職人
Tappezziere 椅子張り職人
Corniciaio 額装職人
Restauratore 修復師
工藝品とか芸術品のことか、と思うと全く違いまして、アンティークをこよなく愛する友人から、財産になりそうなものは一切持ってない私まで、懇意にしている職人さん達です。
例えば、鍛冶職人のフィリッポ氏。友人R宅では螺旋階段を、M宅ではウォ―クインクローゼットを、拙宅ではテラスの日よけと食卓を、それぞれアイアンで造作してもらいました。
何か作ってもらおうと思い立ったら、まず近しい人に「いい鍛冶職人知らない?」と尋ねることから始まりますので、フィリッポ氏はみんなの鍛冶職人となっています。笑
嬉しいことには、古い金属製品の研磨とか、塗装にも、当然のように応じてくれるんです。
こんな風に、基本的に新品を受注生産している職人さんが、修復やリメイクも引き受けてくれるので、蚤の市でガタピシの古道具にも躊躇なく手がだせるわけです。
有名アンティーク市 VS 小さな町の蚤の市
イタリアに限らず、ヨーロッパの旅の楽しみの一つに蚤の市があります。その土地で育まれた生活様式や、人々の好みや暮らしぶりを覗くのは楽しいものですよね。本心では北欧やフレンチの洗練に憧れつつ(笑)、いかにも粗雑なマテーラのローカルな古道具を、がぜん見直すことになった1冊のインテリアブックがあります。
気づきはいつもマテーラの外からやってきます。笑
そんな南イタリア風シャビーシックに誘われて、数年来通っているのが、イトリアの谷のアンティーク市です。
毎年、真夏の1週間マルティーナ・フランカで開催されるこの市には、17~19世紀の真正のアンティーク、20世紀~のヴィンテージ、レトロなコレクションアイテム、雑多な古道具などをお目当てに、5万人以上が訪れます。
自然、出展者にも人気とみえ、イタリア各地、スコットランド、スペイン、フランス、イギリスから、70以上の出展があります。
対するマテーラの月一の蚤の市。
規模は小さく、玉石の“石”だらけなのですが、時に“玉”が混じっていて、それが有名なアンティーク市に比べると、かなりお安く手に入ってしまうのが、マテーラのような小さな町の蚤の市のいいところです。
ディープな古物商リガッティエーレ
リガッティエーレとよぶ古物商さんと馴染みになると、古道具ライフが一挙に楽しくなります。アンティーク商とは違いまして、凡庸な古道具も、ガラクタも扱います。主に蚤の市の露天商ですが、倉庫を見せてくれる人もいます。気心が知れれば「いい○○が入ったら連絡して」とお願いしたりできます。マテーラに次世代の古物商がいます。“みんなの”アレッサンドロ。本職はアンティーク家具の修復師で、主にサッシ地区方面から、ひっきりなしに修復の依頼が舞い込んでいるようです。
好きが高じて、ほとんど趣味で始めたのが古物商。修復で肥えてはいてもフレッシュな目で商品をえり好みしているので、アンティーク商に近いです。
仕入れの信条は、オレが好きな物。以上。買い付けはマテーラ市内という狭い守備範囲にしては、いつもおおと思う物があります。
仕入れた物は、SNSやウェブサイトも駆使して、売れる。売れるので、いい物が持ち込まれる。それが呼び水になってまた売れるという具合で、ついにオルタナティブな古道具店を開いてしまいました。
(後編に続く)