マンマの紹介
- ルチア マスティーニ(Lucia Mastini)さん
- サルデーニャ州ヌオーロ県オリエナ市在住
- 得意料理:パーネカラザウ、スピアナータ、(飼っているので)豚を使った料理(サルシッチャ作り、内臓料理、ロースト、煮込みなど)、伝統的な郷土菓子 マンマについて:7歳の頃からパーネ カラザウ(楽譜パン)を作り始め、パン屋での修行を経てパーネ カラザウ工房を夫婦で営む。結婚20年以上経ってやっと授かった今年4歳になる男女の双子のママ。家畜(豚、鶏)を飼い、野菜を作り、ワインのためのブドウやオイルのためのオリーブを育て、ほぼ自給自足の生活をする彼ら。その中心にいるルチアは細い体のどこにそんなにエネルギーがあるのかと思うほど休む姿を見せない働き者。
お料理説明・背景
サルデーニャにはいわゆる冠婚葬祭や季節のイベントごとに作られるお菓子がある。
またそれはその地方地方によっても異なる。オリエナでは昔から結婚式の際には親戚や近所の人たちがいろいろなお菓子を作る習慣があり、今回紹介するアーモンド入りオレンジピール(サルド語でAranciata または Aranzada)もその一つ。もちろん結婚式以外でも作られることもあるが、オリエナの結婚式には欠かせないお菓子だそう。
毎年2月になるとオリエナではアーモンドの花が咲き乱れ、たくさんの実が採れる。オレンジもたいていのお家の庭先にはなっている。またサルデーニャのお菓子は砂糖ではなくハチミツを使うことのほうが多いのは有名どころ。ということで身近な材料で手軽に、しかも簡単に作れるお菓子である。
「結婚式がある、とわかったらオレンジを食べるごとに皮を残していたのかしらね(笑)」
ちなみにオレンジの皮の剥き方にもこだわりがあり、オレンジの上下をカットして皮の何箇所かに上から下へと切り目を入れてその切り目から皮を剥くのだが、途中で切れないように上手に剥かないとダメらしい。短くなった皮は使ってもらえない。なるほどルチアがカットしたオレンジの皮は細長く綺麗に長さが揃っている。
「しかし昔の人はよくこんなお菓子、考えたよね」とルチアと話しているとルチアのご主人のアルビーノが「もしかしたら大昔はお菓子としてではなく、薬として食べられていたんじゃないかな?風邪で喉が痛い時などはオレンジの皮を煮てその香りを吸うと(吸入器のような感じかな?)症状が緩和されると言われていて、小さい頃からよく試していたから、煮た皮自体にも同じ効用があるだろうし、アーモンドとハチミツはどちらも栄養価が高くて、さらにハチミツは抗菌作用があるからね」と口を挟んできた。
アーモンド入りオレンジピールがお菓子としてではなく、薬として作られていた説、ちょっとびっくりだけど、確かに日本でもオレンジの皮は漢方薬で陳皮と呼ばれて使われているし、ハチミツもアーモンドも健康に良いというのは知られているよね……アルビーノの説が確かかどうかはわからないけど、一理あるかも知れない。
作っているあいだ、家中がオレンジのいい香りに包まれ幸せな気分になるだけじゃなく、喉にもいいと言うアランチャータ(アーモンド入りオレンジピール)。
オレンジの皮のほろ苦さが残り、ただ甘いだけではないので甘いものが苦手な人にも人気のお菓子である。
Delizie主宰。大阪でイタリア家庭料理店を経営後、’00年にイタリアに渡りピエモンテを拠点に各地のアグリツーリズモで料理修業。’03年よりサルデーニャに移住し、家庭料理や食材の探求を続ける傍ら”食”をテーマに現地の旅行、視察、料理教室などをコーディネー ト。著書に『家庭で作れるサルデーニャ料理』(河出書房新社)
作り方
- オレンジの皮は白い部分を取り除き、約2mm幅、7~8cmの長さにカットする。(写真a,b 参照)
- アーモンドも細くカットし、オーブンで色がつかないようにローストする。(写真c 参照)
- 沸騰した湯の中に1のオレンジの皮を入れ、再び沸騰してから5分間煮る。(写真d 参照)
- 5分経過したら鍋から引き上げて水気を切る。(写真e 参照)
- 別鍋にハチミツを入れて火にかけ、水気を切ったオレンジの皮も入れる。(写真f 参照)
- 木べらでかき混ぜながらオレンジの皮がハチミツを吸って完全に水分がない状態になるまで煮る。最初は強火、徐々に火を弱めて焦げ付かないように気をつける。(写真g,h 参照)
- 水分が完全になくなれば、2のアーモンドを加え、オレンジピールとよく絡めたら火から下ろす。(写真i 参照)
- 紙カップに7 をトングなどで丸めるようにして入れていく。(写真j 参照)
- 冷めて固まればできあがり。(写真k 参照)