マンマの紹介
- ガブリエッラ ピッツァンティ(Gabriela Pitzianti)さん
- サルデーニャ州南サルデーニャ県ルナマトローナ市在住
- 得意料理:粉物料理(パン、パスタ)など全般・ドルチェ 手先がめちゃくちゃ器用で粉物料理はもちろん、手工芸(編み物、縫い物、刺繍)も得意な得意なスーパーマンマ。
お料理説明・背景
料理名(Simbula Fritta)はサルド語で豚肉のフリットという意味で、サルシッチャを最初に多めの脂でいため揚げするのでこのような料理名なのだそう。昔から豚を飼っている家では11月~12月にかけて豚を屠殺し、その肉を使ってハムやサラミ、サルシッチャなどの保存食を作っている。ガブリエッラマンマの住むマルミッラという地域はカリアリから西に北上したオリスターノあたりまで広がるカンピダーノ平野の真ん中になる。実際、このあたりのことをメディオ カンピダーノ(カンピダーノの中間)とも呼ぶ。
野生のフェンネルが多く生えている地域だからだろうか、カンピダーノ平野のある地域で作られるサルシッチャには必ずフェンネルシードが入っている。ちなみにこのサルシッチャが入ったトマトソースのことはカンピダーノ風パスタソースと呼ぶ。
できたてのサルシッチャを主役に、このあたりの特産物である硬質小麦のセモリナ粉を使い、極々シンプルなレシピで作られるこの料理、昔はサルシッチャにした豚のラードをオリーヴオイルのかわりに使っており、寒い日のエネルギーとなるあたたまる一品だった。ただ今ではラードを使うと重くなるので、オリーヴオイルとラードを半々で使うかオリーヴオイルだけで作ることが多い。
大人にとっても冬の楽しみな料理であったが、昔は子供達にとってもセモリナ粉のポレンタの中に隠れたサルシッチャを引っ張り出して食べるのが楽しみな料理だった。今ではサルシッチャはいつでも食べられるけど。
ポレンタ、と聞くとトウモロコシの粉を用いたものを思い浮かべるが、ここサルデーニャでは トウモロコシは家畜用に作られている場合が多く、食用にされることが少ない。 またトウモロコシの粉を使ったポレンタ作りには時間がかかるがセモリナ粉の場合はそれほど時間がかからない。
できたての軟らかいサルシッチャを使うとおいしいのはもちろんだが、ガブリエッラマンマは
あえてできてからちょっと時間の経ったサルシッチャを使って作ってくれた。
というのは、ガブリエッラマンマのお母さんはできたてのサルシッチャはそのまま食べるのが一番だと言って、この料理には少し硬くなったサルシッチャをいつも使ったそう。「硬くなったサルシッチャでも火を入れると柔からくなるし、時間が経ったものの方が風味も増すから」と。サルシッチャの切り方も、少し大ぶりに切るのがガブリエッラマンマのお母さん流。ガブリエッラマンマの母の味をそのまま再現してくれた。
Delizie主宰。大阪でイタリア家庭料理店を経営後、’00年にイタリアに渡りピエモンテを拠点に各地のアグリツーリズモで料理修業。’03年よりサルデーニャに移住し、家庭料理や食材の探求を続ける傍ら”食”をテーマに現地の旅行、視察、料理教室などをコーディネー ト。著書に『家庭で作れるサルデーニャ料理』(河出書房新社)