トスカーナ州(鈴木暢彦)

2月はトスカーナのワイン試飲会が目白押し!

皆さん、こんにちは!

シエナの鈴木です。さて、今回はイタリアならではの地元のワイン事情を皆さんにお届けしたいと思います。

ワインの国イタリア、それも世界に名の知れたトスカーナ州。

この時期は夏に賑わうアグリトゥーリズモ、ワイナリー観光も鳴りを潜め、1年周期のワインの仕込みもようやくひと段落するので、1年の中でも最も落ち着いた時期となります。


とは言え、仕事がないわけではありません。畑では前年度のブドウの果実を実らせた枝を切り落とす、土壌の手入れなど新しいシーズンを迎えるための準備が必要です。

また、この時期には地元ワイナリーの人々にとって非常に重要なワインイベントがあります。

それは、この2月に行われる『アンテプリマ』と呼ばれる1年で最も大きなワインの試飲イベントです。

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノのアンテプリマ『ベンヴェヌート・ブルネッロ』


トスカーナ中のキァンティが集まるキァンティのアンテプリマ『キァンティ・ラヴァーズ』


シエナ・フィレンツェ間のキァンティ発祥エリアのワイン、キァンティ・クラッシコのアンテプリマ『キァンティ・クラッシコ コレクション』


このイベントは、ワイナリーが自分たちのワインを知ってもらうための重要な機会で、毎年2月の中旬にそれぞれのワインの生産地区にて、主にジャーナリストや飲食従事者らを対象に行われます。(※一般の方が参加可能なアンテプリマもあります。)

ちなみに『アンテプリマ』というのは、映画の世界で言えば試写会のようなもので、オフィシャルには発表がまだ少し先になるものを先行して披露します、ということです。

つまり、ワイナリーのセラーでの仕込み、熟成・貯蔵を終え、その年に出荷する予定の新しいヴィンテージのワインを試飲することができるイベントなのです。

イタリアでは、いわゆる『銘柄』といわれ、原産地の呼称を伴うようなワインというのは、その銘柄ごとに国で定められた厳しい法律を遵守して作られています。

『新しいヴィンテージのワイン』というのは、すなわち、その法律で定められている『生産エリア』や『ブドウ品種』は素(もと)より、義務付けられている『最低貯蔵期間』を満たし、ようやく出荷が認められるワインのことです。

※ヴィンテージ=収穫年 例ブルネッロ・ディ・モンタルチーノのワインは今年2018年に2013年<収穫年>がリリースされます。

フランスのボジョレーの新酒(ヌヴォー)ワイン風に言えば、ようやくその年に『解禁』されるワインということになりますが、ボジョレーヌヴォーの場合は、収穫から約2ヶ月後の11月中旬には出荷ができるフレッシュなワイン。イタリアに限らず一般的な銘柄ワインというのはそれぞれ数ヶ月~数年に及ぶ規定の貯蔵期間があるわけです。

それは、醗酵飲料であり、味わいや香りの成分など、多くの要素から構成されるワインにとって、クオリティーを安定させる上で非常に大切な期間となります。

また、ワイナリーによっては、法律による最低貯蔵期間の規定を満たした上で、さらに長い期間貯蔵をしてから出荷するケースもよくあります。

それでは、地元の代表的な銘柄をご紹介しつつ、今回の2018年度アンテプリマで披露されるヴィンテージを見てみましょう。

 

・キァンティ(Chianti DOCG) 赤ワイン

2018年主な出荷ヴィンテージ 2017年

規定・・収穫年の翌年3月以降に出荷可能

アンテプリマ 2月11日

 

・キァンティ・クラッシコ(Chianti Classico DOCG) 赤ワイン

2018年主な出荷ヴィンテージ 2016年、2015年

規定・・収穫年の翌年10月以降に出荷可能

リゼルヴァタイプ 2015年、2014年

規定・・収穫年の翌年1月から最低24ケ月

グランセレツィオーネタイプ 2014年、2013年

規定・・収穫年の翌年1月から最低30ケ月

アンテプリマ キァンティ・クラッシコ コレクション 2月12日

 

・ヴェルナッチャ・ディ・サンジミニャーノ(Vernaccia di San Gimignano DOCG) 白ワイン

2018年主な出荷ヴィンテージ 2017年

規定・・収穫年の翌年3月以降に出荷可能

リゼルヴァタイプ 2016年

規定・・収穫年の翌年12月以降に出荷可能

アンテプリマ 2月11日および14日

 

・ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノ(Vino Nobile di Montepulciano DOCG) 赤ワイン

2018年主な出荷ヴィンテージ 2015年

規定・・収穫年の翌年1月から最低24ケ月

リゼルヴァタイプ 2014年

規定・・収穫年の翌年1月から最低36ケ月

アンテプリマ 2月13日~15日

 

・ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(Brunello di Montalcino DOCG)赤ワイン

2018年主な出荷ヴィンテージ 2013年

規定・・収穫年から5年目の1月

リゼルヴァタイプ 2012年

規定・・収穫年から6年目の1月

アンテプリマ ベンヴェヌート・ブルネッロ 2月17日~20日

 

以上の重要銘柄のワインは各生産地でアンテプリマが行われます。

トスカーナ州のその他のDOCG・DOCワインなどの生産ワインは合同でフィレンツェのイベント会場にてアンテプリマが行われます。

トスカーナ州の10以上の各DOCワイン組合が集まるアンテプリマ


先日2月11日に、フィレンツェのフォルテッツァ(要塞)で行われたアンテプリマのオープニングには、このトスカーナ州にワイナリー『イル・パラージョ』を所有するミュージシャンのスティングさんと女優のトゥルーディ・スタイラーさんご夫妻が特別ゲストに招かれました。

今年のアンテプリマは、スティングさんとの乾杯とミニライブで開幕!

これには世界中から集まるワインジャーナリストの皆さんも興奮を抑えきれません。


その後、ご夫妻はトスカーナの銘柄ワインの各ブースを周られて、ワインテイスティングを楽しまれました。


ヴァルダルノ・ディ・ソープラDOCのワインブースでご満悦の様子。
それでは、また次回もお楽しみに!

※自分の写真が使われたアンテプリマの記事→こちら笑

鈴木暢彦

ホームページ 『トッカ・ア・シエナ』https://www.toccaasiena.com

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鈴木暢彦(Nobuhiko Suzuki) 2009年渡伊。シエナの国立ワイン文化機関『エノテカ・イタリアーナ』のワインバー・ワインショップにて5年間ソムリエとして勤務。2015年~2018年までシエナ中心街にてイタリア人と共同でワインショップを経営。現地ワイナリーツアーも企画し、一般からプロの方までのアテンドで100軒以上のワイナリーへ訪問。コロナのパンデミック直前に帰国。現在は、代理人“アジェンテ・エンネ”としてイタリア全国の日本未進出ワイナリーのプロモーションサポートを主に行う。今後もイタリアへ渡航予定。 資格:AISソムリエプロフェッショニスタ。 シエナ観光・ワイン情報サイト『トッカ・ア・シエナ』

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  • とんがり屋根のトゥルッリより、プーリアの魅力と旬をお届け!
    2012年より南イタリア・プーリア州在住。伊政府認定ライセンス添乗員。世界遺産アルベロベッロにてとんがり屋根の伝統家屋トゥルッリに暮らす生活を満喫中。会社員をする傍ら、地元産のフレッシュチーズとマンマ直伝の郷土料理を主役にした「南イタリアチーズ&料理教室」を主宰。オリーヴオイルソムリエ&上級チーズテイスターでもあり、最近は伊チーズテイスティング協会にてプーリア州代表の選抜鑑定チームの一員として修業中。他にも、プーリア州の観光や食をライター活動やSNS&ブログにて発信。
  • 食、文化、イベント……プーリア、地元の人々の日々の暮らしってどんなだろう?
    江草昌樹(Masaki Egusa) 2014年より北から南イタリア各所のレストラン、トラットリア、アグリツーリズモで勤務。ミシュラン星付きレストランのスーシェフを経て、現在は、『より自由に、いつまでも経験、挑戦する生活』をモットーに活動中。YouTubeチャンネル『秋田犬サンゴin ITALY』を通しても、イタリアの生活の様子などを発信しています。
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    大西 奈々(Nana Onishi) 2011年よりジェノヴァ在住。音楽院を卒業後、演奏活動の傍らフリーライター、旅行コーディネート、通訳などを務める。演奏会などでリグーリア州各地を周り、それぞれの街の文化や風景に魅了される。ジェノヴァ近郊の街を散策したり、骨董市巡りが休日の楽しみ。 山と海に囲まれたリグーリア州の四季折々の情報をご紹介いたします。
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    小林 もりみ(Morimi Kobayashi) 手間と時間を惜しまず丁寧につくる品々、Craft Foodsを輸入する「カーサ・モリミ」代表、生産者を訪ねながら、イタリアの自然の恵みを日本へ届けている。2008年 イタリア・オリーブオイル・テイスター協会『O.N.A.O.O』(Organizzazione Nazionale Assaggiatori Olio di Oliva)イタリア・インペリアの本校にてオリーブオイル・テイスターの資格取得。2009年スローフード運営の食科学大学( Universita degli Studi di Scienze Gastronomiche)にて『イタリアン・ガストロノミー&ツーリズム』修士課程修了。
    2014年よりピエモンテ州ポレンツォ食科学大学・修士課程非常勤講師(Master in Gastronomy in the World 日本の食文化:日本酒・茶道)。福島の子どもたちのイタリア保養「NPOオルト・デイ・ソーニ」代表。
    Instagram https://www.instagram.com/morimicucinetta/
    Instagram Casa Morimi https://www.instagram.com/casamorimi/
    カーサ・モリミ株式会社  http://www.casamorimi.co.jp/
    NPOオルト・デイ・ソーニ http://www.ortodeisogni.org
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    池田 美幸(Miyuki Ikeda)1986年よりイタリア在住。ミラノに住んでいるが、週末になるとイタリアで一番大きいステルヴィオ国立公園内にある山小屋へ逃避。日本で農学部を卒業。イタリアで手にしたチーズティスター・マエストロ、公認ワインティスターの資格を活かし、通訳、コーディネーターとして活躍中。
  • ミラノより、箸休めにファッションやデザインのお話を。
    田中美貴(Miki Tanaka) 雑誌編集者として出版社勤務後、1998年よりミラノ在住。ファッションを中心に、カルチャー、旅、食、デザイン&インテリアなどの記事を有名紙誌、WEB媒体に寄稿。
  • ヴェネトの美味しいとっておき情報をお届けします。
    ヴェネトおよびフリウリを中心に、通訳、翻訳、地元マンマの料理レッスン及び生産者訪問コーディネイト、そして野菜を中心とする農産品の輸出業などの活動を行う。各種生産者との繋がりをとても大切に、ヴェネト州の驚くほど豊かな食文化を知ってもらうべく、ブログ『パドヴァのとっておき』では料理や季節のおいしい情報を中心に発信するなど活動中。