8つの村の8つの不思議なカーニバル
今となれば、陸の孤島だった歴史が幸いして、バジリカータには「カトリックの祭事と完全に同化した、不思議な原始の祭り」(C.レヴィ 1974)が数多あります。
『キリストはエボリに止りぬ』で1935年のアリアーノ村(マテーラ県)の農民を描いたレヴィが、愛情を込めてそう表現したのは、1974年、友人に連れられてトリカリコ村(マテーラ県)のカーニバルに出かけた折でした。

トリカリコ村のカーニバルの仮面。白衣の雌牛と黒衣の 雄牛の踊り。イタリア人の目にも不思議に映った。 Foto by Rocco Stasi at Italian Wikipedia/写真はWikipediaより。
近年、トリカリコを含めた8村に伝わる8つのカーニバルの仮面の民俗学的価値が、クローズアップされています。
先月の末、マテーラのテレビ局の特集番組で、8つの仮面が一堂に会すると聞きつけ、いそいそと出かけてきました。
8つの中からぐっときた仮面を、わたくしセレクションでご紹介します。

Foto by Celestino SANNA. 土地の方言でルミータ (森でひっそりと暮らす隠遁の修道士) と呼ぶ仮面。手には、先端にナギイカダ(クリスマスや新年に飾る。ヒイラギに似た常緑樹)の枝をくくり付けた杖を持つ。

ワイン片手にとはいかないルミータに、プロセッコを振る舞う“妖精”。誰か分からないよう骨組みをたっぷりのツタで覆ったルミータの仮面は、想像以上に重い。いずれも2014年のカーニバルにて。

鼻が垂れ下がり、大きな角を2本生やしたコルヌートのお面。白衣のアリアーノのコルヌートは、おそらくヤギをかたどっている。レヴィによると「飼料をやらなくても、むき出しの岩石で、棘だらけの雑草を食べて育つヤギは、アリアーノの農夫の唯一の財産だった。」
ぱっと目を引くカーニバルらしい仮面も、まずはヤギなのであり、頭頂部の飾りはオンドリの羽、体に巻き付けたベルト類は、もともとは馬の毛や、荷を引くラバに着けた(騾)馬具を利用していました。すべては家畜がいてこその、このいで立ちなのでした。

番組終了後、8つの仮面のパレードが始まり、マテーラ市民が沸いた。中央のコルヌートが手にしているのは、クーパ・クーパという楽器。
【サン・マウロ・フォルテ村のカンパナッチ祭】
バジリカータのカーニバルシーズンは、1月17日の聖アントニオ・アバーテの日に行われるカンパナッチ祭で、幕が上がります。
黒いマントと白いシャツの男衆が、拍子をつけてカンパナッチョ(牛の首につけるカウベル)を鳴らしながら、村を練り歩きます。

テレビ出演とあってか(?)、サン・マウロ勢は、全身黒に帽子としゃれこんだ若い衆を送り込んできた。足元にあるのがカンパナッチョ。

カンパナッチョの形には、縦長の男型と横広の女型があり、両足の間で鳴らすのが儀礼である。
動物の守護神である聖アントニオ信仰に、牛の放牧が盛んな村ならではの豊作祈願と厄除けが結びついた土着の祭りです。
村のような小集団が連綿とつないできた土着のカーニバルはいったいに、エネルギッシュで騒々しくてひたすら楽しいのに、人の純朴さや健気さに、心を揺さぶられる類の美しさがあります。
そのあたりに「不思議」の秘密があるのかもしれません。
1月15日~21日
トリカリコのカーニバル/Tricarico(マテーラ県)
1月17日
ラヴェッロのカーニバル/Lavello(ポテンツァ県)
1月17日~2月の毎週土曜日
モンテのカーニバル/モンテスカリーソ Montescaglioso(マテーラ県)
2月4日、11日、13日
“森が歩き出す”サトリアーノのカーニバル/Satriano di Lucania(ポテンツァ県)
2月8日~11日
“ウルシュ(オルソ=熊の方言)”とテアーナのカーニバル/Teana(ポテンツァ県)
2月10日、11日
アリアーノとカーニバルの“コルヌート”/Aliano(マテーラ県)
2月11日、13日
チリリアーノの伝統のカーニバル/Cirigliano(マテーラ県)
2月11日~13日
愉しいカーニバルシーズンを!
『キリストはエボリに止りぬ』で1935年のアリアーノ村(マテーラ県)の農民を描いたレヴィが、愛情を込めてそう表現したのは、1974年、友人に連れられてトリカリコ村(マテーラ県)のカーニバルに出かけた折でした。

近年、トリカリコを含めた8村に伝わる8つのカーニバルの仮面の民俗学的価値が、クローズアップされています。
先月の末、マテーラのテレビ局の特集番組で、8つの仮面が一堂に会すると聞きつけ、いそいそと出かけてきました。
8つの村とは? 人口順にご紹介
ラヴェッロ(13,525人)
モンテスカリオーソ(9,940人)
トリカリコ(5,292人)
サトリアーノ・ディ・ルカーニア(2,345人)
サン・マウロ・フォルテ(1,505人)
アリアーノ(975 人)
テアーナ(592人)
チリリアーノ(369 人)
(Istat 2017調査)
試みに村の人口を添えてみましたが、最も小さな村に至っては369人という人々の集団が、それぞれ伝統の仮面を、脈々と受け継いできたことに驚きます。カーニバルの仮面はアイデンティティーの発露だ
マテーラでカーニバルと言えば、トリカリコ、サトリアーノ、サン・マウロの名が知られていますが、不肖、在住14年目で初めて見知った仮面もありました。8つの中からぐっときた仮面を、わたくしセレクションでご紹介します。
【サトリアーノ村の ルミータ 】ツタの枝葉で体を覆っただけの仮面 “ ルミータ ” は、貧しさを象徴してあまりありながら、131人のルミータが森となって、動き出す光景には美しいものがあります。


【アリアーノ村の コルヌート 】コルヌート(「角を生やした」の意)は、農村文化においては、邪気を追い払うとされました。

ぱっと目を引くカーニバルらしい仮面も、まずはヤギなのであり、頭頂部の飾りはオンドリの羽、体に巻き付けたベルト類は、もともとは馬の毛や、荷を引くラバに着けた(騾)馬具を利用していました。すべては家畜がいてこその、このいで立ちなのでした。

【サン・マウロ・フォルテ村のカンパナッチ祭】
バジリカータのカーニバルシーズンは、1月17日の聖アントニオ・アバーテの日に行われるカンパナッチ祭で、幕が上がります。
黒いマントと白いシャツの男衆が、拍子をつけてカンパナッチョ(牛の首につけるカウベル)を鳴らしながら、村を練り歩きます。


動物の守護神である聖アントニオ信仰に、牛の放牧が盛んな村ならではの豊作祈願と厄除けが結びついた土着の祭りです。
村のような小集団が連綿とつないできた土着のカーニバルはいったいに、エネルギッシュで騒々しくてひたすら楽しいのに、人の純朴さや健気さに、心を揺さぶられる類の美しさがあります。
そのあたりに「不思議」の秘密があるのかもしれません。
8村のカーニバル カレンダー2018
カンパナッチ/サン・マウロ・フォルテ San Mauro Forte1月15日~21日
トリカリコのカーニバル/Tricarico(マテーラ県)
1月17日
ラヴェッロのカーニバル/Lavello(ポテンツァ県)
1月17日~2月の毎週土曜日
モンテのカーニバル/モンテスカリーソ Montescaglioso(マテーラ県)
2月4日、11日、13日
“森が歩き出す”サトリアーノのカーニバル/Satriano di Lucania(ポテンツァ県)
2月8日~11日
“ウルシュ(オルソ=熊の方言)”とテアーナのカーニバル/Teana(ポテンツァ県)
2月10日、11日
アリアーノとカーニバルの“コルヌート”/Aliano(マテーラ県)
2月11日、13日
チリリアーノの伝統のカーニバル/Cirigliano(マテーラ県)
2月11日~13日
愉しいカーニバルシーズンを!