お料理説明・背景
プーリアでソラマメと言えばまず採りたてを生で食べるか、乾燥させたものをピューレにするかのどちらか。一つの食材でこれほど違った味わい方ができるのかと驚くほどの振り幅である。これは土に近いところで生きるプーリア人が味わう旬の喜びと農閑期の保存食作りの忍耐の振り幅でもある。
初夏の一時が旬の生はファーヴェ ノヴェッレと呼ばれ、小さめの若いものがサヤごと山のようにテーブルにどどっと出される。それを各自でサヤを割り塩をちょっとつけて口に放り込む。微かな苦味と青い香りが熟成されたカチョカヴァッロと赤ワインによく合う。畑からその日食べる分だけ収穫して採りたてをすぐに食べるのがプーリア流。これはプリモかセコンドの後、デザートの前に出てくる。これを食べなくては夏が始まらない。
一方、プーリア人のソウルフードとも言えるのがピューレディファーヴェ。サヤがカラカラになるまで畑に放置したソラマメを収穫し、茶紫色になった硬い外皮をナイフで切り開くと中から薄黄色の平べったい豆の芯の部分が出てくる。これをジャガイモと一緒にピューレ状になるまでゆでたもの。こちらは保存食なのでいつでも食べられる。レストランなどのメニューにはパスタやリゾットと同じプリモピアットのカテゴリーに入っていることが多いが、プーリア名物の前菜オンパレードの一品として出てくることもある。一見マッシュドポテトのようだか、つけあわせの一品としてではなく、あくまで主役として扱われる。
と言ってもそれだけで供されることはなく必ず数種類のコントルノが用意される。欠かせない定番中の定番はペペローニ フリッティ。これは京野菜の万願寺唐辛子に似た緑色の細長く辛くない唐辛子を、素揚げにしトマト和えにしたもの。素揚げのままで出てくることもある。
もう一つはチコリエッレと呼ばれる西洋タンポポの葉に似た苦味のある野草をゆでたもの。季節的には秋から冬にかけて花が咲く前の葉が柔らかい時期のものが好まれる。初秋には炒めるだけで食べられるオリーヴェドルチェも苦味と甘い香りが絶妙に合う。
その他赤タマネギのスライスやパールオニオンの酢漬けなど酸味も欠かせない。トマトのサラダを一緒に食べても美味しい。
ソラマメ独特のコクと甘みがそれぞれのコントルノの味に引き立てられて、飽きることがない。ソラマメはタンパク質やミネラル分を多く含んでいるし、コントルノも野菜中心で栄養バランスもバッチリ。プーリア人の自慢でもある美味しいオリーヴオイルがたっぷり使われていてしっかり食べた満足感もある。
料理好きなアンナマリアさんにとってたくさんのコントルノを作るのは楽しいことでしかないと言う。キッチンが一番落ち着く場所。一昔前にはホテル学校に進むことを選んだ息子と一緒に家庭料理の店を開くことを真剣に考えたこともある。彼女のファーヴェはジャガイモ多めのチステルニーノ風。子供の頃は週に一度は必ずピューレディファーヴェがテーブルにのった。今は月に1.2度ぐらい家族が集まる日に作る。 冬場は朝からピニャータと呼ばれるテラコッタの壺に仕込んで暖炉の火のそばに置いておく。時間はかかるが準備さえしておけば手はかからず他の仕事をしていても昼には丁度よく出来上がる。コントルノにしても季節ごとの保存食を常備してあれば有り合わせでもテーブル狭しと賑やかなご馳走になる。どこをとっても至極プーリアらしい一品。
プーリア州在住。1999年プーリアと日本の架け橋になるべく(有)ダプーリア設立。2008年子育てのため夫の故郷Valle d’Itriaへ移住。スローライフを実践しながらプーリア仲間増殖活動中。
材料
プレ ディ ファーヴェ(4人分)
・乾燥ソラマメ | 250g | |
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・ジャガイモ | 200g | |
・塩 | 大1 | |
・エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイル | 適量 | |
・パン | 適量 | お好みで |
コントルノ #1 ペペローニ フリッティ
・甘長青唐辛子 | 200g | |
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・オリーヴオイル | 100cc | |
・チェリートマト | 約10個 | |
・塩 | 小1 |
コントルノ #2 ズッキーネ レッセ
・ズッキーネ | 3本 | |
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・エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイル | 適量 | |
・塩 | 適量 | |
・ミントの葉 | お好みで |
コントルノ #3 チコリエッレ レッセ
・チコリエッレ | 一束 | 小松菜やからし菜などの青菜で代用可 |
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・エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイル | 適量 | |
・塩 | 適量 |
コントルノ #4 インサラータディチポッレ ロッセ
・赤玉ねぎ | 3個 | |
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・エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイル | 適量 | |
・塩 | 適量 | |
・白ワインヴィネガー | 適宜 |
コントルノ #5 オリーヴェドルチェのソテー
・オリーヴェドルチェ | 500g | |
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・エクストラ・ヴァージン・オリーヴオイル | 少々 | |
・ニンニク | 1片 | |
・ローリエ | 1枚 |
作り方
プレ ディ ファーヴェの下ごしらえ
- 乾燥ソラマメは2時間ほど水に浸す。(写真a 参照)
- ジャガイモは皮をむき一口サイズの乱切りにする。
作り方
- 鍋にファーヴェとジャガイモを入れ半分ぐらいの高さまで水を入れる。(写真b 参照)
- 沸騰して白い泡が湧き上がってきたらお湯を捨てる。(写真c,d 参照)
- ファーヴェとじゃがいもを鍋に戻して塩を加え、もう一度ひたひたまで水を入れて中火で形がなくなるぐらいまで1時間ほど煮る。(写真e 参照)
- 大きめのボールに移し木製の棒で円を描くように力強く混ぜる。(写真f 参照)
- 滑らかになったらオリーヴオイルをたっぷり加えさらに混ぜる。(写真g 参照)
- お好みでパンを一口大にちぎって加える。(写真h 参照)
コントルノ #1 ペペローニ フリッティ(Peperoni fritti)
- 鍋にオリーヴオイルをたっぷりめに入れる。(写真i 参照)
- ペペローニを入れて蓋をして中火で蒸し煮にする。(写真j 参照)
- ペペローニがしんなりしたら取り出し、二つに切ったチェリートマトを入れトマトが柔らかくなるまで煮る。(写真k,l 参照)
- ペペローニをトマトに加え、塩を加えて和えるように弱火で5分ほど煮る。(写真m 参照)
コントルノ #2 ズッキーネ レッセ(Zucchine lesse)
- ズッキーネを5mm程度の半月切りにして塩ゆでする。(写真n 参照)
- オリーヴオイルを回しかける。(写真o 参照)
- ミントの葉をお好み量ちらす。(写真p 参照)
コントルノ #3 チコリエッレ レッセ(Cicorielle lesse)
- チコリエッレは水で洗い下処理をしておく。(写真q 参照)
- 苦みがあるため、たっぷりのお湯で10分ほど柔らかめに塩ゆでにする。
- 冷めたら絞ってオリーブオイルで和える。(写真r 参照)
コントルノ #4 インサラータディチポッレ ロッセ(Insalat di cipolle rosse)
- 生の赤タマネギを薄めに輪切りにする。(写真s 参照)
- 塩をして、白ワインヴィネガー、オリーヴオイルをお好み量回しかける。(写真t 参照)
コントルノ #5 オリーヴェドルチェのソテー(Olive dolce soffitto)
- 少量のオリーヴオイルにニンニク、ローリエの香りを移しオリーヴェドルチェを炒め、最後に塩で味をととのえる。(写真u 参照)