お料理説明・背景
今回紹介するレシピは、夏を過ぎ、草を食むようになった子ヤギ肉を使った晩夏~晩秋にかけての一品。必須食材であるペペローニも晩秋までが収穫期。ヤギ肉は冬にかけてさらに肉に臭みが出るので、晩秋以降この調理方法は使われない。この時期だけの季節限定の一品だ。
カストロヴィラリはコゼンツァ県北部の村の名前。コゼンツァ県では、ペペローニを揚げて他の食材と調理すると大抵「カストロヴィラリ風」の名を付ける。例えば、塩鱈を揚げペペローニと合わせた料理も「塩鱈のカストロヴィラリ風」という塩梅。
厳しい自然と農耕地の少なさからペペローニしか耕せない場所というイメージがあったためか、ペペローニが入っていたら何でもかんでも「カストロヴィラリ風」と名付けた、という説もあるほど。
さらには、なんだか貧しい料理=「カストロヴィラリ風」としたという説もあるほど貧しかったコゼンツァ県北部山間地域。この料理は地域を象徴する一品で、使われる食材も最低限である。
コゼンツァ北部山間部は農耕地がほぼ無いので羊の飼育も難しく、現在でもヤギの飼育が盛ん。(近年は、酪農飼料の発達により羊の飼育も行われている)賢いヤギの放牧は常に牧童と牧羊犬の同行が必要で、道路横断中のヤギが原因の「ヤギ渋滞」もこの辺りでは普通の光景。
貴重なヤギ肉を使う料理なので、数十年前までのカラブリア州北部山村地域では結婚式や特別なお祝いの日などのみに登場する、特別な特別なごちそうだった。 通常、こちらも特産のジャガイモの副菜を添える。
マリアさんは農家の嫁として義両親・ご主人を助けつつ、地域で唯一の美容師として長年活躍。ご主人が収穫してくる農作物で食卓を支えて30年。モダンなお料理は苦手だけれど、この地域の郷土料理を作らせたらTOP3に入る、と近隣の村でも評判の料理上手。
私たちから見れば「普通」のキッチンと、農作物処理用の土間キッチンを持ち使い分けていて、自家製の野菜、ご主人が丹精込めた豚やヤギ、そしてブドウから作っている自家製ワインをこよなく愛する。お食事の準備が整った頃にお姑さんが「今日のご飯の出来」を確認に来るのも30年来の毎日の光景。
舅・姑の文句を言いながらも仲がいい、山村の毎日の光景を垣間見ることが出来た。
ヤギを飼うことが一般的でなくなった現在、羊肉より高価なヤギ肉であることを証明するため、肉屋はヤギのしっぽの毛を残したままで販売する。
※今回は、マリアさんのご主人が丹精込めた子ヤギ肉を使っています。
カラブリア州コゼンツァ市在住のコーディネーター・通訳・翻訳。スキーと食べ物を愛するAB型。一応ソムリエ。カラブリア州の毎日の生活は「カラブリア.com」にて紹介中。
作り方
- へたを落とし、半分に切って種を除いたペペローニを大き目のフライパンにたっぷりのオリーヴオイルで軽く焼く。焼きあがったら取り出しておく。(写真a 参照)
- フライパンに残ったオリーヴオイルに、さらにオリーヴオイル、ニンニクを足して火にかけ、香りが出てきたらヤギ肉を加える(写真b 参照)
- 中火~強火で表面にしっかりと焼き色を付けたら、赤ワインを加える。(写真c 参照)
- アルコール分が飛んだら、軽く塩をする。取り分けておいたペペローニと水を加える。(お肉の半分ぐらいが水分に浸っている程度になるよう水分量を調節する)(写真d 参照)
- 蓋をして、1.5~2時間程度煮詰める。(写真e 参照)
- 煮詰める作業が終了する前にペペローニを取り出す。(焦げ付き予防の為)水分はほぼ全て飛び、フライパンに残った油で再び肉を焼けるぐらいになるまで加熱調理する。(写真f 参照)
- 最後にペペローニを戻し、全体をざっと混ぜながら3分ほど調理する。焦げやすいので注意する。(写真g 参照)
- フライパンのまま、もしくは大皿でサーブする。
お料理ポイント
「オリーヴオイルはとにかくたっぷり使う。フライパンの底がオリーヴオイルでしっかりと覆われている程度の量が適量よ。そして お肉に焼き色を付ける際、肉が重ならない大きめのフライパンを選んでね。ヤギ肉の香りが気になる場合は、焼き色を付けてた際の油を捨て、新たにオリーヴオイルを引き直して調理を再開すると香りが和らぐわよ。時間が無い時は最初にペペローニを焼き上げる工程を省略し、肉に軽く焼き色を付けてから生のペペローニを加える。この際、ペペローニが焦げやすいので注意してね。
お好みでトマト2個程度を串切りにし、焼き上げたペペローニをフライパンに戻す際に一緒に入れてもOK。写真は赤ペペローネで作ったバージョンなので華やかだけど、緑の場合は出来上がりの色合いが少し華やかになるわ」