お料理説明・背景
トロペア(Tropea)の特産品は、生でもおいしくいただける赤タマネギ(Cipolla rossa di Tropea IGP)。ギリシャ人・フェニキア人によって栽培方法が伝えられ、2000年以上前からこの地域で生育されていた品種です。皮を剥く作業だけでも手が紫色になってしまうほどの色素量があるこの品種、トロペア周辺の特殊な気候が栽培に適しており、他地域で作られる赤タマネギにはこの豊富な色素と甘味・旨味がありません。
すでに1世紀には『博物誌』の著者である大プリニウスによってこのタマネギの薬用が述べられていて、古くからヨーロッパ各地へ出荷されていたことが伺えます。現在では、全世界へ向けて出荷されているカラブリア州を代表する食材となりました。トロペアの街を散策すると、赤タマネギが束ねられ、軒先に吊り下げられた独特の光景を目にすることができます。
出荷に際し、現在のトロペア駅近くに集積ポイントがあったことから「トロペアの赤タマネギ」の名前が付いたと言われています。現在は生のままサラダや煮込んでジャム状に、他の野菜と炒めて副菜に、と色々な使い方をされますが、今回はこの地に古くから伝わる農家の「貧しい料理」のうちの1つをご紹介します。
トロペア近郊地域の農家が、収穫したタマネギ、レーズン、オリーヴオイルなどに加え、台所にある乾燥してしまったパンなどを使い工夫して作り出したと言われるこのレシピ。今では購入したパスタ(スパゲッティなどがおススメ)を使って作られることが多くなりましたが、農家が貧しかった当時を再現するため、アンナマンマが作るのはトロペア近郊でフィレイと呼ばれる郷土手打ちパスタと合わせた元祖レシピ。小麦粉ももちろん、自家製です。
今回はパスタ作りが大好きな娘さんも一緒にフィレイ作りを手伝います。
フィレイはカラブリア州手打ちパスタの「フジッリ(マッケローニカラブレージとも)」のトロペア周辺での呼び名。パスタの成形にカラブリア州北部では鉄の棒や木を削って作った棒を使いますが、トロペア周辺では葦の茎を乾燥させたものを利用します。成形時にパスタの長さを調節すればどんなソースにも合わせられる万能パスタ。さらに完全に乾燥させれば冷凍できるので、時間のある時に大量に作っておくのがアンナマンマ流。
アンナさんは農家の娘として幼少期より台所仕事を手伝い、2児の母となった現在は一族の台所仕事の采配を任されている料理上手。トロペア周辺、カラブリア州中西部の郷土料理に詳しい。
野菜作りだけでなく養蜂も養豚もされている”The・農家”のアンナさんのお父様曰く「ウチのアンナのフィレイはこの村で1番」とのこと。
フィレイにおいても一目置かれるアンナマンマからのアドバイス、「フィレイを魚介のソースに合わせるときは、短めに作ってね!」
カラブリア州コゼンツァ市在住のコーディネーター・通訳・翻訳。スキーと食べ物を愛するAB型。一応ソムリエ。カラブリア州の毎日の生活は「カラブリア.com」にて紹介中。
作り方
- 小麦粉に少しずつ水を加える。少しパサつく程度まで水を加えたら、捏ねる。少しパサつくかな?ぐらいの固さが目安。耳たぶの柔らかさまでになってしまうと柔らかすぎる。(写真a 参照)
- 時間があれば15分ほど生地を休ませ、その後ひも状に伸ばして15㎝くらいの長さに切る。(写真b 参照)
- 棒に巻き付け、手のひらで優しく伸ばす。(写真c,d 参照)
- できあがったフィレイは軽く打ち粉をして休ませておく。(前日に作っておいても良い)(写真e 参照)
パスタを作る
作り方
- 赤タマネギは薄切りにする。(写真f 参照)
- フライパンにオリーヴオイル(分量外・大さじ2程度)、赤タマネギを入れ、弱火~中火で軽くかき混ぜる。松の実、レーズンを加えたら塩(2つまみ強)をする。(写真g 参照)
- タマネギから出る水分で全体がしんなりとするまで十分に炒める。(写真h 参照)
- 別のフライパンにパン粉を入れ、タイム、イタリアンパセリ、バジルをみじん切りにして加えて火にかける。バジルは飾り用に少し残しておく。(写真i 参照)
- 4に上からオリーヴオイルを回しかけ、じっくり焼き上げる。(写真j 参照)
- 全体が茶色くなったら火を止めておく。(写真k 参照)
- たっぷりのお湯に塩を入れ、パスタをゆでる。(写真l 参照)
- ゆであがったパスタをタマネギソースのフライパンに加える。パスタから出る水気と一緒にソースを合わせ、全体がなじむように数回混ぜる。(写真m 参照)
- お皿に盛ってから、好みの量のパン粉とチーズをふりかけていただく。(写真n 参照)