お料理説明・背景
パルマは北イタリアのエミリア・ロマーニャ州に位置する。パルミジャーノ・レッジャーノやプロシュット・ディ・パルマ(パルマハム)の産地としても知られているが、その他にもサラミ、クラテッロ、ポルチーニ茸、と美食の宝庫で、2016年に食の街として世界遺産に指定された。
パルマの伝統料理といえば、まず思いつくのはトルテッリ。パルマ料理のレストランで、トルテッリのないところはまずない。
トルテッリとは、中に詰め物の入ったパスタで、別の街ではラビオリとも呼ばれる。パルマで食べられるトルテッリの詰め物は基本的に、リコッタチーズとエルベッタというホウレン草に似た野菜の入ったもの、カボチャ、そしてポテトの3種類。その中でもリコッタチーズとエルベッタの入っているトルテッリ・ディ・エルベッタは、デリケートでクリーミーなのにしつこくなく、季節に関わらずパルマの食卓には頻繁に登場する家庭料理の一つでもある。
6月24日は、聖ジョバンニの日。その前日の夜、パルマではトルテッリ・ディ・エルベッタを食べて、24日に朝露を浴びると幸せになれるという言い伝えがある。パルマや、近郊の多くの街では「トルテッラータ」と呼ばれるトルテッリを食べる会が開かれる。街のマンマたちが集まってトルテッリを作り、屋外で大勢でいただく。普段はリコッタチーズを作らないパルミジャーノ・レッジャーノの工場でも6月23日だけは特別にパルミジャーノ・レッジャーノチーズ作りで残った乳清からリコッタチーズを作る。その日ばかりは生産量が消費に間に合わないのだ。パルマ人で聖ジョバンニにトルテッリを食べない人はいないのではないかと思わせられるほどパルマはトルテッリ一色となる。
毎年地元のパルマ新聞で開催場所の情報が掲載されるのだが、今年はパルマ市内で14カ所、パルマ近郊では46カ所でトルテッラータが開催されていた。
なぜ6月23日なのか。何となく習慣となっているのだが、由来はある。13世紀、パルマとクレモナの関係は悪く、武器を持っての争いが頻繁に起こっていた。ポー川添いのカザルマジョーレという街での戦いの際、パルマの人々が勝利を祈り大聖堂の周りに集まっていたところへ、埃まみれにとなったパルマの戦士が勝利を伝えに戻って来た。それが1210年6月24日の夜明け前であった。その知らせに、パルマ中でトルテッリ・ディ・エルベッタを作って祝ったという。
今回料理を紹介してくれるマリアンジェラさんは、パルマ郊外のヴィコメロという小さな街で2人のお子さんを育てたマンマ。ご主人が狩りで獲ったイノシシやウサギも料理したり、豚からサラミやハムなどを作ったり、野菜も自家栽培したりと、最近では珍しくなったほぼ自給自足の生活をしている。
もうすぐお嫁に行く娘さんのためにウエディングドレス作りをしているという忙しい中、トルテッリを作っていただいた。
1996年よりパルマ在住。イタリアの食に魅せられ、ワイン、ハム、チーズ等のイタリア食材を勉強中。地元で築いた人脈を生かし、一般の方からメディア向けまで、お料理教室、工場見学等のコーディネートをしている。 AISソムリエ。APRパルミジャーノ・レッジャーノチーズテイスター。ONAFチーズ鑑定士。イタリアジャーナリスト協会会員。 http://akemi-nishimura.wix.com/sapore-italiano
作り方
- エルベッタをミキサーにかけ、みじん切りにする。(写真a 参照)
- 詰め物の材料を全てボールに入れ、よく混ぜる。(写真b 参照)
詰め物
パスタ生地
- 台の上に小麦粉をふるい、中央にくぼみを作って卵を入れる。(写真c 参照)
- フォークで卵を解きながら、外の小麦粉を加えて、混ぜていく。
- 艶っぽく耳たぶ程度のかたさになるまでしっかり練ったら、器に入れ、乾燥しないように蓋をして30分程寝かせる。(写真d,e 参照)
- 生地を伸ばしやすいサイズに分割し、綿棒で巻きつけながら薄く伸ばす。(写真f 参照)
- 生地を7~8cm幅に切り、2cm間隔に詰め物をのせていく。(写真g 参照)
- 縦半分に上から生地を重ねて、空気が入らないように指で押さえて閉じていく。(写真h,i 参照)
- カッターで長方形となるようにカットし、布巾の上にのせる。(写真j 参照)
- 鍋にお湯を沸かし、塩(分量外)を入れ、沸騰したらトルテッリを入れてゆでる。トルテッリを入れたらふつふつ煮え上がらないように少し火を弱くする。(写真k 参照)
- 約12分、好みの硬さにゆでたら取り上げる。
- トルテッリを皿に並べ、パルミジャーノ・レッジャーノと溶かしバターをかけていただく。(先にパルミジャーノ・レッジャーノをかけてから溶かしバターをかけるとバターがトルテッリに絡むのでおすすめ!)