マンマのレシピ

マンマの紹介

  • フランチェスカ・グエッラ(Francesca Guerra)さん
  • マルケ州ウルバーニア町
  • 得意料理:クロストロ、手打ちパスタ全般

お料理説明・背景

「モッツアレッラを使った揚げ物というと、ローマやナポリを思い浮かべる人も多いでしょうが、中部イタリアもアペニン山脈地帯ではおいしいバッファローのモッツァレッラが生産されているのよ。このレシピもローマ以南が発祥で、いわゆるこの地方の郷土料理とはまた違うのだけれど、古代ローマ人の胃袋を支える穀物の農耕地と言われていたこの地域にもこうしてレシピが伝わってきて広まった、いわゆるアレンジ版みたいなものね」と言うマンマフランチェスカ。

彼女の住むここウルバーニアもマルケ州とウンブリア州の県境近くにあり、このレシピを紹介してくれたフランチェスカも、昔ながらのご馳走として、この揚げ物には思い出があると語ってくれた。彼女のお姑さんの時代は第二次世界大戦まっさかり。かくいうウルバーニアの町にも爆撃があり、旧市街地はほとんど全滅したという。「そんな戦後の時代は揚げ物は大変なご馳走だったわ。私はそういう時代に生きた人たちの食について学びたくて、お姑さんをはじめ、地元のマンマたちに沢山のレシピを学び、ノートに書き留めていったわ。その1つがこのレシピね。ここマルケ州北部でも、こういう贅沢なレシピは社会的地位の高い人たちの食卓で出されたり、結婚式などの特別な機会に振舞われていたのよ。今のように揚げ物が庶民のものとなったのはずいぶん後のこと」としみじみ。

「でも今は誰でも食べられるストリートフードのようなもの!イタリア語でCarrozza(荷台の意、レシピではパンを意味する)に乗ったモッツァレッラという意味なの!モッツァレッラが手に入らない時はフレッシュなペコリーノチーズを入れたりね。揚げ物といえば南マルケでは野菜、肉、甘いクリームのフライが渾然一体となって祝日のテーブルに出されたりもするし、セージのフライも大好物という人は多いわ。これはセージのさわやかな香りとモッツァレッラのコクが2枚のパンに閉じこめられて、揚げ物でもしつこさが感じられないから日本人の口にも合うと思うわよ!」と、普段は伝統を重んじるコテコテの郷土料理を支持する彼女が、ほかの地域から伝わったレシピをアレンジしたものをそう言って推薦してくれたので、これはおいしいに違いないと私も直感!

そして実際に揚げたてをほおばると、セージの香りが口に広がり、外はサクサク、中はクリーミーでなんとも美味。現代の食の豊かさに感謝しつつ、素直にみんなに愛されるおいしさだな~、と思える1品でした。
また、このレシピの応用編として、モッツァッレッラとアンチョビを一緒に入れたものも塩味のパンチが効いていて、ビールが進むおいしいおつまみになるので、是非一緒に作ってみて!

レポート:林 由紀子(Yukiko Hayashi)
マルケ州、ウルビーノ近郊のカーイ(Cagli)在住。1999年渡伊、ファエンツァの国立美術陶芸学校の陶彫刻科を卒業後、現代美術アーティストBertozzi&Casoniのもとでアシスタントとして12年に渡ってコラボする。2003年にマルケ在住のイタリア人と結婚したのをきっかけに、マルケ州の郷土料理や工芸、美術文化に強く惹かれ、自らも陶芸家として活動する中、ウルビーノを中心とするマルケ北部や県境近郊の食文化、美術工芸文化を発信する(ラファエロの丘から)を立ち上げ、現地アテンドや料理教室、工芸体験などのオーガナイスや、ウルビーノを紹介する記事などを執筆。生産者や工芸家との友人の輪を生かし、食文化とアートが一体となる現地のイベントに進んで参加している。一児の母としても、マンマの料理の腕を上げようと奮闘中! ホームページ:「ラファエロの丘から」
フェイスブックページ:「フェイスブック ラファエロの丘から 」

材料

モッツァレッラとセージの挟み揚げ(4人分)

・サンドイッチ用の薄切りの角食パン4枚耳がかたいものは切る
・パン粉300~400g
・バッファローのモッツァレッラチーズ1~2玉1玉120~130gぐらいのものの場合
・卵2個
・牛乳120ml
・セージ1個の挟み揚げにつき葉を1~2枚
・塩ひとつまみ

作り方

  1. モッツァレッラチーズは水をきり、1cmくらいの厚さにスライスする。セージは洗っておく。
  2. 食パンは三角になるように2枚重ねて半分または4分の1に組にして切る。(日本の食パンはイタリアのものより大きいので、写真では半分に切っているが、4分の1に切るのがおすすめ)(写真a 参照)
  3. 組にして切ったパンを開き、底になるほうのすべてのパンにスライスしたモッツァレッラを乗せ、セージの葉も乗せる。セージが好きな人は2枚のせるといい。(写真b 参照)
  4. 組になっていたもう一方のパンを乗せ、周りのふちをぎゅっと手で押さえ、上のパンと下のパンをくっつけるように閉じる。耳が固くてくっつきにくい時は耳を切る。(写真c,d 参照)
  5. ボウルに卵を割り入れ、フォークで軽くほぐす。さらに牛乳と塩ひとつまみを加えてよく混ぜる。(写真e 参照)
  6. モッツァレッラとセージを挟んだパンを卵液に一つずつ素早く潜らせて、そのままバットに入れたパン粉のほうに移す。押さえながらしっかりパン粉をつける。ふちもしっかり閉じているか確認しながら1つずつこの作業を繰り返す。(写真f,g 参照)
  7. 深めのフライパンに揚げ油を入れ、180℃に熱して⑦を4個くらいずつキツネ色になるまで揚げる。好みで半分に切り、彩りにサラダなどを添えてアツアツをいただく。(写真h,i 参照)
  • a. 食パンを2枚重ねて切る
  • b. モッツァレッラとセージをのせる
  • c. パンの周りを押さえる
  • d. 上のパンと下のパンをくっつけるように全て閉じる
  • e. 卵液を作る
  • f. 卵液に一つずつ潜らせる
  • g.しっかりパン粉をつける
  • h. 180℃に熱した油で揚げる
  • i. キツネ色になったらできあがり

お料理ポイント

モッツァレッラとセージを挟んだパンを溶き卵と牛乳の液に通すときは、素早くしないと水分を吸いすぎてぶよぶよになってしまうから気をつけてね!それからモッツァレッラを詰めすぎても揚げるときに飛び出てきたりするから要注意よ。最後に必ずアツアツを食べること!