お料理説明・背景
シチリアの春は桜のような淡いピンク色のアーモンドの花と共に訪れる。
そもそもシチリアとアーモンドは切っても切れない関係である。アーモンドは、生で食べたり、お菓子に入れたり、ペーストにしてパスタと和えたり、肉と一緒に煮込んだりと、日常的に使われる食材でもある。子供はアーモンドミルクやアーモンドプリンが大好きだし、大人ならアーモンドのリキュールを食後に頂いたりもする。余談だが、日本人の切れ長の目はアーモンド型の目と言われるいる。
地域や季節のお菓子にはアーモンドプードルを使った、パスタ ディ マンドルラが必ずと言って良いほどに登場する。毎年2月にギリシア神殿の谷で有名なアグリジェントでは、アーモンドのお花の下で踊るアーモンド祭が開催される。
春に桜色の花が咲き、次第に黄緑の葉になり、初夏に緑色の実がなる。8月には実を収穫し、干す作業が行われる。昔はアーモンド畑の横に干されたアーモンドと監視人が居眠りをしている光景がよく見れたそうだ。
アーモンドの実は硬い外皮、中に茶色の甘皮が付いていて、硬い外皮は燻製用や窯用に使われ、甘皮は肥料として使われ無駄がないそう。基本的に市場などで売られている物は生アーモンドで、自分でフライパンやオーブンで炒るのだが、料理にもお菓子にも使えるので冷凍庫で保存しておくと傷まずに長持ちする。
今回紹介するレシピはカジキマグロをオレンジでマリネし、たっぷりのアーモンドを衣にした、シチリアの海と大地の両方を味わえる一品。
エトナ山の麓で育ったサングイネッロ(ブラッドオレンジ)は1月以降に実が熟して来ると、赤く色付く。そして、オレンジ色が徐々に赤くなり、5月頃には真っ赤になる。一説では、エトナ山の火山のミネラル分で赤くなったとも言われているブラッドオレンジは、こんなにも甘いのかと思うほど、色も味も濃厚で香りも豊かだ。
そして近海で獲れるカジキマグロは、身が柔らかく、クセがなく、シチリアでは一年中頻繁に食べられる魚だ。本マグロよりも高価なことに驚くが、新鮮なカジキマグロはカルパッチョやマリネなど生で食べても臭みがなく実においしい。カジキが手に入らなければ、シチリア第2の魚、マグロ(バチマグロやキハダマグロ)で代用しても美味しいだろう。
アーモンドを料理でいただく。意外性がおもしろくおいしい。
また改めてシチリアの大地の恵みに感謝したい。
シラク―サ在住。 シチリア料理レストラン「la cambusa(ラ・カンブーサ)」のオーナー兼、シチリアの旅行、料理、食材などのコーディネーター。
作り方
- 生のアーモンドを180℃のオーブンで5分程軽くローストする。
- ローストしたアーモンドをフードプロセッサーに入れ、細かく砕く。なければビニールに入れて綿棒などで叩き粒にする。(写真a 参照)
- オレンジの皮1個分をすりおろし、砕いたアーモンドに混ぜる。(写真b 参照)
下ごしらえ
作り方
- カジキマグロを1cmぐらいの厚さに切り、軽く塩、コショウをしておく。(写真c 参照)
- 皮をすりおろしたオレンジともう一個のオレンジを半分に切りジューサーなどで搾る。(写真d 参照)
- 搾ったオレンジの汁にオリーヴオイル大さじ3程と塩、コショウを入れ混ぜる。
- 3でできた汁にカジキマグロをくぐらせ、約1分程浸し、細かく砕いたアーモンドをまぶしオーブンの天板の上に並べる。(写真e.f.g 参照)
- 鉄板に並べたカジキマグロに、オレンジの風味をつけるため、つけ汁の残りをかけ、アーモンドをのせる。(写真h 参照)
- 180℃のオーブンで15分焼く。(写真i,j 参照)