お料理説明・背景
「私のマンマの手作りカンノーロは絶品なのよー!!」
と聞くこと早数年。 一度も食べた事はなかったが、長年の希望がようやく叶う時がきた。私のレストランで働いてくれているソムリエのエマヌエラのマンマロザリアは6人の子供を育て、今は7人の孫がいるパワフルマンマ。
「私が若い頃は、お姑さんが手作りにうるさい人だったし、子沢山で経済的に余裕が無かったから、パン、パスタ、ドルチェとなんでも手作りしていたのよ。朝からクッキー焼いて、パン捏ねて。今考えるとよくやってわよね~。でもそのお陰でこんなにおいしいカンノーロができるようになったんだからよしとしましょう。 あ、その時の私は今よりも30キロ痩せててそれはスリムだったんだから。次回撮影は半年前に言ってくれたら、ダイエットするわぁ〜」と豪快に笑い、皆も一緒に大笑い。
イタリアの大家族のマンマらしく、豪快で明るく優しくて頼りになり、そしておしゃべり。シチリアの太陽のような存在だ。
そんなマンマのカンノーロはおいしいだろうと思っていたが、早く食べておけば良かったと後悔するほど、絶品だった。「秘密は生地の捏ね方。しっかり捏ねてね。本物のカンノーロは皮に気泡が出来ないとダメよ。この気泡がサクサクにしてくれるんだからね。それと、手で食べること。 潰しちゃダメよ。かぶりつきなさい」と丁寧に教えてくれた。バールやパスティッチェリアでも手作りをしない今日。
やはり手作りのカンノーロはひと味もふた味も違う。 これからカンノーロを見る度にあの豪快なロザリアマンマを思い出すのだろう。
シチリア菓子の代表とも言えるカンノーロ。
今では一年中食べられるお菓子だが、本来はカルネヴァーレ(謝肉祭)に豊穣のシンボルとして食べられるお菓子だ。カルネヴァーレの時期はクリームに使うリコッタの羊乳は脂肪分が増え、コクと旨みが増すからという理由もあるそうだ。
カンノーロの意味は”小さな筒”で、ラテン語のcanna(カンナ)を語源として竹やサトウキビの茎の意味がある。今現在はカンノーロ筒がステンレス製で売られているが、昔はシチリアに育つサトウキビの茎が多く利用されていた。外はパリパリ、中は濃厚な羊のリコッタクリームがカンノーロの基本だが、チョコチップ入り、果物の砂糖漬け入り、ピスタチオクリームなど地方やお店によって色々なバリエーションがある。
そしてこのカンノーロを世界的に有名にしたのは、シチリアが舞台のマフィア映画 『ゴットファーザー』。主人公のマフィアのコルレオーネ一族が裏切り者を殺害するシーンで妻からカンノーロを買ってくるよう頼まれたり 、「銃は置いていけ。カノーリは持ってきてくれ」という名台詞があったり、続編ではカンノーロで毒殺するシーンもあったりと、重要な役割を果たしている。
揚げ菓子なので、カロリーが・・・・・・と気になるのもほんのひととき。ひと口かぶりついたら最後まで食べずにはいられない。「ダイエットは明日から」とマンマのように豪快に笑い、マフィアも愛した甘い誘を堪能しよう。
シラク―サ在住。 シチリア料理レストラン「la cambusa(ラ・カンブーサ)」のオーナー兼、シチリアの旅行、料理、食材などのコーディネーター。
作り方
- オレンジの上下を切り落とし、皮に上から下へ甘皮まで切り目を入れ、みかんを剥くように皮を剥ぐ。(甘皮付き)(写真a 参照)
- 剥がした皮を5mmぐらいの幅に切る。(写真b 参照)
- 鍋に切った皮とひたひたの水を入れ、沸騰したらお湯を捨てる。これを3回繰りかえす。(写真c,d 参照)
- オレンジの皮の重さに対して同じ量の砂糖を鍋に入れ火にかけ砂糖を溶かす。(写真e 参照)
- 砂糖が溶けきり、キャラメル状になったらボイルしたオレンジの皮を入れ混ぜる。(写真f 参照)
- オレンジの皮と溶かした砂糖(キャラメル)が絡みあったら、オーブンシートの上に一本ずつくっつかないように並べ、乾かす。(写真g,h 参照)
オレンジピール
カンノーロ皮
- 大きめの皿、又はボールに小麦粉を入れ、真ん中に窪みがある土手を作る。
- 土手の窪みに砂糖、ラード、マルサラ酒、絞ったレモン汁を入れ混ぜ、約10分間しっかりと捏ねる。(写真i 参照)
*ここでしっかり捏ねておくと気泡が出来、サクサクの皮が出来る。 - 耳たぶ程の硬さになるまでしっかりと捏ねてたら、一つにまとめ、ラップ又は湿らせたキッチンペーパーを被し、常温で生地を30分寝かせる。(写真j,k 参照)
- 寝かせた生地を、麺棒で1㎝位の厚さまでのばし、生地を三つ折りにする。(写真l 参照)
- 三つ折りにした生地を再び麺棒で1㎝位の厚さまで伸ばす工程を、10回程繰り返す。(写真m 参照)
- 伸ばした生地が滑らかになりツヤが出てきたら、今度は3mm位の厚さまで伸ばす。(写真n 参照)
- 伸ばした生地を、5cmの正方形に切る。(写真o 参照)
- 生地の真ん中に、カンノーロの筒を置き、筒を生地で包む。包んだら揚げた時に皮が開かないように重なっている部分をしっかりとおさえる。(写真p,q 参照)
*揚げた後に筒が抜けやすいようにゆる目に生地を包む。 - たっぷりの揚げ油180℃で、包んだ生地を筒ごと入れ、じっくり揚げる。(写真r 参照)
- 生地が浮いてくるので揚げむらができないように箸などで回しながら、きつね色になるまで揚げる。ザルで油をよくきる。(写真s 参照)
- 少し冷めたら筒を抜く。(写真t 参照)
- ボールにリコッタチーズ、砂糖を入れる。(写真u 参照)
- 泡立て器でしっかりとかき混ぜる。
- 砂糖が溶け混ざり、ツヤがでてきたら完成。(写真v 参照)
リコッタクリーム
- よく油を切り、冷ましたカンノーロの生地の穴に、混ぜたリコッタクリームをスプーンで押し入れる。(写真w 参照)
- 両端にオレンジピールの皮を飾ったら完成。