お料理説明・背景
青い空、透き通る海。夏の暑いイメージのシチリア。そんなシチリアの冬は、実はとても寒く雨が多い。 石造りの家は特に寒く「今日はお鍋にしよう〜」と思わず言ってしまいたくなる。そんな日にぴったりの料理がこちら。身体を温めてくれ、食べた後に皆で大笑いしてしまう、そんな心も身体も胃袋も楽しませてくれる、シチリアらしいイカ墨料理だ。
悪天候で海が荒れた翌朝のメルカートには、大小様々な大きさのコウイカが上がり、愛らしいクリクリ目で「食べておくれよ」と言わんばかりにじっとこちらを見てくる。
地中海の朝採りのコウイカは身が厚く、甘くぷりぷりで、シチリアの食卓では良く食べられ、子供も大人も大好物だ。
あんな目で見つめられたら、「今日はイカ墨を煮込みましょうか」と考えてしまう。だが、決める前に大事な事を聞かなければ。
「貴方、墨はお持ちですか?」
冬のコウイカの墨は多く、墨なしの外れを引くことは少ないが、ごく稀に3杯共に墨なし。と言った場合もあるので注意したい。ただし、外見や大きさからは判断が出来ないので運に任せるしかない。
作り方は実にシンプル。 食べ方はお歯黒にならないように、洋服にはねないようにと、なかなか難しいが、口の中に広がるイカの甘みは思わず唸ってしまう程のおいしさで、真っ黒のイカ墨は一度食べたら忘れられない一品となるだろう。
実際字を書くインクとして使われていたイカ墨の黒の色素はメラニンで、アミノ酸を含んでいる。抗菌作用や栄養価も高く、古代ローマの時代から重宝されていたそうだ。新鮮であればある程、墨の色は黒い。イカ墨の煮汁が墨汁のようでも、新鮮な証拠と思い、見た目に負けずに是非試して欲しい。
自分でイカを掃除し、墨を上手に出してと。。。 大変な作業はイカの掃除だが、手間暇掛けたソースはピカピカと黒光りして見えてくる。おいしく頂いた後に、どれだけお歯黒になって食べたかを競い笑い合う。そんな楽しい食後に、気を抜いてそのままのお歯黒で外に出ないように気をつけなければ。 せっかくだから記念に写真を撮っておきますか?!
シラク―サ在住。 シチリア料理レストラン「la cambusa(ラ・カンブーサ)」のオーナー兼、シチリアの旅行、料理、食材などのコーディネーター。
作り方
- コウイカを掃除する時は、必ずゴム手袋とエプロンをする。墨袋を潰さないように取り出す。衣類に着いたイカ墨の汚れは落ち難いため、はねて汚れないように気をつける。(写真a 参照)
- コウイカのワタ、下足、胴体に分けて掃除をする。(写真b,c 参照)
- ワタは、墨袋以外の内臓(キモなど)を外す。(写真d 参照)
- 胴体の皮を剥く。
- 下足、胴体は1cmぐらいの角切りにする。
調理前のポイントと下ごしらえ
作り方
- 鍋にタマネギのみじん切りと、オリーヴオイル大さじ1杯を入れ弱火にかける。タマネギが少し透明になるくらいまで炒める。(写真e 参照)
- 1の鍋に角切りの下足を入れ、その後墨袋を入れる。墨袋を鍋の中で潰し、白ワイン1/2カップを入れ墨を溶かす。(写真f,g 参照)
- 2の鍋に水50mlで溶かした濃縮トマト、残りのイカを入れ混ぜる。 (濃縮トマトの代わりにホール缶のトマトを使う際は、300gのホール缶と水を1カップにする。)
- はじめは中火で煮込み、沸騰してきたら、水2カップを入れ蓋をし、弱火で約20分煮込む。(写真h 参照)
- イカに火が通り、煮詰まったら、塩、コショウ、タカノツメを加え、味を整える。(写真i 参照)
- 蓋をしたまま更に弱火で約10分煮込む。