お料理説明・背景
イタリアのクリスマスの食事はランチから始まり、11時過ぎ頃から続々と親族たちが集まる。毎年のことなのでイタリアのマンマも手慣れたもの、親族たちが到着する頃には既に見事なテーブルセッティングが完了している。そもそもイタリアのマンマたちはクリスマスの食事の準備をかなり前から行うのだが、忘れてはいけないのはクリスマス料理に欠かせないカッポーネ(Cappone)の予約だ。カッポーネとは去勢された鶏で、行きつけの肉屋に注文予約をしておく。カッポーネは、他の肉とともにゆでられ、緑色のソースなどと一緒に食べるのが定番。そしてカッポーネの出汁が効いたブロードは、クリスマス伝統料理のトルテッリーニ・イン・ブロード(肉詰めラビオリ入りのスープ)に使われ、余すことなく食される。
マリアンジェラは肉類を顔なじみの行きつけの肉屋で注文することにしている。肉屋の自家農園の伸び伸びとした環境で育てられた牛、鶏、うさぎはとても新鮮で品質にも安心できるからだ。
特にボッリートのようにごくシンプルな調理方法の料理は、素材の良し悪しで味が左右される。同じく塩だけで味付けするグリル料理用の肉も必ずいつもの肉屋で注文する。「今日はビステッカ(フィレンツェ風Tボーンステーキ)用にいい牛肉があるけど、どう?」とお得な情報をもらえるのも顔なじみ客の特権だ。
ボッリート(ゆで肉料理)は、中部~北部イタリア料理だが、トスカーナ州ではリングア(牛タン)が加わることが多い。牛タンはサルサ・ヴェルデ(イタリアンパセリの入った緑色のソース)にとても良く合う。クリスマスの定番料理というわけではなく、クリスマス以外にも食べられる。サルサ・ヴェルデ以外にも、マッシュポテトやマスタード、モスタルダ(マスタードの辛さとシロップの甘さが効いたマスタードシロップ漬けのフルーツ)などが付け合わされ、あれこれ味を変えて楽しむことができる一品だ。
さて、マリアンジェラもクリスマス前になると、なにか新しい変わった一品にもチャレンジできないかとあれこれレシピ本を眺める。子供たちに「こんなレシピを見つけたのだけど、どう思う?」などと意見を求めては、あれこれ楽しく頭を悩ます。前菜からパスタ料理、メイン料理、パネットーネ(クリスマスの伝統お菓子)を除くデザート類までほぼ全て手作りするマリアンジェラ。
ただ、先に述べたクリスマス料理に欠かせないけれど、手間のかかるトルテッリーニはハンドメイドのパスタ&ラビオリ店で注文する。もちろん、この店も普段から利用している顔なじみのお店だ。「カッポーネと……そうそう、トルテッリーニの予約注文も忘れちゃだめね」とマリアンジェラ。必要なものは予約を済ませ、「さあ、今年のクリスマスはどんな献立にしようかな?」と、今から家族においしい物を食べさせたい気持ちでいっぱいだ。
ヨーロッパの国々の中でも特に家族の絆が強いイタリア、クリスマスはその絆をいっそう強める日。マンマの抜群においしい手料理のおもてなしこそ家族をまとめる団結力の源である、とクリスマスが来る度に確信する。喧嘩しても、遠くにいても、マンマの最高の手料理を求めてマンマのもとに家族たちが集まってくる。そんな家族の吸引力抜群のマンマのクリスマス手料理、どうぞお試しあれ。
フィレンツェ在住。テレビ局報道記者を経て2011年渡伊。2012年からフィレンツェ在局FMラジオに出演中。イタリア製本革バッグのオンラインショップ「アミーカ・マコ」をフィレンツェで起業・経営しながら、週刊誌等でイタリア関連記事のライター活動も。これまでに世界30ヶ国200都市以上旅行。ブログ:AmicaMakoイタリアンスタイル
材料
ボッリート・ミスト(4人分)
・ニンジン | 1本 | |
---|---|---|
・タマネギ | 1個 | |
・セロリ | 1本 | |
・イタリアンパセリ | 葉のみ小さじ1杯 | |
・カッポーネ | 1羽 | 去勢した鶏、頭部と足以外。手に入らない場合は鶏で代用。 |
・牛タン | 1本 | 脂は取り除く |
・牛肉 | こぶし大の大きさのかたまり2個 | 脂は取り除く |
・牛肉の骨 | 1本 | |
・塩 | 大さじ1 | |
・水 | 4l |
サルサ・ヴェルデ(緑色のソース)
・イタリアンパセリ | 葉のみ大さじ3 | |
---|---|---|
・アンチョビ | 1切れ | |
・酢漬けケッパー | 小さじ1 | |
・ゆで卵 | 1個 | 入れなくてもよい。お好みで |
・エキストラ・ヴァージン・オリーヴオイル | 大さじ1 | |
・白ワインヴィネガー | 適宜 | |
・塩 | 適宜 | アンチョビの塩味をみて調整 |
マッシュポテト
・ジャガイモ | 4個 | |
---|---|---|
・バター | 50g | |
・牛乳 | 約500ml |
作り方
- カッポーネ以外の材料をすべて一つの鍋にいれ、水を加える。水から火にかけ沸騰したら弱火にして1時間半程煮込む。味見をして足りなかったら分量外の塩を加え調整する。
- 1時間半後、カッポーネ を鍋に入れ、さらに1時間半煮込む。(写真a 参照)
- 途中水量が減るので、何度か水(分量外)を加えながら合計3時間煮込む。(※大きいお鍋があれば、蓋をして煮込み、途中水を加えていく必要はない)徐々にブロードはオレンジがかった色に。まだ肉が硬ければ、さらに煮込む。(写真b 参照)
- 煮込んでいる間にサルサ・ヴェルデとマッシュポテトを作る。まずサルサ・ヴェルデを作る。イタリアンパセリ、アンチョビ、 酢漬けケッパー、ゆで卵を細かくなるまでひたすら刻む。ゆで卵は入れなくてもいい。(写真c,d 参照)
- 刻んだ具材を器に入れ、白ワインヴィネガーとオリーヴオイルを入れて混ぜる。(写真e 参照)
- 次にマッシュポテトを作る。まずはジャガイモをゆでる。
- ゆでたジャガイモを潰し、バターと牛乳を加えて混ぜる。ジャガイモによって硬さが異なるので、少しずつ牛乳を加えて混ぜる。様子を見ながらクリーミーになるまで加えて混ぜ、足りなければさらに牛乳を加える。(写真f 参照)
- 肉が柔らかくゆであがったら、お皿に盛り付ける。(写真g 参照)
- サルサ・ヴェルデ、マッシュポテト、マスタード(分量外)、モスタルダ(分量外)などと一緒にいただく。(写真h 参照)