マンマのレシピ

マンマの紹介

  • アンナマリア・ジュゼッピーナ・ペティッティ(Anna Maria Giuseppina Petitti)さん
  • ウンブリア州テルニ市在住
  • 得意料理:リゾットのオーブン焼き、アーティチョークのラザーニャ、魚のパイ包み焼き

お料理説明・背景

今回ご紹介するマンマはウンブリア州テルニ市在住のアンナピーナさん。残念ながらテルニの街は第二次世界大戦の空襲で、歴史的な建造物はほとんど残っていません。でもローマ人の造ったヨーロッパで一番高い滝、マルモレ滝が有名な街。
また、テルニの守護聖人は愛の聖人ヴァレンタイン。日本人にも馴染みのある聖人名だろう。テルニのヴァレンタイン教会には、2月14日たくさんの恋人たちがミサに集まることでも有名だ。

アンナピーナとご主人のピーノ、二人とも料理をしておもてなしすることが大好き。ご主人ピーノの得意料理は鳩の回転ローストとトリュフ料理。 うちの主人も「ピーノの鳩のローストは素晴らしい!」と、いつも絶賛。年に数回、男同士の夕食会で彼が振る舞う鳩のローストをいつも友人たちは心待ちに。
アンナピーナは学生時代からウンブリアに住んでいるけれど、アブルッツォ出身。肉料理メインのウンブリアだけれども、魚料理も得意でレパートリーが豊富。探究心旺盛な彼女は新しいレシピに挑戦するのも好きで、私たちもレシピの情報交換をよくする仲。そんな彼女に今回、何か特色のあるおもしろいレシピはないか、とたずねて提案されたのが“ Gnocchetti alla Collescipolana “ 。テルニのレストランで何度か目にしたことのあるメニューだが、私も今回初めて味わう。

コッレシーポリ (Collescipoli)とはテルニ市からわずか4,5km、丘の上に広がる人口500人程の小さな村の名前。この名前は "Colle di Scipio " (シピオーネ報政官下の丘)、ローマ時代のシピオーネ報政官(領事)の名前に由来しているそう。毎年9月にこのニョケッティのサグラ(お祭り)があり、今ではウンブリア料理の本にも登場する特色のある料理の一つにもなったこの一品、実は元々のオリジナルはウンブリアではないそう。
戦時中の食料難の頃は食べ物を何一つ無駄にできなかった。その頃この村にお嫁にきたPadova出身の女性が、固くなったパンを卸して粉と水だけでパスタの変わりに小さなニョッキを作ったことが始まりといわれている。 もちろんその当時のソースはこのように豊かな具材ではなかったのでしょう。でも人々の空腹をまぎらわしてくれたこの料理はその後もこの地域の人たちに食され続け、ウンブリアの特産物を具材にしたソースと融合された。そして地域のお祭りで提供され始め、徐々にこの村の代表的な郷土料理と定着していったそう。

アンナピーナはこのレシピを、信頼をおくエドワルダさんに教えてもらった。彼女はアンナピーナの家でもう20年以上、家事を手伝っている。同じ年頃の娘をもち、互いにその成長を見守ってきた二人が、今回、仲良く一緒に作ってくれた。このパン粉のニョッキの一番の特徴はそのサイズ。ソースはウンブリア風にアレンジされたが、この小さなサイズは当初から変わらずに守られてきた。今回は1cm弱角だが、5mm角程の小さな小さなサイズにしてパスティーナ(コンソメスープやミネストローネ等に入れるお米粒大の小さなパスタ)の代わりに使うこともあるようで、一品の中にパン、豆、肉、全てが詰まったボリュームのあるピアット・ウニコ。寒さが厳しくなる頃には、しっかりとエネルギー補充ができる一品としておすすめだ。

レポート:田尾麻衣子(Maiko Tao)
ウンブリア州Amelia(アメリア)の近郊でアグリトゥーリズモ“サン・クリストフォロ”を主人と共に経営。1986年にオープンしたアグリトゥーリズモは今年で30周年。当初からBIO農業をしているが、7年前から正式にBIO農園として認定。

材料

パン粉の小さなニョッキ、コッレシーポリ風(6人分)

・タマネギ60gみじん切り
・ニンジン50gみじん切り
・セロリ40gみじん切り
・パンチェッタ80g1cm弱、小さめに切っておく
・サルシッチャ250g
・うずら豆 500gゆでたもの/乾燥の場合は約150g
・トマト水煮700g
・白ワイン100cc
・オリーヴオイル適宜
・ペペロンチーノお好み
・ペコリーノ・ロマーノ適宜なければパルミジャーノ

ニョッキ

・パン粉250g※できればイタリアのきめ細かく、芳ばしいパン粉を使用
・薄力粉250g
・水(ぬるま湯)300cc前後

作り方

  1. ソースを作る。(下記参照)
  2. パン粉のニョッキを作る。(下記参照)
  3. パスタ鍋にたっぷりの湯を沸かし、沸騰したら塩(分量外)を入れニョッキをゆでる。(写真k 参照)
  4. 上に浮き上がってきたら、ゆであがりの目安。ゆで上がったニョッキを熱々のソースの中に入れ、和える。(写真l 参照)
  5. 火から下ろし、卸したペコリーノチーズを加える。(すぐに食べない場合は、チーズを加えるのは食べる直前に)(写真m 参照)

ソースを作る

  1. 少し深めのフライパンか、浅めのお鍋に、少量のオリーヴオイルを入れ、タマネギ、ニンジン、セロリのみじん切りを、弱火で炒める。
  2. 香味野菜がしんなりしてきたらパンチェッタを入れ、蓋をして弱火で少し炒め煮し、油をなじませる。(写真a 参照)
  3. パンチェッタが芳ばしくなってきたら少量の白ワインを入れ、薄皮をむいたサルシッチャをフォークなどでそぼろ状につぶしながら2に加える。(写真b 参照)
  4. サルシッチャに焼き色がついたら少し火力を強くし、残りの白ワインを注ぎ入れアルコールをとばしたあと、弱火にして蓋をし、しばらく味をなじませる。
  5. ハンディーミキサー等でピューレ状にしたトマトの水煮を4に入れ、ペペロンチーノを加え、蓋をして1時間〜1時間半程弱火で煮込む。パンチェッタとサルシッチャで充分に塩味はついていると思うが、途中で味をみて、足りなければ塩を入れて味をととのえる。(写真c 参照)
  6. 最後に、ゆでたうずら豆を加え、10分程煮込む。(写真d 参照)

パン粉のニョッキを作る

  1. 捏ねる台の上にパン粉と薄力粉を小さな山のように広げる。中央をくぼませ泉を作り、ぬるま湯を少しずつ入れる。(写真e 参照)
  2. 中央から少しずつフォークあるいは指先で外側の粉を少しずつ崩しながら混ぜる。ある程度生地がまとまりはじめ、水分が足りなければ粉っぽい部分だけを集め小さな山にし、くぼみを作り少量の水を入れ、まとめていく。(写真f 参照)
  3. 10〜15分程、生地がなめらかになるまで手のひらを使いしっかり捏ね、1つに丸める。(少し固めなので力がいる。ジャガイモのニョッキやパスタの生地より少し固めの仕上がりに。)(写真g 参照)
  4. 3の生地を少しずつとり、両手の指先を使って直径1cm弱の紐状に伸ばす。(写真h 参照)
  5. ナイフで小さく1cm弱のサイコロ状にカットする。このニョッキはとても小さいことが特徴。(写真i 参照)
  6. できあがったニョッキは打ち粉をして、木の捏ね台の上に広げるか、布巾を広げたトレー等の上に並べる。すぐに使わない場合は冷蔵庫で保存。(写真j 参照)
  • a. パンチェッタを入れる
  • b. サルシッチャをそぼろ状にする
  • c. トマトの水煮を加え煮込む
  • d. ゆでたうずら豆を加えて煮込む
  • e. 粉を山のように広げくぼみにぬるま湯を入れていく
  • f. 水分が足りなければ粉っぽい部分に水を入れまとめる
  • g. しっかり捏ねて1つに丸める
  • h. 直径1cm弱の紐状に伸ばす
  • i. 1cm弱のサイコロ状にカットする
  • j. 打ち粉をしたニョッキを台に広げる
  • k. ニョッキをゆでる
  • l. ゆで上がりをソースと和える
  • m. 火から下ろしチーズを加える

お料理ポイント

ウンブリア料理らしくするにはやはり塩味のきいたサルシッチャが決め手。手に入らない場合でも、簡単にそれらしくできる。赤身と脂身を7:3程の分量(ミンサーやフードプロセッサーなどで豚肉をミンチ状にする)に、塩、胡椒、お好みでニンニクをよくなじませる。すぐ使用してもよいが30分程味をなじませるとよりおいしい。
<目安の分量>
豚肉の赤身 180g/脂身 70g (※赤身と脂身を7:3程の分量)
塩 6g 胡椒 1~1.5g ニンニク ごく少量(香りがつく程度)