お料理説明・背景
今回のレシピ、ボニファッチオ8世風ティンバッロは、フェットチーネ、ポルペッティーネ、プロシュートの包み焼きがまるごと1品になった、なんとも豪勢なピアット・ウニコ!
名前の由来は、美食を好み、金や宝石で装飾された食器を使用して食事会を開いていた中世のローマ教皇、ボニファッチオ8世からきている。このレシピの贅沢さが教皇のゴージャスさに匹敵する、というのが、とあるレシピ本に載っていた一説だ。
「ただレシピが豊かなだけでなく、私たちにとっては、日曜日に家族みんなで作る、心も豊かになる一品だったのよ」と、子ども時代を思い出して目を輝かせながら語るルチーラ。それぞれの工程を、皆で楽しく役割分担して作っていたそう。
また、レシピ名のティンバッロの語源は、「太鼓」からきており、円筒の形に詰め物をした料理のこと。イタリア各州によって、肉、パスタ、米、ジャガイモ…など、中に詰める具はバリエーション豊富だが、どれもケーキのように見た目が美しいのが特長。例えば、ナポリではマカロニを使用、アブルッツォ州では挽肉をクレープの生地で包んだもの、そしてシチリアでは、有名な小説「山猫」で登場した、きのこや鶏モツが入ったティンバッロなど、多種多様にある。どれもフォークで形を崩すと、中身が混ざり合って具沢山の一品になるのだが、今回のラツィオ州のティンバッロも、3種類の肉がたっぷり入ったフェットチーネとなり、とてもおいしかった!最後に今回ローマ料理をいつも笑顔で紹介してくれたルチーラの日常を垣間見れる特技に触れたい。もっとも私が一番驚いたのだが、リビングに埋め尽くされた立派な絵画の数々を覗き込んでいると、”ルチーラ”というサインが目に飛び込んできた。「え!?ルチーラが描いたの、この部屋一面にある絵!」と聞くと、照れながら「そうよ」と答えた。小学生の時から大人顔負けの絵を描いていたが、現在は趣味で子ども向け絵本や詩も作っているそう。彼女に、「どんな絵を描くのが好き?」と聞いてみると、色彩が美しい「印象派」という答えが返ってきた。「見ている人の心が暖かくなるように、技術を駆使するのが好きなの」とのこと。
そんな話を聞きながら、彼女のレシピがおいしくて周囲に評判な理由も、絵を描くこと同様、食べる人が「おいしい!」と幸せな気持ちになるように試行錯誤して作っているからなのだろうと、ティンバッロを味わいながらふと感じた。
レポート:西川彩奈(Ayana Nishikawa)
ローマとカラブリアに1年のうち半年在住。世界40カ国を旅した後、フレグランスや旅をメインに国内外に執筆活動をしている。
ローマとカラブリアに1年のうち半年在住。世界40カ国を旅した後、フレグランスや旅をメインに国内外に執筆活動をしている。
作り方
- ポルペッティーネを作る。(下記参照)
- パスタソースを作る。(下記参照)
- お湯を沸かし、沸騰したら塩(分量外)を入れてフェットチーネをゆでる。(写真j 参照)
- バターを熱したフライパンにゆでたフェットチーネを入れ、2のパスタソースを適量加えて和える。(写真k,l 参照)
- 耐熱容器にバターを塗り、生ハムを縦半分が容器からはみ出るように並べていく。(写真m,n 参照)
- 5にパスタを入れ、容器の外にはみ出た生ハムで包んでいく。(写真o,p 参照)
- 180度に温めておいたオーブンで、6を約30分、ハムが焦げていないか時々チェックしながら焼く。
- オーブンからティンバッロを取り出し、残しておいたポルペッティーネとソースをティンバッロの上に盛り付けて完成!(写真q 参照)
ポルペッティーネ
- ボウルに挽肉を入れ、塩、コショウ、卵、パルミジャーノを加え、全体が均等になるように混ぜ合わせる。(写真a,b 参照)
- 小麦粉をまぶした手に、1を少量とり、手のひらで丸くなるように転がし、軽く小麦粉を表面にまぶす。この作業を繰り返していく。(写真c 参照)
- 耐熱容器に焦げつき防止のためにオリーヴオイルを全体に広げ、2のポルペッティーネを並べていく。(写真d 参照)
- 180度のオーブンで焼く。中まで火が通り、表面も焼き色がつけば完成。(写真e 参照)