お料理説明・背景
ローマ市内の住宅地では、近郊で採れたラツィオ産野菜を販売するメルカートと八百屋が季節を届けてくれる。昼食の献立の食材を求めて来るマンマたちと、手際よく次々と野菜を補充していく商人たち…。「あそこの八百屋はトマトがおいしいけど、タマネギを買うならメルカートのあの店!」など、都会のローマでも「旬のおいしい野菜を食べたい」という気持ちが根付いているところに、イタリア人気質を垣間見ることができる。
そんなメルカートや八百屋に、蝉の声が響き始める頃、ズッキーネ・ロマネスケ(ラツィオ産ズッキーニ)と、その黄色い花、フィオリ・ディ・ズッカが山積みされる。まるで近郊農家からの夏の便りのようで、嬉しい気持ちになる風景だ。
ズッキーネ・ロマネスケは、程よい水分量のおかげで実のしまりがよく、甘くしっかりとした味わいが「高品質のズッキーニ」として、他州でも名高い。そしてその花は、朝早くに収穫され、新鮮なうちに市場に届けられる。しかし、購入後1日でしおれてしまう繊細なズッキーニの花には、より新鮮な花選びのスキルが重要になってくる。今回のマンマ、ルチーラ曰く「花を選ぶときにはね、茎の部分を見なさい!真緑色が新鮮な証拠よ。」と、教えてくれた。
そんなズッキーニの花を、そのままの美しい形で食べることができるのが今回のレシピ「Fiori di zucca frittiフィオリ・ディ・ズッカ・フリッティ」。ローマ風はモッツァレッラとアリーチ(カタクチイワシ)を中に詰め込んで揚げ、一口かじるとモッツァレッラがとろ~り、と伸びておいしい。
「フィオリ・ディ・ズッカ・フリッティは、私にとって“夏”を連想させる一品なの。」とルチーラ。「幼い頃、夏のバカンスで訪れていたローマ近郊の別荘では、海で泳いだ後でお腹ペコペコだった私は、台所からの香りに誘われて、マンマが揚げていたフィオリ・ディ・ズッカをよくつまみ食いしたものだわ。」と、思い出して微笑む。
幼かったルチーラはマンマのそばで、マジックのように変化していく料理工程を眺めていた。大人になってからは料理上手な知人に習い、自身でブログ(http://www.romainbocca.it/index.php)を作って、ローマの伝統料理のレシピを発信している。そんなルチーラがお気に入りの今回の「ズッキーニの花のフライ」は、目と鼻と舌で“夏”を楽しむことのできる一品だ。
ローマとカラブリアに1年のうち半年在住。世界40カ国を旅した後、フレグランスや旅をメインに国内外で執筆活動をしている。
作り方
- ズッキーニの花は丁寧に水洗いしておく。
下ごしらえ
作り方
- ズッキーニの花柄(花の茎にあたる部分)、がく、めしべを取り除く。めしべを取り除く際は、花を破かないようにナイフでくり抜くように慎重に取り除く。(写真a,b,c 参照)
- モッツァレッラを10等分(揚げる花の数)に、細長く切る。(写真d 参照)
- アリーチも2と同様に10等分(揚げる花の数)に切る。(写真e 参照)
- 2,3を花の中に詰める。(写真f,g 参照)
- 衣を作る。卵をボウルに割り、冷水を加えながらゆっくりとかき混ぜる。(写真h 参照)
- 5に塩少量とふるいにかけた小麦粉を加えながら、僅かに弾力がある液状になるまで混ぜる。(写真i 参照)
- 4を衣につけて、180℃の油で両面キツネ色になるまで揚げる。(写真j,k 参照)
- 油吸い取り紙にのせて、完成!(写真l 参照)