お料理説明・背景
「ノンナ ローサ!(ローサお婆ちゃん)」と、あちらこちらから響く声に、テキパキと対応する今回のマンマ、ローサさん。彼女の料理を目的に約70人が月に定期的に集まるほどの料理の腕前と、孫への溺愛ぶりから、今や皆からノンナと呼ばれている。
今回カラブリア料理をふるまってくれるとのことで伺ったのは、そんなローサさんも参加するローマ在住のカラブレーゼの会プロフーミ デラ カラブリア(Profumi della Calabria)。
私がカラブレーゼの魅力的だと思うところは、何処からともなく人が集まってくるところ、太陽に溶かされたようにリラックスした人々、人同士や自然との繋がりを大切にしてるところ。だから接すると心が温かさに包まれる。やはり、贅沢な自然と、広~い海、カラッとした太陽の恩恵だろうか。そんなカラブリア精神を都会で感じられるのは、とても幸せだ。
到着して扉を開けると、バンビーニ用のテーブルで遊ぶ子ども達と、前菜の準備をする大人たち……。そしてエプロン姿で、せっせとパスタを準備するノンナ ローサが迎えてくれた。あちこちから、「見て! これがカラブリアのチリだよ!」「君たちが来るから、ミュージシャンを呼んだよ」、「座りなさい」、「こっちにきて、紹介するから……」と、忙しいおもてなしの嵐と、何処からか聞こえてくるギターの演奏、笑いの耐えない雰囲気が心地よい。
さて、今回のレシピのチポーラ・ディ・トロペアだが、甘さとユニークな形でカラブリアのシンボル的存在の紫玉葱だ。冬は丸く、夏は尖った形に、と太陽の日照時間によって、魔法のように季節で形が変わるのも面白い。カラブリアの村を歩いていると、各家に、チリとニンニクとチポーラ・ディ・トロペアがベランダに吊るして干されているのが、南イタリアの風物詩だ。
伝統的な食べ方としては、リンゴのようにシャリッとまるかじり、もしくはパンの上に生でのせて食べるそう。そんな素朴な食べ方をしていたノンナ ローサが初めて、この玉葱を使用したジャムに出会ったのは20年前の暑い夏、お菓子屋さんでバニラアイスクリームにかけられているのを食べたとき。モダンなレシピに驚いたけれど、おいしかったので取り入れたそう。
味はというと、紫玉葱を砂糖とバルサミコ酢で煮詰めているからだろうか、日本の田舎の郷土料理のような味も連想させられる。 春に南イタリア風ピクニックとして、このジャムにパンやチーズとワインを持って出かけると、どんなに愉快だろう、と、定番の長テーブルであちこちから冗談や笑い声が飛び交う周囲に囲まれて感じた。
ローマとカラブリアに1年のうち半年在住。世界40カ国を旅した後、フレグランスや旅をメインに国内外で執筆活動をしている。
作り方
下ごしらえ
- 衛生面のため、予めジャムのビンは20分ほど煮沸消毒しておく。
つくり方
- 玉葱を細かく切って、鍋に直接入れる。(写真a 参照)
- バルサミコ酢を1に回し入れ、木べらなどで全体が馴染むようによく混ぜる。(写真b 参照)
- 弱火で10分ほど火にかける。焦げないように、時々かき混ぜる。(写真c 参照)
- グラニュー糖、蜂蜜の順に入れる。砂糖が固まらないように、よく混ぜる。(写真d,e 参照)
- 25~35分程弱火にかけ、時々かき混ぜる。(写真f 参照)
- 皿やまな板にジャムをのせて傾け、液体が流れないようであれば火を切る。(写真g 参照)
- 瓶内殺菌も兼ねてすぐにビンに移したら、出来上がり!(写真h 参照)
すぐに食べる場合は、粗熱がとれてから冷蔵庫に入れ、1週間以内に食べること。真空密閉をし、涼しい場所でビンを逆さまにして保管すれば1ヵ月後に食べることもできる。