お料理説明・背景
バジリカータではここ10年ほど、ピスタチオの有機栽培に取り組んでいる。
『イタリア好き バジリカータ州』や『マンマの料理フェスタ2014』でもおなじみ、“オステリア・ピーコ”のオーナーシェフ、エンツァさんも、ピスタチオクリームのパスタで、ピスタチオを新しい郷土の味へと鮮やかに昇華させてみせた。
9月の収穫期2週間には、生ピスタチオのジェラートが味わえるのも産地ならでは。12月上旬のナターレ(クリスマス)前は、真空パック入りや各種加工品が出揃う時期で手に入りやすい。
ちょうどナスタッシアが、ピスタチオでパスタをつくってくれるというので、月曜の午後に訪ねた。シッジッリーノ家の子どもたちは出はらっていたので、つかの間の静かな台所に座り、彼女の料理熱の原点について四方山話を聞く。
ナスタッシアの母は実業家で忙しかったため、幼いナスタッシアはよく祖母の家で遊んだ。ご近所にはジャンナさんというすこぶる料理上手なおばさんがいた。手打ちパスタ、ドルチェ、オイル漬け、ジャム・・・ とおよそ想像できる台所仕事は何でもまめまめしくする人だったらしい。
血縁はないのだが、ナスタッシアはジャンナおばさんと呼んで、10歳の頃まで彼女の台所に入り浸り、夢中になって手仕事を眺めた。
その後、ナスタッシアの母はジャンナさんをシェフに迎え、“レ・ボッテゲ”というレストランをオープンし、そのレストランはグルメ本の常連になるまでの人気を博した。
ナスタッシアは、そのジャンナおばさんから料理への情熱といくつかのレシピを引き継ぎ、30歳を越えたばかりだが、料理歴は15年、マンマ歴は13年、そして5児の母である。
この日、材料にキタッラ(キタッラ風スパゲッティともいう太めのロングパスタ)が準備してあった。「ピスタチオのペーストには、キタッラで決まり?」と尋ねると、ナスタッシアはからからと笑って「本当はね、スパゲッティだったのが、アメリ(三女・6歳)にお使いを頼んだら、間違ってキタッラを買ってきちゃったの。だってスパゲッティみたいだもんね、アメリ、ありがとう」と、料理も生き方もとても柔軟だ。
揚げ油はオリーヴオイル派のナスタッシアだが、なければ種子油でもかまわない。生のピスタチオがなければ、ローストした塩味付きでも大丈夫。合わせるパスタだってタリアテッレでもいいし、ペンネもいい。そうか日々の料理とは、かくもしなやかなものなのだ。
パスタを茹でる間に、ペーストをつくればいいので、ゲストの到着を待って、ゆうゆうとつくれるのもいい。簡単なのに華やかだから、1月6日まで続くナターレシーズンのおもてなしにぴったり。生ピスタチオが手に入っても、入らなくても、ぜひお試しください。
BUON NATALE A TUTTI みなさん、よいナターレを。
2003年渡伊、同年よりマテーラ在住。数々のTV番組のコーディネートや取材コーディネーター、翻訳、寄稿(伊語/日本語)を軸に、地域のよろずプロモーター(でありたい)として活動。