お料理説明・背景
シチリア料理は、イタリア料理には珍しく、レシピに砂糖が登場するものが多い。それはやっぱり、アラブに支配されていた時代の置き土産か……? はたまた暑くて乾燥した気候には、砂糖の甘さが合うからか? トマトソースにも隠し味的に砂糖を加え、ほんのり甘酸っぱくするのがシチリア流だ。
古代よりワインが造られてきた土地だけに、ワイン由来のビネガーを使う料理も多く、砂糖をプラスした甘酸っぱい味わいは、なんだか和食にも似て、ゴハンのおかずにもなったりする!(おかげさまで、シチリアに暮らしていると料理に飽きることがない・笑)
今回、ご紹介する料理「Zucca Rosso in agrodolce 赤カボチャのアグロドルチェ」も砂糖を使った「甘酸っぱい料理」の代表的なもの。レシピをご紹介してくれたのは、先回に引き続き、パレルモ生まれのパレルモ育ち、生粋パレルミターナのシルヴァーナさんだ。
このカボチャの料理、シチリア語では「Cucuzza all’agruduci ククッツァ・アッラグルードゥーチ」、もしくは「Ficatu ri sette cannola フィカトゥ・リ・セッテ・カンノーラ」と呼ばれる(シチリア語については、前回記事をご参照のこと)。
後者をイタリア語に直せば、「Fegato dei sette rubinetti フェーガト・デイ・ルビネッティ」で、意味は「7つの蛇口の肝臓」。「は?肝臓?蛇口?なんのこっちゃ?」な名前だが、料理の由来を物語っている。
7つの蛇口とは、パレルモの三大市場のひとつ「ヴッチリア市場」の中にある「ガラッフェッロ広場」のこと。今の広場には、第二次大戦の跡も残るが7つの蛇口の噴水も残っている。もともとは貴族の料理で、本来は肝臓を使う料理だったが、庶民でも手に入りやすいカボチャに替え、なんとな~く「似た感じ」に工夫した料理を、ガラッフェッロ広場で道行く人々に売り出したのがこの料理の起源なのだ。
デフォルトの材料がなくても、アイデアでアレンジを加えておいしく食べる。パレルミターニの食いしん坊ぶりがうかがえる料理のひとつでもあるが、パレルモ家庭料理には、そんなストーリーのあるものが多くて面白い。
「朝の涼しいうちにつくっておいて、冷蔵庫で冷やして夕食に食べるのよ。」
夏から初秋にかけて、市場に並ぶ巨大カボチャ。薄切りにして、カラリと揚げたところに熱したビネガー&砂糖をジュワッと回しかけ、じっくり冷やして味を馴染ませたヒンヤリ甘酸っぱいカボチャは、油で揚げてカロリー増し…...が気になるところだが、ミントの香りも爽やかで、夏バテで食欲減退気味でもバクバクいけちゃう危険なおいしさ。
前菜やコントルノに、冷やした白ワインと合わせて、どうぞ(ビールも合いそう)! タッパウェアに入れて持ち運びもしやすいから、バーベキューのお供にしてもいいかも。
シチリア州在住。編集ライター/コーディネーター通訳。約10年間のローマ生活を経て、2010年よりシチリア州州都パレルモ在住。ガイドブックや雑誌のイタリア特集を始め、イタリア関連著書多数。近著「おしゃべりのイタリア語」絶賛発売中!イタリア商工会議所認定通訳。HP:buonprogetto / la vacanza italiana Blog:ローマの平日シチリア便り
作り方
- カボチャの種を取り、5~8㎜程度の薄いスライスにする。(写真a 参照)
- 1の皮を切り落とし、塩をふって水分を出しておく。ニンニクも薄いスライスにしておく。(写真b 参照)
- フライパンに油を熱し、160℃程度の低温で2のカボチャをじっくり素揚げする。揚げている最中にワインビネガーと砂糖をよく混ぜておく。(写真c 参照)
- すべてのカボチャが揚がったら、ペーパーで油を切っておく。(写真d 参照)
- 3のフライパンに揚げ油を大さじ1~2杯程度残し、混ぜたワインビネガーと砂糖を一気に投入。沸騰させてワインビネガーのアルコール分を飛ばす。(写真e 参照)
- 4のカボチャを平たい皿に並べ、ミルフィーユ状にミント、ニンニクのスライスを重ねていく。(写真f 参照)
- 5のビネガーソースを熱々のうちに回しかける。(写真g 参照)
- 冷めたら出来上がり!